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2015.03.27

【PICK UP! VOL.2】米国メディアも注目。クリスメラの、「はずれにくいピアスキャッチ」の魅力に迫る(後編)

「はずれにくいピアスキャッチ」というコンセプトで特許を取り、現在世界中でファンを増やし続けている株式会社クリスメラの商品。同社代表の菊永英里さんに、商品誕生の背景や海外市場についてお聞きしています。後半は海外でも人気を集める理由や、これからの目標をお話いただきました。(前編はこちら

■「あと3ヶ月で商品が出来なければ辞めなきゃいけないんです」の熱意が実を結ぶ
後は量産に向けて工場を探すだけ! と動き出すも、なかなか目当ての工場は見つかりませんでした。200社以上のリストをつくり片っ端から電話やメールをしてみますが、連絡がつかないところが多く、実際にコンタクトを取れたのは40社程度。また菊永さん自身、当時は自分が考案したピアスキャッチが、何加工で製造できるものか分かっていなかったため、見当違いの工場に行ってしまうこともあり、なかなか思うように進まなかったそうです。さらに拍車をかけたのが、法人化していないという状況でした。
そこで2007年7月に株式会社クリスメラを設立。再び工場めぐりを始めました。ようやく運命の一社に出会ったのは、2008年4月。長野県にある工場が、思いを形にしてくれたのです。
菊永さんが考案したはずれにくいピアスキャッチは、9個の部品が集まってつくられています。ある時から、「一つの工場にあたっても、9個のパーツ全部をつくれないことがなんとなく分かってきました」(菊永さん)。

スクリーンショット 2015-03-26 10.05.05クリスメラが販売する、ピアスキャッチ 

そんな矢先に見つけたのが、長野県にある複数の工場が一緒になって立ち上げたウェブサイト。「トップページに車いすの絵が書いてあって、この部品はA工場、布はB工業など、一つの製品をつくるのにも色々な会社が関わっていることを説明しているサイトでした」。ここに可能性を見出し、問い合わせをしてみると、一つの工場を紹介されました。
工場を訪れたのは、2008年4月1日。「4月1日って、なんか縁起悪いでしょう(笑)」と若干の不安を抱えていたと言いますが、結果は大当たり。
菊永さんは、会社設立から1年経って製品ができていなかったら、会社をたたんで再就職しようと考えていました。この時はすでに、タイムリミットの3ヶ月前。もう時間はありません。工場に着き、社長に伝えました。「ピアスキャッチの市場は世界です!一緒に世界を変えるパートナーを探しているんです!」
熱意は伝わりました。期限が3ヶ月ということも了承してくれ、会長はそれぞれの部品に精通した地域の工場仲間に声をかけ、本当に3ヶ月で製品をつくってくれたのです。アイディアから3年。菊永さんの熱意が実を結び、ついにスタートラインに立つことができました。
■シルバー一色で販売開始。卸先の宝石店やECサイトの声をヒントに改良を重ねる
出産し、子育てしながら会社を運営したい。ビジョンを持ち起業した菊永さんは、急激に会社の規模を大きくするよりも、堅実にビジネスを成長させていく道を選びました。現在クリスメラで働くのは、二人のお子さんを育てながら代表を務める菊永さんと、菊永さんの旦那さん。そして頼りになる女性社員が一人。2014年に本社を東京から岡山県に移しましたが、単身で岡山についてきてくれた家族のように大事な存在です。
小さな組織で大きなビジネスをするため、菊永さんは事業開始時から直販ではなく、卸売を主要事業にしてきました。まず目をつけたのが、宝石店。ピアスと一緒に、「大事なピアスをなくしたくないですよね?」と販売してもらう戦略です。
はじめはスタンダードなシルバーのピアスキャッチのみを展開してきましたが、「ピアスと一緒に薦めるので、他の色も欲しい」という宝石店の要望に応え、ゴールドのピアスキャッチも作ることに。最初にサンプルを作ってくれた工場がメッキを得意としていることもあり、ゴールドのピアスキャッチはそこでつくってもらっています。

スクリーンショット 2015-03-26 10.03.48 ゴールドのピアスキャッチ

ECサイトへの卸売を始め、取扱量が増えてくると外箱へのリクエストも出てきました。初め菊永さんは、バラエティショップでも取り扱いやすいようにと、プラスチックのケースを採用していたそうです。「ひっかけることも陳列することもできる。そういう思惑があってデザインをしていたのですが、やはり商品単価が高いので、プラスチックではイメージが合わないという声がありました」
また、多くのECサイトがメール便を採用していたこともあり、送りやすいように、「2cm以下にしてほしい」という要望も多かったそうです。そうしたリクエストに応えていった結果、今のケースに行き着きました。そのままギフトにも使えそうな厚紙でしっかりつくられたケースは、高級感が漂います。

スクリーンショット 2015-03-26 10.04.32ピアスキャッチの外箱

商品には全て3ヶ月の保証書が付いていることも、ユニークな点と言えそうです。菊永さんが細部にまでこだわる理由を聞いてみました。

「今まで『金具』をしっかりした箱に入れたり、保証書が付いたり、さらにはその金具に名前が付いたりという商品はほとんど無かったと思います。事業を始める前、色々なピアスの後ろ側にあるピアスキャッチを調査しました。しかしどれをみても、どこでつくられたものなのかがさっぱり分かりません。品質の保証がなければ、壊れたからといって問い合わせることはできないですよね。そこで当社は、きちんと責任を持てる形にしようと考えました。買った後に使い方が分からないとか、こんな不安があって…とか、お客さまが何か疑問を感じた時に、いつも問い合わせできる状態を作りたかったんです」。

■当初から、日本よりも市場の大きい海外も視野に
現在クリスメラの商品は、日本だけでなく海外でも販売されています。店舗への卸を行っているのは、米国と台湾。Amazon.comに出店しているので、70カ国以上に配送対応しています。今後はヨーロッパを中心に世界各国で卸先を拡大していく予定です。
ところでどうして菊永さんは、海外にも狙いを定めているのでしょうか。

「ピアスキャッチの市場を考えると、圧倒的に日本よりも海外の方が大きいですよね。日本では、肌に穴を開けるなんて…という考えを持った人が一定数いたので、ピアスの普及率は他国と比べて低めです。一方海外に目を向けてみると、多くの人がピアスをしていますし、特にスペイン系の国では、女の子が生まれるとピアスを開ける習慣があるほど。ニッチな日本市場だけでは、何百億円のビジネスになるとは考えにくいので、より高みを目指すのであれば海外も見なくてはいけません。とはいえ、大手が参入してくるほどの領域でもないので、そこは私たちにとって好都合です。すごくニッチだけど、世界を狙えば市場はある。だから海外も狙って早いうちにシェアを取っていこうと考えているんです」。

現在のところ、海外にはライバルにあたる企業は数社あるそうですが、限られた細さのピアス針にしか対応していないなど、クリスメラ製品に比べると性能は見劣ります。クリスメラが海外市場を獲得していく余地は、十分あると言えそうです。
米国ビジネスに関しては、現地にいるパートナーを通じて、2014年1月から行っています。売上規模は日本の1/10程度とまだまだですが、日本での販売開始時の立ち上がりに比べたら勢いがあります。販売しているゴルフクラブでは、ゴルフイベントに参加した50人中、半数がピアスキャッチを購入するなど、反応は上々とのこと。

スクリーンショット 2015-03-26 10.31.37       米国版ウェブサイト トップページ

またメディアからの注目度も高く、すでに朝の人気テレビ番組含め、各所で紹介されています。なかには、「これはもしかしたら、ジュエリー史上最も天才的な発明かもしれない」との高評価を受けたことも。
こうした宣伝効果により、現在米国版ウェブサイトでは、CVR率(購入率)15%を叩き出す商品もあるんだとか…!!! ECの世界に従事している人であれば、これがいかに驚異的な数字か、一目瞭然ですよね。
実は、クリスメラ商品のCVRは日本のECサイトでも非常に高く、卸先のショップによっては5%前後をキープしているところもあるそうです。商品内容の分かり易さと、競合の少なさという優位性が、高いCVRを支えている要因ではないかと考えられます。
■バックピアスで広がる「コラボ」の可能性
菊永さんにこれからの目標を聞いてみると、「実店舗のオープン」と「シャネルとコラボできたら…やったー! と思うかも」と話してくれました。これまでは、ピアスキャッチを宝石店やジュエリーショップに卸すという商売でしたが、バックピアスができたことによって、デザイナーやジュエリーショップなどとのコラボ商品販売という新たな可能性が生まれました。
第一弾として、『よせもの』という技術を使ってスワロフスキーのピアスを販売している『MASAAKi TAKAHASHi』とのコラボが始まっています。1万円台〜2万円台と値段は少々張りますが、滑り出しは上々のもよう。バックピアスは、いろいろなコラボの可能性を秘めているので、これからも「ここは!」という相手とどんどん新たなバックピアスを作っていきたいと考えているそうです。

chrysmela141108_002 MASAAKi TAKAHASHIiとのコラボ例

将来的な目標として狙うのは、「シャネル」。ココ・シャネルを題材にした映画を何度も何度も見るほど、シャネルという女性に強い憧れを抱いている菊永さん。

「いつまで経っても初心者の気分でいたいし、人間は調子に乗ったらおしまいだと思っているので、極力平常心を保つようにしていますが、もし憧れのシャネルとコラボできたら、やったー!! と思うかもしれないですね。数日後にはまた平常心に戻っているかもしれませんが(笑)」。

様々なデザイナーとのコラボレーションバックピアスが増えてきたら、いつかは「バックピアスを扱う実店舗も出してみたい」と考えているそう。これからも日本、そして海外で暮らすピアスユーザーの大切なピアスと笑顔を守るために、どんどんチャレンジをしていって欲しいです!!

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