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米国EC・小売HOT NEWS【5】〜Jet体験レポート〜

米国EC・小売HOT NEWS【5】〜Jet体験レポート〜

皆さん、こんにちは。ニューヨーク在住ライターの公文紫都です。今日は、「Amazonの強力ライバル登場か!?」 と米国で話題沸騰のECサービス『Jet』についてご紹介していきます。
街中ではこんな広告付きのバスも走っています。
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私が初めてJetに興味を持ったのは、2015年2月のBUSINESS INSIDERの記事からです。
ローンチ前ですが、1.4億ドル(※約174億円)の資金調達をし、Amazon対抗のECサービスを開始するという内容です。
ちなみに同記事によると、Jetは2014年9月にも、8,000万ドル(※約99億8,100万円)の資金調達を行っていますし、正式にサービスを開始する直前には、2.25億ドル(※約280億円)の調達もしています(※詳細は、こちらの記事をご参照ください)
な、なんだ。このあり得ないお金の動き方は…。
さて気になるサービス内容を知るために、BUSINESS INSIDERの記事を読み進めていくと、

Like Amazon, the site will sell just about everything — but it promises its prices will ultimately be 10 to 15% lower than they are anywhere else. In exchange, people will pay a $50 annual mebership fee.
⇒アマゾンのようにサイト上ではありとあらゆるものを販売していますが、他のどのECサイトよりも、10〜15%低い価格で販売することが保証されています。顧客はその変わり、50ドルの年間利用料を支払う必要があります。

とのこと。
こちらの記事の中に、Amazonとの価格比較がされた表が掲載されています。
Amazonのメンバーシッププログラム『Amazon Prime』の年間利用料は99ドルですから、それよりも安く設定している上に、商品価格もどこよりも安いと。これは一体どういう仕組なんだろう? とサービス開始を今か今かと楽しみにしていました。
ベータ版プログラムに申し込み、6月下旬に使えるようになったところで、早速試してみました。(当初はブラウザベースのみでしたが、今は正式版がローンチされスマホのアプリも公開されているので、主に正式版の体験レポートをお届けします。)
まずアプリをインストールします。Jetのテーマカラーは「紫」です。
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我が家のお姫様(猫)のために、まずは猫缶を見てみることにしました。
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注目して欲しいのが、『Price』の下にある、青地に白のドルマークが付いた部分。
値段が引かれているのが分かると思います。注文数を増やした場合の表示は↓
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ご覧の通り、Jetが低価格な理由その1は、『まとめ買い』です。一度に購入する商品数を増やせば増やすほど、割引率が大きくなる仕組みになっています。
それぞれの商品には、一度で購入できる限度数が設定されているようです。
今回選んだ猫缶の場合は、5セット注文した時点で以下のアラートが表示されました。
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そしてカートに入れると、次のように「いくらセーブできたか」が分かるようになっています。
尚、Jet内で販売している他の商品をまとめ買いしても、割引率は増える仕組みです。
この時の割引対象になるアイテム数は、83万3,036点とのことでした。
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さらに面白いのが、Jetが低価格な理由その2。
『返品不可の選択』による割引。
『返品しません!』と表明すると、多少の割引をプラスすることができます。こちらは任意のオプションなので、返品するかも? という場合には、選択する必要はありません。
私がいつもECで注文している炭酸水もこの通り。注文数を増やすと割引が適用されました。送料無料ラインまで、後少し足りないとのこと。
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割引が適用されない商品は、写真一番下のように、「ドルマーク」は付きません。
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送料無料ラインまで到達したので、配送料(Shipping Fee)は無料になりました。
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ここにもありました。
Jetが低価格な理由その3、 『決済手段の選択』による割引。
以下の画像からも分かるように、クレジットカードではなく、デビットカードを選択すると、割引率が上昇します。
これは、デビットカードの方が企業が負担する決済手数料が安いことが理由でしょうクレジットカードの中でも、American ExpressとDiscoverは割引がないので、クレジットカードの決済手数料の差さえも徹底的に価格に反映させているのが分かります。
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そして注文完了! 最終的にどの程度コストをセーブできたのかが可視化されます。
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こちらはPCサイトから見た場合のJetです。以下の画像はベータ版サイトからのもので、現在は、当時と割引の見せ方が変わっています。
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私が個人的に面白いなと思ったのが、Jetが提供するもうひとつのサービス『Jet Anywhere』
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NIKEやZARAなど、Jetが提携する数百のブランドサイトで購入した後にJetにメールすると、ブランドサイト毎に設定された割引率に基づき、『JetCash』という形でキャッシュバックされ、Jetでの買い物時に利用できるというものです。
JetCash 1ドル分が、Jetで購入する際に1ドル相当として適用されます。
これはすごいですよね…なんとしてでも、Jet経済圏の中に消費者を引き込みたいという強い意思を感じます。
ちなみにJetの創業者であるMarc Lore氏は、オムツを始めとするベビー用品のECサイト『diapers.com』や、洗剤・スキンケア用品などを販売するECサイト『SOAP.com』など、複数のECサイトを運営するQuidsi.incの共同創業者でもあります。同社は、2010年にAmazonに買収されました。
こちらの記事によると、Lore氏は、2020年までに売上高200億ドル、15万ユーザー到達を目標に掲げているのだとか。
現在のところAmazon Primeの魅力の一つである即時配送には、Jetは対応しておらず、商品到着までには2〜3日かかりますが、即時配送に対応するには配送センターの問題をクリアする必要があり、時間やコストがかかるため、Jetは引き続き低価格路線を追求するために「即時配送を始めない」という選択肢もあるでしょう。
さて、JetはAmazonの牙城を崩す強力な存在となり得るのでしょうか。今後の両社の動向に注目していきたいと思います。

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