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【連載!中国の小売・サービス事情vol.10】1年で日本の百貨店の総面積が開発される上海


「連載!中国の小売・サービス事情」は、上海在住で日系百貨店に勤める洞本宗和さんの個人ブログ 「ONE HUNDREDTH」の転載になります。本連載は、洞本さんより、日本の小売業界の向上の一助になれば、と転載許可をいただき掲載しております。

何かとTech方面では注目を集める中国の小売業界だが、従来からの実店舗型小売(※ここではショッピングセンターや百貨店等を指している)の動きも活発だ。

上海に来てから1年半が経過したが、その間にも様々な商業施設が開業した。2017年5月には郊外の七莘路に「VivoCity」が12万平米で、2017年9月には紫藤路に「万象城」が超巨大な24万平米でオープン。開発は郊外だけなく、中心部の住宅地である中山公園にも「Raffles」が開業。商業地区の既存施設でも全面改装等が相次いでいる。

日本の小売関係者なら、上海に来て見に行くべきは盒馬鮮生や無人コンビニだけではない。圧倒的な規模・スピードで開発が進む実店舗型小売も是非チェックいただきたい。

上海は全国でも一番の開発件数

2018年開業予定の商業施設がまとめられている。出典は中国の小売業界の情報を集めている联商网

まず、これは2018年上半期に中国各都市で開発された商業建築面積2万平米以上の施設(ショッピングセンター・百貨店・専門店等)の件数である。1級都市が上位を占めているが、その中でも上海が18件と群を抜いて多い。2万平米と言えば、それなりに大きい施設である (参考:日比谷ミッドタウンの商業エリアの面積が1.8万平米)。もっと小さな施設も合わせると、その数はさらに増える。

その18件の中身がこちら。上半期の中では、地下鉄7号線の行知路駅近くにある「静安大融城」が19万平米と圧倒的な大きさ。

日本と同じように、ここ上海でも郊外には車で気軽に行ける巨大なショッピングセンターが増えている。近隣住民の生活インフラとなるスーパーや多様な飲食店、子供向けの教育施設、映画館など、わざわざ都心部に行かなくても用事が済むワンストップ型の品揃えを実現している。この辺の詳しい内容については、また別の機会にまとめてみたい。

2018年6月にオープンした静安大融城

続いて、こちらは8月以降に上海で開業予定の施設。上半期で18施設がオープンしたわけだが、これからさらに38施設ものオープンが予定されている。

合計56の施設を地図上にマッピングしたのがこちら。たしかに郊外の開発が目立つが、決して郊外だけでもないことがお分りいただけるであろう。

上海で2018年開業&開業予定施設の所在地(筆者作成)

2018年開業予定施設の総面積は520万平米

実際のところ、上記一覧の中にはどう考えても2018年度中には間に合わないだろうと思われる施設も含まれている。また仮にオープンしたとしても、中国では館の開業時には全ての店(テナント・ショップ)は開いておらず、館のオープン以降、徐々に開いていく「ソフトオープン型」が主流なので、各施設が完全な状態になるには暫く時間が掛かるだろう。

しかし、開業時期は前後する可能性があるとしても、上海一都市の1年で56もの施設が開発がされているのである。この56施設の面積を単純合計すると、522万平米にもなる。522万平米と言われても想像つかない方が多いと思うが、日本の全国の百貨店の総面積が570万平米である。つまり、上海一都市の一年で日本の百貨店全ての面積と同じ大きさが開発されているということである。その凄まじいボリュームが想像いただけただろうか。

これが「中国・上海はまだまだ経済発展途中だから、それだけ店を作っても大丈夫」ということであれば問題ないだが、現実は決してそのような状況ではない。

供給過剰の商業施設

下記は、上海ショッピングセンター協会の報告を元に、ここ12年間のショッピングセンターの売上と売場面積をまとめた表である。

出典:上海购物中心的真实现状:是时候敲警钟了_搜铺新闻

ちなみに、2017年時点で上海のショッピングセンターの総面積は1,750万平米だが、仮に前述の2018年開業予定施設(※ショッピングセンターだけでなく百貨店等も含む)の面積522万平米を加えると、その総面積は2,200万平米以上になる。東京都の小売業の総売場面積は約1,000万平米と言われている。”上海市” と言っても、その大きさは6,340万平米(大分県や群馬県くらい)もあるので、東京都の約2,200万平米とは比較にならないが、上海のショッピングセンターだけで東京の総小売面積の倍以上もあるというのは、なかなか信じがたい数字だ。

上記表に寄れば、2006年から2017年までの僅か12年の間に、上海のショッピングセンターの売上は約5倍に、売場面積は約5.2倍に成長している。一見、売場面積に比例して売上も伸びてきたように思えるが、これを年度別の成長率で見ると状況は異なる。

上記表の売上と面積の成長率のみを抜き出したグラフがこちら。

2013年を境に売上と面積の成長率は逆転している。売上の成長率が右肩下がりで鈍化しているのに対し、面積は右肩上がりで上昇。年を追うごとに二つの成長率は乖離していっている状況だ。ここ上海においては、明らかに商業施設が供給過剰に陥っているのだ。

また、中国の小売におけるEC化率は15%と言われている。日本の6〜7%から比べると倍以上の値で、韓国に次いで世界No.2の高さである。実店舗と天猫や京東を筆頭とするオンラインショッピングとの競争も日本以上に激しいのが実態である。

このような供給過剰な開発によって、上海では既に中心部の施設でもテナントが埋まらず、売場を仮囲いしたままの店もよく見かける。そんな状況にも関わらず、旺盛な開発は今も続いている。成長〜成熟に至るスピードが日本より圧倒的に早い中国・上海。今後も継続して生き残っていける商業施設は、本当に特徴化された施設や、圧倒的に魅力ある商品や体験が得られる施設に限られるだろう。このままでは、そう遠くない時期に上海の商業施設 “閉鎖” 一覧をご紹介することになりそうだ。

転載元:1年で日本の百貨店の総面積が開発される上海 2018/9/24掲載