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コワーキングスペースで若者誘致も〜11市町村が取り組むローカルベンチャー〜


2016年秋に地方での起業・新規事業(ローカルベンチャー)」を創出するプラットフォームとして、「ローカルベンチャー推進協議会」が誕生し、全国11市町村が参画している。このローカルベンチャーの最新事例が紹介される「ローカルベンチャーサミット2018」の記者会見が2018年11月2日に東京・神田で開かれた。そこで発表された各自治体の取り組みや民間パートナーとの連携、起業型の地域おこしの具体例を紹介する。ITとの関わりの度合いについては様々であったが、ここからまた生まれ出るものがあると確信し、本ブログにレポートを掲載することとした。

ローカルベンチャー推進事業とは

ローカルベンチャー推進事業は、各自治体の独自の戦略に基づく施策と、ローカルベンチャー(LV)の推進に必要な経営資源を作る協働・連携事業の2つの要素から成るものである。この取り組みにより、地域に新たな経済を生み出すローカルベンチャーを創出することを目指す。KPIはローカルベンチャーによる売上額となっている。

2016年度から数えると、ローカルベンチャーによる売り上げは順調に推移しており、2017年度においての売上計画には未達であったものの、新規事業の創出数は計画を大きく上回るなど、成果も見えてきた。

本記者会見の冒頭挨拶にて、代表幹事を務める岡山県西粟倉村の青木秀樹村長は「(これらの取り組みが)大きな試金石になるかもしれない」と語り、「ぜひ事例を見て欲しい、熱くなっている地方の力を感じて欲しい」と力を込めて訴えた。

ローカルベンチャー推進協議会に参加しているのは、以下の11自治体である。

岡山県西粟倉村(代表幹事)
岩手県釜石市(副代表幹事)

北海道下川町
北海道厚真町
宮城県気仙沼市
宮城県石巻市
石川県七尾市
島根県雲南市
徳島県上勝町
熊本県南小国町
宮崎県日南市

(以上、会員)

では実際に、各自治体ではどのようにローカルベンチャーに取り組んでいるのだろうか。各市町村の事例から見えてきたのは、決して単独で動くのではなく、「巻き込む力」であった。11市町村全ての事例を、ここに掲載していく。

山を活かし、林業の再生へ 西粟倉村

岡山県西粟倉村の青木秀樹村長は、村を支える事業である「林業」について触れた。林業の再生は難しいことであること、だからこそ「もう一度、林業を始めよう」というメッセージを掲げた。林業関連の起業や、移住が増えたことなどが成果として出てきている。山々と森林の風景が美しい西粟倉村HP ( http://www.vill.nishiawakura.okayama.jp/ )

西粟倉村の取り組みのゴールは、「上質な田舎」。若い人々のチャレンジを後押しし、持続可能な田舎を作っていく。

林業に挑戦する若者たちの転入や誘致が増えたことで、村の子どもの人数も回復し、Iターンの子どもは全体の20%にも上る(2018年時点で幼稚園、小学校、中学校の子どもは154名)。若い人に林業を託すことで、新しいビジネスも生まれた。「この仕組みは日本中で必要だ」と先を見据える青木村長の挑戦は続く。

森林を最大限に活かし、ゴミもゼロにする 徳島県上勝町

町の88.4%が森林という、徳島県上勝町。人口は1,556人(2018年9月時点)、高齢化も進んでいる。豊かな森が魅力である上勝町が実践しているのが「葉っぱビジネス」と「ゼロ・ウェイスト」の2つである。

会見当日、葉っぱで染めたネクタイを締め、杉の木でできたジャケットを羽織って会見に臨んだ花本靖町長。「町のおばあちゃんが主に作ってくれている」という。森林に関連した「葉っぱビジネス」には、まだまだ可能性がある。

もう1つの企画「ゼロ・ウェイスト」はその名の通りゴミをゼロにする、という町を目指すアプローチだ。様々な場所でゴミ箱が綺麗に分別用に用意され、またゴミを出さない形を模索している。上勝町で誕生したNPO法人「ゼロ・ウェイスト・アカデミー」は、2020年までに上勝町のゴミをゼロにすることを目標にして活動している。

インターンシップの実施で若者を取り入れ、ローカルベンチャーの相互連携に力を注ぐ上勝町。ローカルベンチャー推進協議会参画にあたり、LVの先輩である西粟倉村を訪問したという。こうした横のつながりが、ますますローカルベンチャーを強くしていくだろう。

移住してきた起業家と伴走する 北海道下川町

下川町では、「シモカワベアーズ」と言うローカルベンチャー人材を発掘するプログラマむを立ち上げ、起業家の誘致と支援に特に力を入れている。実際に、シモカワベアーズから2名の参加生が実際に移住し、事業を進めている。

また、ローカルベンチャー自治体との連携にも積極的だ。北海道厚真町と共同でワークショップを開催し、ローカルベンチャーを始めるきっかけを作る他、石川県七尾市との共同人材募集を東京で行うなど、様々な切り口で人を呼び込むためのアプローチしている。誘致するだけではなく、教育にも熱心だ。「北の寺子屋」という地域活性に興味のある方達を招いた勉強会のほか、「森の寺子屋」では町民からの「こんなものがあったらいいのに」といったアイディアをブラッシュアップし、実践まで伴走する。

下川町の高橋 祐二氏(森林商工振興課上席主幹)は「伴走は街全体」で行うことが大事だと語る。持続可能な開発目標(SDGs)に沿って住民らが作成した「2030年における下川町のありたい姿」の中に「みんなで挑戦しつづけるまち」という項目がある。移住してきた人たちを支えていくことや、町民の思いに添い共に走り抜けることは、持続可能な地域社会の実現にあたって不可欠なのだ。

SDGsとは?外務省ホームページ

様々な企画が循環する仕掛けを 島根県雲南市

雲南市の速水 雄一市長が掲げるのは、子ども、若者、大人が生み出すチャレンジの連載による街づくりである。

「大人チャレンジ」は地域づくり組織でありその主役が高齢者となる。後継者を担うのは「若者チャレンジ」、さらに続くのが「子どもチャレンジ」と、まさに持続可能性を上げるための施策だ。若者チャレンジの一つである「幸雲南塾」からは、多くの卒業生が活躍し、日経ウーマン・オブ・ザイヤーを受賞した「コミュニティナース」など、地域課題への取り組みが注目される企画も生まれた。クラウドファンディングの実施や、ふるさと納税を活用して支援者を募るなど、様々な循環が生まれている。雲南市の「投資をしていくまちづくり」はこれからも加速していきそうだ。

ウーマン・オブ・ザ・イヤー2018 諦めず、信念貫く

「ぶどうの房のように」繋がる企画力 宮城県気仙沼市

研修実施やイベント出展など、具体的な施策を遂行している気仙沼市。菅原茂市長は「水産だけに頼らず」新しいものを作り出そうと奔走している。

その中の一つである「チャレンジャーズピッチ」という企画は、IT界隈の勉強会やイベントでよく実施されている「ライトニングトーク」と呼ばれるショートプレゼン大会に似ているかもしれない。「チャレンジャーズピッチ」では、起業家と支援をつなぐ場として他の村からのゲストを招いたり、東京・茅場町でも実施したりと広がりを見せている。その伴奏者や、応援者の養成も行っている。

子供服のシェアリングサービスなど様々な起業事例が生まれており、水産も大事だが
水産だけに頼らない町の産業構造を作るべく、若い人が活躍したくなる気仙沼を目指している。

みんなのタンス 会員制の子ども服シェアリングサービス

地域の社会課題を解決し復興の道へ 北海道厚真町

冒頭、9月6日に発生した北海道胆振東部地震への支援について感謝の言葉を述べた厚真町の大坪秀幸氏(地方創生総合戦略理事)。震度7の地震は、犠牲者36名、影響が出た面積は3400ヘクタールと「今まで経験したことのないような大きな地震」そのものだった。

ローカルベンチャー推進協議会からの支援として、10月22日・23日の2日間、西粟倉村、気仙沼市、釜石市及び女川町のNPO法人代表者が厚真町に派遣された。現地視察や具体的な助言などを元に、災害復興計画のスケジュールや被災者支援の課題などについて話し合いが行われた。大坪氏は「将来の厚真町にとっての財産」と述べ、今年度の厚真町のローカルベンチャースクールの再開が決定。地域産品の流通事業や、企業とコラボレーションした事業など、様々なローカルベンチャーが生まれている。今年度のローカルベンチャースクールへの参加者は12月20日まで募集を受け付けている。2019年へ向けて、厚真町は復興への歩みをますます進めていく。

厚真町ローカルベンチャースクール

起業家を呼び込む施策の拡充、PRにも尽力 宮城県石巻市

長期のインターンシップ制度を整備し、人材マッチング戦略を図る石巻市。2年間の移住件数は20件に上る。首都圏でのフィールドワークファンづくり施策や、家を探している起業家と不動産屋が持っている空き家をマッチングまで実施する徹底ぶりだ。

震災を機に、観光や製造、1次産業や6次産業など様々なベンチャーが生まれ、20名の起業家が活躍している。起業型・経営型人材が、地域おこし協力隊として半島部の過疎地域にある2社に着任するなど地域に密着した施策も特徴である。「新たな事業をPRしたい」と復興政策部地域振興主幹の門間一也氏の言葉の通り、ベンチャー情報は「石巻ローカルベンチャー白書」で公開されている他、webサイト「ネクストヒーロー石巻」でも情報発信が行われており、集客やLVの活性化に期待が高まる。

コワーキングスペースで若者たちの誘致目指す 岩手県釜石市

ローカルベンチャー推進協議会の副代表幹事を務める釜石市は、を「オープンシティ」というコンセプトを掲げ、東日本大震災からの復興・まちづくりを進めてきた。
佐々木勝氏(総務企画部部長)は、復興は着実に進展しており、「地域の新たな自立を目指す」フェーズに入っていると述べた。

「多様な生き方の集合体」を体現する場所としてオープンしたのが、コワーキングスペース「co-ba kamaishi」だ。釜石初となる民間資本・運営によるこのコワーキングスペースは、シャッター街となってしまっていた仲見世商店街に誕生したという。また、平成29年度からは、「起業型・地域おこし協力隊」の運用をスタート。仲見世商店街の再生や、ゲストハウス経営など、様々な挑戦を行う若者が9名集った。

釜石市のコワーキングスペースco-ba kamaishiのHP ( https://co-ba.net/kamaishi/ )

定住移住だけではなくそれ以外の選択肢の模索や、外部人材向けの事業承継などにも取り組んでいきたいと語る佐々木氏。ラグビーW杯2019のホスト地域として、「世界にも復興したまちの姿を見せたい」と意気込む。

事業承継こそ、ベンチャーマインドが必要 石川県七尾市

民間事業社が1年で50社以上減少し、これに歯止めをかけたい七尾市は、ビズリーチ社とタッグを組んで後継者募集サイトを開設するなど、事業承継への取り組みを模索し、実践している。後継者募集のための「大人の会社見学」ツアーでは、首都圏から12名が参加した。

七尾ローカルベンチャーオフィス

事業承継とは後継を探すことだけではなく、ベンチャーマインドや、そこに思いを持った人が入ってくる流れを仕掛けていくことが大切だと七尾市では考えている。会社見学に参加した方のうち4名が手を挙げてくれているなど成果も出ているが、情報の集め方や共有など、まだ課題もある。金融機関や経済団体などが連携することで、経営支援や承継ファンド運用など、事業承継の具体的なサポートを進めていく形を、これからも創り出していく。

講演に奔走、企業とのタッグにも注力 宮崎県日南市

「日本の前例は日南が創る!」と強いメッセージを打ち出している、宮崎県日南市の﨑田恭平市長。2013年に33歳で日南市の市長となり話題の人となった。講演も多数こなしている。

日南市の一つのキーワードは「民間人」。民間人を積極的に登用し、地元の産業や
商店街の活性化、雇用創出を目指す。民間人を起点とし、その知見やネットワークを活かすことがまちづくりにおいて大切だと言う。

また、企業とタッグを組むときには、企業側にもメリットを生み出すことを強く意識している。丸紅株式会社従業員組合との連携では、「U-35プロジェクト」と題し、社会課題やビジネスアイディアの公募を募った。日南市としてはビジネスノウハウを地域資源とマッチングすることができ、丸紅従業員組合は若手社員に対して仕事のやりがいなどを与えることができる。また、高校生のアイディアが地元の後押しで実現した例もある。油津商店街のアーケードに色とりどりの傘を吊るして街を飾る「アンブレラスカイ」が、10月13日~11月4日の間開催された。チャレンジャーを育み「みんなで応援する」まちづくりを、今後も目指していく。

【参考】宮崎・日南の油津商店街で「アンブレラスカイ」 地元女子高生が企画  ひなた宮崎経済新聞

観光の力を活かし、「上質な里山」を創る 熊本県南小国町

今年度からローカルベンチャーへの取り組みを始めた、南小国町。トマト味噌
町の補助金を使って作成・商品化した例も出ており、「トマト味噌」など少しずつだが成果が見えてきている。また、関係人口創出事業についての講座を開くなど、町外と繋がる取り組みを進めていく中で、都市部の関心の高さも伺え、まだまだ可能性があると感じたという。

主産業は「観光業」「農業」「林業」である南小国町は、観光産業の強みを活かして、都市部の対極にあるとも言える「上質な里山」を目指す。観光において重要な宿泊施設、旅館同士はライバル関係でもあるが共創できるまちづくりへ挑戦していく。

地域の「余白」にどんな未来を描くか?/アイデア会議レポート

終わりに

11市町村の事例全てを通して、「まちづくり」を様々な視点で捉え、産業の活性化やコラボレーションなど、各地域オリジナルの取り組みが光っていた。ただ誘致するだけでなく、定住した後のことも考えサポートをしたり仕組みを整備したりするなど、随所に細やかな工夫が見られた。IT界隈の方々がイメージしやすい企画は、本記事のタイトルにもなっている岩手県釜石市のコワーキングスペースだろう。集まる場所が欲しいのなら、自らつくりだす。そしてつくるだけでなく、そこで何をするのか、どんな場所にしたいのかを具体的にイメージして仕掛けていく。産業や自然など「守っていきたいもの」と、事業やアイデアなど「変化させていくもの」が共存することが、ローカルベンチャーの一つの解なのかもしれない。今後どんなローカルベンチャーが生まれていくのか、まちはどうなっていくのか、ますます目が離せない。