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「進藤さん、ローソンやめるってよ」
IT酒場放浪記 第60回 株式会社ローソン 進藤 広輔さん


ハンズラボCEOの長谷川秀樹が、エンタープライズ系エンジニアが元気に働ける方法を探し、業界のさまざまな人と酒を酌み交わしながら語り合う本対談。第60回のゲストは、ローソンからAWSへ衝撃の転職をされる、株式会社ローソン 業務システム統括本部 システム基盤部の進藤 広輔さんです。ユーザー企業からベンダー企業へと移り、新たなスタートを切る進藤さんに、AWSとのこれまでとこれからのお話をうかがいました!
 ※社名、所属は取材時のものです。

ローソンでAWSと出会って

――早速ですが、お二人の出会いは?

進藤:講演は以前から見ていたんですけど、僕が長谷川さんの前で初めてしゃべったのは、2015年あたりのE-JAWS(Enterprise JAWS-UG)でしたね。ベンダーに関するテーマでパネルディスカッションしてて、「ベンダーが全然使い物にならないから、自分たちでやるしかないんだよ!」みたいな話をしてたら、最前列に座っていた長谷川さんが大爆笑されていて。それが多分最初ですね。

長谷川:進藤さんってローソンは中途ですよね。何年入社?

進藤:2013年。今年で丸5年です。

長谷川:あ、案外短いんだ。10年くらいやってるのかと思ってました。AWSに関わるきっかけは?

進藤:前職までは、AT&Tとかでネットワークやセキュリティまわりのプリセールスをやってたんですね。ローソンはたまたま転職エージェントの方に教えてもらって「これは面白そう!」と転職を決めたんですけど、最初はネットワーク担当の予定でした。それが3カ月ほど経ったころに「AWSって誰か分かる?」という話になって、誰も手を挙げなかったので「じゃ、俺やろうかな」という感じで。

長谷川:ということは、ローソンで公式にAWSを使い始めたのは2013年で、進藤さんが最初っていうことですか?

進藤:そうですね。で、2015年にはだいぶガッツリと、大きな仕組みで使い始めていて、業務の肝となる発注の仕組みの一部もAWSで稼働させました。

長谷川:移行スピードが速いんですね。そもそもローソンさんは何故AWSに移行しようと思ったんですか? 例えば、大企業でクラウドに移行するとなると理屈が必要じゃないですか。既存ベンダーも食い止めようとするだろうし。そこはなんでサクサク進んでいったの?

進藤:まあ、社内にも資産を持ちたくないという考えは間違いなくあったと思いますね。当時、業務の肝となるシステムの構築を検討していたんですけど、それをすべてオンプレでやると膨大な金額がかかる、と。さらに、その頃クラウドといえばAWS一択だった。それならAWSでできないかという話が始まっていたんです。

長谷川:なるほど。普通は肝となるシステムは最後にして、まずは軽いシステムからやろうということになると思うんですけど、そういう感じでもなかった?

進藤:いや、実際の構築はそれこそ軽いものからでした。規模が大きくて割と重要なシステムが本稼働したのは2015年秋ぐらいでしたが、それまでに実験的な仕組みをぶわーっとリリースしていくやり方でしたね。それこそ10個近くは一気に構築したかな。

長谷川:AWSによる開発・構築は外注?

進藤:アプリケーションは外注でしたけど、インフラまわりはローソン側でしっかり握ろうということで、内製でしたね。といってもローソンの社員だけでは足りないので、業務支援という形でベンダーから出向してもらいました。でも、実は社員は僕一人だったんですよ。

長谷川:なにー!? それは回らないですね。

進藤:そうですね(笑)。最初は本当に一人で全部やってました。設計・デザインから、コンセプト資料を作って、社内でプレゼンし、GOサインが出たらアプリベンダーと打ち合わせして。

長谷川:すごいな。ちょっと変態ですね(笑)

進藤:コンビニって24時間365日営業じゃないですか。だから、ローソンに入ると決めたときに、僕も24時間365日稼働だなって思ったんですよ。プライベートと仕事のオンオフを一切なしにしようと決めて。

長谷川:とにかくやったろうと。

進藤:ええ。ただ、これいうと「えっ!?」って言われるんですけど、ベンダー時代に僕はサーバーって一度も触ったことがなかったんですよ。ずっとネットワーク屋だったので、Linuxなんていじったこともなくて。でも、自分で一からやると面白いじゃないですか。アカウント作って、コマンド勉強して、すると段々理解も深まって、素人でも作れるじゃんって楽しくなっていく。それじゃあ、全部やっちゃおうって感じでしたね。

で、15年に本格稼動した「肝となるシステム」というのが、一日数時間・数回のバッチ処理を行う、発注の半自動化の仕組みだったんです。色々なデータを入れて機械学習させて、お弁当とかの発注推奨値を各店舗に提示する。オーナーさんがOKならそのまま発注できて、だめなら調整できるっていう。

長谷川:リテールからすると心臓部ですよね。それがばらつくと、欠品して機会損失となったり、多すぎて廃棄が増えたり。

進藤:そうですね。当時はベンダーも含めものすごく忙しかった。2015年当時にAWSをガッツリ使うということ自体が試行錯誤でしたね。

長谷川:僕も2012年10月にAWSをやると決めて、ベンダーに色々相談したんですけど、「やったことありません」ってところばかりで。どこも「経験ないよ~うんぬんかんぬん」と。僕は「よかったねえ。お金もらいながら経験できて」なんて嫌味言いながら(笑)

進藤:その頃はまだ「AWSに基幹システム移すとか有り得んわ」みたいなノリでしたからね。

長谷川:ベンダーも「うちらのサーバー守らんと!」ってな感じで。

進藤:まさに。ローソンでもベンダーには「クラウドなんかで我々のサービスは保証できません」とかずっと言われてましたね。そことの戦いが最初のミッションでした。

数年経って当時と比べると、クラウドもデファクトになった感がありますよね。転職でも「AWSの経験ありますか」とエージェントに訊かれたりするそうですよ。で、ないと答えると「書類で落ちるからやめましょう」と。

長谷川:へぇ。じゃあ、AWSができる人は引っ張りだこなんですね。

進藤:わはは(笑)

進藤さん、ローソン辞めるってよ

長谷川:今回の本題なんですけど、AWSに転職されるそうで。

進藤:はい。

長谷川:きっかけは? 5年やってきて飽きたなという感じ?

進藤:いや、コンビニは飽きることはないですね。今まで競争相手じゃなかったところが競争相手になってきたり、やることドンドン出てきますからね。

ただ、僕はローソンの業務に特化してきたというよりは、AWSをローソンでちゃんと使えるようにしようとやってきました。そうしたら、ユーザー企業の担当者の方からAWSの使い方について質問されることも増えていったんですけど、まだまだ初歩的なことで躓かれているケースが多くて。「そこですか……」という実感がありまして。

長谷川:うんうん。

進藤:で、「いまだにそういう躓きにアプローチできてないAWS、イケてないじゃん。だったら自分でやったらどうなんだろう」と思ったんです。質問にも我々はこうやっています、と資料もお見せしながら答えてきたので、同じようなことをAWSで出来れば、助かるユーザーの方も多いのではと。

長谷川:では、どちらかというと自分から門戸を叩いた?

進藤:僕にもそういう気持ちがあったし、AWSにもそういった人材が欲しいという思いがあって、ちょうど両者の想いが同じタイミングで重なった感じだったように思います。

長谷川:いいなー。僕なんて、全然声かからないですもん。「俺こそ、AWSやないんか!」って思うんやけど。

進藤:ですよね(笑)

長谷川:で、きいたらね、AWSにはこういう人間じゃないとダメという鉄則があるんだって。「人としてこうであれ」みたいな。で、それ守ると、僕の良さがなくなるんだって。

進藤:あはは、確かに(笑)

長谷川:もう、何かあると「今こそ俺の出番だ!」って腕まくりしてるんだけど、まったく声かからない(笑)

パブリッククラウドは公衆便所!?

進藤:それにしても、小売に限らず、AWSも大分使われるようになって、早いところはもう運用まで一通り経験しちゃってるじゃないですか。そういう先進的な企業と、これからAWSに取り組もうとする企業へのアプローチって、AWSもそろそろ変えていくべきだと思うんですよ。でも、あまり変わってない。そのせいで“届いてない”と感じることが多いんです。

例えば、今もAWSでは「落ちることを前提としたシステムにしてください」と言われるんですよね。これはどうなのか、と。これから使おうという人に「落ちる前提」と説明して誰が使うの、とね。言い方ひとつで印象はだいぶ変わるので、例えば「業務を継続する前提の仕組み」みたいなメッセージに変えていくべきなのに、そこまで至ってなくて。だから“つまみ食い”で終わっちゃうユーザーがいるかもしれないって、すごくもったいない気がするんです。

「クラウドだから安い」だけじゃもう通用しないし、もっとユーザー側の立場になって、そのシステムがどれほど重要なものなのか、そこをしっかり理解して、安心して使えるようなメッセージを出していかないとダメだろうと思うんです。それがクラウドの永遠のテーマなんだろうなあ。

長谷川:なるほど。もうなんていうか、心が完全にAWSの人になってますね(笑)

進藤:ずっとこんな観点で仕事してたんですよ(笑)

長谷川:そういえばこんな話があってね。ユーザー企業が、データセンター、サーバ、アプリの全てを提供しているメインSIerの会社からAWSに持ってくのって、大変なんですよ。私もアドバイザリーで参加したことがあるんだけど、ベンダーの彼らの粘り強さは半端ないね。(笑)

ユーザー側から「AWSに移行したい」と言ったとすると、そのベンダーは「AWSは本当に素晴らしい」とかそれっぽいこと言うんですけど、最後の最後には、「AWSよりも弊社の方が安くなる」というレポートになっている。

で、「ちょっとレポートを見てくれ」と僕も呼ばれて、価格比較表を見たんだけど、ベンダーの提案の方には、なぜかデータセンターの料金が入ってないんですよ。僕びっくりしてね、「そりゃあ、安いでしょ。これ条件をそろえるという基本的なところからですよね」と言ったら、そのベンダーが「データセンターは切り売りしてませんので、比較対象外となります。」と堂々と言う。あと、「AWSに関しては、クリティカルなシステムでも稼働するかどうか検証してます」とか謎なことを言うから、AWSをおもちゃみたいなものとおもっているんだなと。自分たちのデータセンターの方が優秀だと思っているのは、心底呆れました。

進藤:あははは(笑)
そういえば僕、以前とあるプライベートクラウドのユーザー会に呼ばれたことがあって、とあるユーザー企業のCIOクラスの方にこう言われたんですよ。「私たちの感覚では、パブリッククラウドは公衆便所なんですよ。プライベートクラウドの信頼性とか、そういうのを買っているのであって、そっちをメインで利用するつもりはないんです」と。それ聞いて「あ、すげえな」って。

日本の名だたる企業にもまだそういう感覚があるんですよ。多分、そういう人たちは自らシステムをお守りしたことがなく、ベンダーにオンプレで作ってもらってサポートもある環境がありがたいんですよね。1社で全部見てもらえるから楽というか。だけど、IaaS部分をAWSにしたところで、手間は別に増えるわけじゃない。でも、そういう意識のギャップはまだ残っていて、戦いになっていくんだろうなって思いますよ。だって「公衆便所」ですからね。「まだそういう認識かーっ!」ってむしろもうなんだか面白くなっちゃいましたよ。

長谷川:あははは(笑)

「長谷川リスクプロジェクト」発動!?

長谷川:だけど、進藤さん、一人でやってこられて大変だったのでは? 僕なんかね、最近
「東急ハンズのシステムは長谷川が全部仕切ってて、仕様変更とかもあいつが何か言わないと何も動かないんじゃないか?」と思われたようで。「長谷川リスク=業務停止リスク」とかで調査があって。そんなわけないのに。
「あと、自社開発でクラウドなんてやってるけど、大丈夫なのか」って。

進藤:すごいですね。そんな話になってるんですか。あ、でも、ローソンでも最近「なんで同業他社のサービスを使ってるんだ」という話がちょっとあったりしたんですよ。

長谷川:特に大手の小売業には「敵に塩を送るのはどうなの?」という意識がまだあるんだよね。

進藤:なんていうか、純粋じゃないんですよね、システムに対して。そこがすごく歯がゆくて。別に僕はAWSが絶対とは考えていないので、「その時点で一番適しているのがAWSなだけですよ」って説明するんですけどね。あとずっと一人でやってたので「進藤リスク」みたいな空気は若干漂っていたと思います。

長谷川:ああ、それはあるでしょうね。

進藤:「すぐAWS、AWSっていうけど、ちゃんと比較検討したのか?」とかね。やっぱりあるんですよ。「比較検討」って。

長谷川:比較する余地もないのにね。自明なんだから。

進藤:そうなんですよ。でも検討中の企業の経営者は「ホントに大丈夫か?」って思ってるんだから、AWSにはその辺ももうちょっとサポートしてほしいんですよね。

チャレンジには称賛を

進藤:なんていうか、結局のところ、いまだにシステムって「コスト」って認識なんですよね。これが「投資」という認識になるとだいぶ違うと思うんですけど。まだまだクラウドも浸透するには時間がかかる。僕に日本を語るほどの資格はないんですけど、「このスピードで大丈夫か」って思いますよね。

長谷川:そうだよね。俺、この6月に中国のリテール関連のイベントにも行ってきたんだけどね、4年振りだったけど様変わりしてて。支払いは電子マネーのAlipayやWeChatPayだし、Amazon Goと同じような無人店舗もあるしね。とりあえずやってみようというチャレンジ精神はすごいなって。しかも、そういう精神をAlibabaのような先進的な企業だけでなく、昔ながらのスーパーも持っているわけ。これは負けるよなあと思うんだよね。

進藤:そうなんですよね。ローソンも今スマホによる決済を実験的に始めているんですけど、中国の例とかも参考にしているんですよね。それならもう、プラットフォームがどうのこうのとか言わずに「これで行こうぜ!」でいいじゃんと思うんですよ。

長谷川:うん。日本人はよく中国のそういった取り組みに「まだまだ精度よくないし」とか言うんだけどさ、そう言っている日本に「そんなチャレンジする気概あるの?」っていう話でさ。馬鹿にするんじゃなくて、チャレンジを称賛する姿勢で「よし、俺たちも頑張ろう!」と何故ならないって思いますね。

進藤:やっぱり日本人ってしっかり考える文化があって、例えば、2択になっても最後の1つに絞るまで動かないんですよね。僕なんかはクラウドを使うにしてもスピードが最重要だから、「2択まで絞れているんだったら両方検討しろ!」とよく言うんです。1つに絞る材料を集めるくらいなら、その方がよっぽど早い。

それに、日本人には最後まで完成させてからじゃないとリリースしない気質があるけど、完成した時には世界は次のステージに行っていて、すでに勝負の土俵にいないということが往々にしてある。そこに気付いてほしい。

長谷川:ソフトバンクの孫さんも「情報が7割しかないときにジャッジするのが経営者。9割そろってからのジャッジは平社員でもできる」とおっしゃってて。まったく同じ理屈ですよね。

くだらないベンダーをどうにかしたい

長谷川:進藤さんにはそういうメッセージを出し続けてほしいですよね。普通のSA(ソリューションアーキテクト)で行くよりは、元々ユーザー企業にいたということで、やっぱりベンダーしか経験したことのない人が言うよりも伝わると思うから。

AWS側とユーザー側のフラットな視点で普通に意見するとか、あるいはAWSの中からユーザー視点で批判しまくる急先鋒になるとか。その方がエンタープライズIT業界のためになると思いますよ。

進藤:そうですね。そういう形で少しでも力になれれば――。僕のようなユーザー企業出身の人間が入って実体験をベースに「お客様目線」で会話が出来ると言うのが、僕のメリットなんだろうな、と。

長谷川:うんうん。

進藤:AWSもAWSのパートナーベンダーもですが、営業に行っても、小売とか製造とか金融とか、それぞれの業種、会社を理解せず、AWSはこうだとサービスの説明だけして帰っちゃうことが結構あるみたいで。いやいや、小売業に営業かけるなら、まず小売を勉強しようよ、と。そういうのをAWSの中から言えるのは、何かのきっかけになるんじゃないかな。

長谷川:そういう部署を作ったらいいのにね。各業界のことを完全に理解している人を集めたような。

進藤:実際、そういうところ期待されていると思っています。ユーザーが「AWSってイマイチ」と思ってるところを埋めていくとか。あと、“イケてない”ベンダーをどうにかしたい(笑)

長谷川:俺もそう思う。そういうさ、ダーティなところは俺、やるから(笑)

進藤:(笑)

そうそう、長谷川さん、マルチクラウドを提案してくるベンダーってどう思います? きちんと運用とかやっていると分かると思うんですけど、AWSだけでもきちんと運用しようとするとめちゃくちゃ大変じゃないですか。新機能や仕様変更が次々起こるし、それを定期的にキャッチアップしながら、自社のシステムではどうかを検証して、AWSのライフサイクルに必死でついていかなくちゃいけない。それと同時に、Microsoft Azureも同じようにやるなんてとても無理ですよね。

ベンダーは選択肢を提示しているつもりなんだろうけど、ユーザーが良し悪しを見極めるのは難しいし、結局ユーザーのためというよりも、ベンダーが商談を取りこぼさないように幅広く見せているだけに感じるんですよね。そういうポリシーのないマルチクラウドを提案してくるベンダーもどうにかしたい。

長谷川:日本は、バランスをとると言うか、極端な方向に行かない方針だすとこ多いもんね。

進藤:そもそも別のクラウド同士で同期なんてまったく取れないのに、マルチクラウドを提案されると、上層部が「サービスがどれか急になくなった時に困るから、両方で動かしておきたい。うん、ここはマルチだな」とか、やっぱり言っちゃうわけですよ。“●ね”という話なんですよ。いくらかかると思ってるんだって。

長谷川:そうね、いまの“●ね”はフォント大・赤文字でお願いします。

――だいぶ大きいですね(笑)

井の中の蛙、大海へ出でよ

長谷川:進藤さんは、事業会社でやってきて、これからベンダー側に転職される。そこでお聞きしたいんですけど、その立場からユーザー企業の情シスやベンダーにアドバイスするとしたら、どういう感じですか?

進藤:ベンダーに対しては単純明快で。1回ユーザー企業に入ろうと言いたいですね。

長谷川:ああ、一度転職しろと。

進藤:出向でもいいですけどね。少なくとも3年、ユーザー企業で何が行われていて、どう意思決定されているのか、そういうのを経験しようと。そうすれば、ベンダーの中だけでは理解できなかったことが見えてくるから。で、それをちゃんと持ち帰って、ベンダー内部でNoと言える人材になってよ、ベンダー観点だけの提案しないでよと、そう言いたいです。実際、ベンダーの中には一度ユーザー企業に行ってみたいという人は結構いるんですよね。

長谷川:うんうん。

進藤:ユーザー企業に行くと、同じシステムに対していてもベンダーとユーザーとで見える景色が違うことが分かるんです。ベンダーからすると売上の材料でしかないけど、ユーザー企業からすると、場合によっては公共システムだったりして、それを運用することそのものが使命だったりするんですよ。その責任を理解しなさい、と。

長谷川:なるほどね。

進藤:ユーザー企業を外から見ていると「なんで早く決めないんだろう」と思えるようなことも、実はユーザー企業ならではの“理由”があります。そういうのを知ると、おのずと提案内容も違ってくると思うんですよね。

だからベンダーには、出戻り社員にペナルティを与えないでとも思います。そうやって見聞を広めてきた人には、むしろ「戻ってくれてありがとう」と、給料も上げて再雇用してほしい。そういう制度があるといいなと思う。

一方、ユーザー企業の人もずっと同じところにいるのはオススメしません。ベンダーに行けとは言わないですよ、スキルや文化も全然違うので。ただ、やっぱり1社の中でプロフェッショナルになっても、それは井の中の蛙に過ぎなくて。自分の市場価値はグローバルな視点で評価しようと言いたいんですよね。大海を知らないままだと、情シスとしての活性がなくなっていく。やっぱり、新しい風が吹き込むところに新しいものは生み出されると思うので、そういうことを意識しながらキャリアを積んでいくのが面白いと思いますね。

長谷川:まったく同感。人材流動性を高めないと。流動しないことが日本経済停滞の理由だとさえ思っています。

例えば、経営会議とかでも、それまで舌鋒鋭かった人が役員になった途端おとなしくなる。なぜかというと、現社長も次期社長には自分に従順な人を選ぼうとするから、変なことを言わないことが評価の対象になるんだよね。正しいことを言った人の意見が通るのではなく、信任の厚い人の意見が通る。もしもそこで「俺はいつでも転職できる」というね、流動性の高さが背景にあれば、もっとみんな言いたいことを言うと思うんですね。

進藤:絶対そっちの方がいいですね。言いたいことを言って切られるならそれでもいいというか、そうなっても大丈夫なようにみんな実力をつけるべきだと思います。

ローソンの経験を踏まえたAWSの伝道師に

――最後にAWSでやっていきたいことについて、具体的なイメージはありますか?

進藤:そうですね。ローソンでの経験を基に、AWS側の責任ある立場で「こうしていきましょう」と伝えたいですね。ローソンの経験を踏まえたAWSの伝道師みたいな。

――肩書としてはどのようなものになるんですか?

進藤:ソリューションアーキテクト(SA)になります。

長谷川:テクニカルが分かる立場からちゃんとしたアドバイスできる。そんな感じですよね。

進藤:ええ。SAとして責任ある立場の方々にもクラウドのメリットを訴求する。そういう役割が担えたらいいですね。

長谷川:なんというか、AWSだからこその保守運用があるんだよね。例えば、オンプレの場合は正副が必要だけど、クラウドだったら再起動でよくね? みたいな。そういうこれまでの常識とクラウドの常識で異なるところは、保守運用を再設計しないといけない。

ただ、理論上はそうでも、ベンダーに言わせると「何言ってるんだよ」とこれまでの常識にしがみついちゃう。そこで進藤さんのような人が言うと説得力あるし、そういうところから変えていけたらいいですよね。

進藤:あと、AWSがどこまでやっていいというか分からないんですけど、構想が1つあって。

長谷川:ほうほう。

進藤:AWSにもガイドラインというか、共通基盤というか、標準化が必要だろうなと考えていて。AWSのサービスがどんどん進化して変わっていっても、AWSの立場できちんとそれらを改修して、例えば「小売業ならこういうシステム構成があるよ」というようなパターンを作って、そのためのガイドラインを常に提供していく。そうやって導入・運用の障壁を下げていく。

実際、ローソンでも構成をパターン化・自動化していて、社内で勉強会もやってきたので、そういうのをAWSとしてやっていきたいですね。

長谷川:いいですね~。ちなみにSAだと顧客から誘われないとre:Inventには出られないんだよね、ルール上は。

進藤:そうらしいですね。

長谷川:俺らユーザーグループでさ、「進藤さんが来ないのはあり得ない」ってやるんで、一緒に行きましょう!

進藤:ぜひ、よろしくお願いいたします!