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長谷川秀樹のIT酒場放浪記 第58回 株式会社大都 代表取締役 CEO 山田岳人さん


ハンズラボCEOの長谷川秀樹が、エンタープライズ系エンジニアが元気に働ける方法を探し、業界のさまざまな人と酒を酌み交わしながら語り合う本対談。第58回のゲストは、「DIY FACTORY」ブランドでDIY関連用品のオンライン販売と店舗運営を手がける株式会社大都の山田岳人さん(代表取締役 CEO)です。会社を立て直した波乱万丈の経緯やDIY用品業界の課題、東急ハンズとのコラボの可能性など、様々な話題で盛り上がりました。

DIY FACTORYと東急ハンズが組む可能性は?

長谷川: 山田さんと初めてお会いしたのは、「アドテック関西」ですよね。

山田: そうそう。その時は確か、長谷川さんと今オイシックスにいる西井さんとか、何人かの方がパネルディスカッションをされていて、僕はたまたま会場で聞いていたんです。そしたら、僕のことを知ってくれていたみたいで、「ちょっと話して」って、いきなり壇上に上げられたんですよ。

長谷川: 僕はその前から、大都さんのこと気になってたんです。それで、会場になんか見たことある人いるなと思って、名札をジーっと見たら「大都」って書いてあったから。

山田: 初めて会ったのに、無茶振りです(笑)。

長谷川: 東急ハンズって、DIYのイメージが強いんですよね。それで僕も、モノタロウさんとか御社のDIY FACTORYとか、(DIY商品のオンライン販売をやっている会社を)よく見ていたんです。一時期、通販事業部長をやっていた時代もあって、大都さんのような会社を買収したいな、と思ってたんですよ。

山田: そうでしたか。

長谷川: もう、自分たちだけでやってる場合じゃない、同じ志のあるところと組んでいけばいいと思ってたんですね。ちなみに、ほんの数週間前、このIT酒場放浪記に来られたのがカインズの土屋さんで……。
(注:大都さんとカインズさんは、2017年に資本・業務提携しています)

山田: マジで!?(笑)

長谷川: 僕も業務提携のことを知ってたから、土屋さんに「今度、大都の山田さんも来るんですよ」と言ったんです。そしたら、「ジャックか! ジャックが出るなんて超嬉しいわ」みたいな感じで、自分のことのように喜んではりました。

山田: そうか、スマイリーと対談したのか……。僕らの会社は全員イングリッシュネームで呼ぶんですよ。僕はジャックで、誰も社長って呼ばない。で、パートナーさんとか社外取締役にもそういう名前を付けるんです。土屋さんはスマイリーです。

長谷川: 確かに、土屋さんはスマイリーという感じがする。

山田: 本人が決めたんですよ。

長谷川: そのときも、僕が大都さんのことを狙っていたという話をしたんですよ。カインズさんが先に業務提携されたんで、悔しかったと。そしたら土屋さんは「ハンズさんも一緒にやったらいいと思いますよ。面白いじゃないですか」って。
もちろん、うちの人間がすぐ「やろう」とは言わないだろうけど、僕はDIYとかヘルス&ビューティとか、それぞれのカテゴリーでECが得意な会社さんと組むのもいいんちゃうか、という考えなんです。だから@cosmeさんなんかにも一緒にやってもらえたらいいな、と思うんですよ。
例えばDIYは御社から全部仕入れるから、DIYのオンラインは全部御社に任せる、みたいな。そういう座組は、あり得ないですか?

山田: いえ、面白いと思いますよ。

結婚の条件だったから、会社のことを何も知らずに入社

長谷川: 僕の理解だと、御社はもともとお父さんの時代にDIY関連の卸をやっていて、山田さんの代になってから「卸だけじゃ先がないから、ECでダイレクトに売るんだ」とDIY FACTORYというブランドを作ってやってきたんですよね?

山田: そうです。僕は大学を出てからリクルートという会社に行って、6年くらい営業をやっていました。学生の頃から付き合っていた彼女が、大都の先代社長の一人娘だったんです。

長谷川: え、婿養子なの?

山田: 養子ではないんですけど、「娘さんをください」と言いに行ったら、「娘をやるから会社を継げ」と言われて。

長谷川: それまでに、何回お父さんと会ってるんですか?

山田: 彼女と付き合っているときから、一緒にゴルフに行ったりしてましたよ。

長谷川: じゃあ、ゴルフやったりして、なんとなく「こいつだったら、俺の後を継がしても大丈夫やな」と?

山田: そうかもしれない。リクルートでの働きぶりとかも、多分彼女がお父さんに言っていたと思うので。
僕はもともと起業するつもりでリクルートに行っていたんです。でも、何がやりたいというわけじゃなかったので、求められて経営やらせてもらえるんなら、ということで「やります」と言って、結婚して1年後にリクルートを辞めて今の会社に入りました。

長谷川: 当時何歳ですか?

山田: 28歳。その当時は社員数15人くらいで、僕の次に若い人は45歳とかでした。

長谷川: 一般論としては、卸って未来がある業態ではないですよね。当時から「ECでやってやろう」と思っていたのか、それとも彼女が好きでしょうがないから、とりあえず結婚して会社入ってから考えよう、という感じだったんですか?

山田: 後者ですね。結婚するには家業を継がなきゃいけないという状況だったから、何をやっているかは詳しく知らずに「分かりました」と。

長谷川: 詳しく知らないのに突っ込んだということ?

山田: 当然、決算書も見てないです。求められているんだから、とりあえず行きますと。
初めて出社した日はリクルートの時のまんま、スーツにアタッシュケースで行ったら「なんでスーツで来たんや? 着替えろ」って社員さんに言われました。作業着に着替えたら「配達行くから運転しろ」と言われ、社員さんに横に乗ってもらって4トントラックを運転しました。トラックなんて生まれてこの方乗ったことないし、ミッションなんて何年も運転してないから、ずっとエンストですよ。

長谷川: 配達というのは、小売業さんへ?

山田: そうそう。それで、初日に「このビジネス大丈夫かな?」と思いましたね。配達先は、それまで入ったこともなかった金物屋さんとか普通の家だったりして、伝票の金額を見たら1000円とかです。そんなんをグルーっと配達して回る、これはどう考えても儲かってへんやろなって。

長谷川: 僕は勝手に、コーナンさんとか大きなところに卸していて、年商何百億とか何千億とか、相当やってはったのかと思ってました。

山田: いやいや、売上は当時で4〜5億、月3千万とか4千万の会社ですよ。

長谷川: マジっすか? それは想像だにしませんでした。

山田: びっくりしましたよね。「これ、ヤバイな」って。

長谷川: ですよね。

山田: だから最初はずっと、もう辞めたい、リクルートに帰りたいって思ってました。でも後継ぎとして入ったので、当時のスタッフたちが「若いのが来た」って、すごく歓迎してくれたんですよ。当時は会社の2階が先代の自宅という、「The 中小企業」です。うちの嫁さんが生まれた時に建てたビルなので、彼女が子どもの時から知っているという人ばかり。
で、僕は入社してから5年間トラックに乗ってたんですけど、もうどうにもならない、新しいビジネスモデルを作らないと、と考えていました。問屋業って、バイイング・パワーがないと安く仕入れられないので、小さいところは勝てるはずがないんです。でも、仕入先のメーカーさんとは創業時からの付き合いなので、メーカーさんとの直接口座はもっていた。これを活かした新しいビジネスモデルが何かないかと。そうしたら2001年の忘年会で、友だちから「Eコマースっていうのが、これからくるんじゃない?」と言われたんです。次の日に嫁さんと2人でパソコンを買いに行きました。

当時の社員を全員解雇して再出発

長谷川: ECは、パソコンを買うところから始めたんですね。

山田: 最初は楽天さんに出店するところから、1人でやりました。昼間はトラックに乗って、夜は商品ページを作ったりお客さんとやり取りをしたり、一生懸命やっていましたね。
最初の頃、福島県から注文がきたときにびっくりしました。問屋業としては大阪より東は行ったことがなかったのに、福島県から注文がくるなんて、ECってもしかしたらすごいことになるかもしれないと思いました。それが2002年くらいで、その頃は同業者でECをやっているところがなかったんですよ。僕ら、商品数がすごく多い業界で、ホームセンターにも、それこそハンズさんにも置いていない商品がいっぱいあるんです。だから商品登録をどんどんしていったら、ワーッと売上が増えていった。

長谷川: その頃、僕はITの仕事をしていたんですけど、インターネットに関する感度が弱くて、そっちが来るとは思えなかったんですよね。先輩に「今から勉強するならマイクロソフトのWindows Serverか、インターネットかどっちかだ」と言われて、インターネットってわけわからん、バブルちゃうの? みたいに思ってたんです。そんな頃にパソコンを買って、楽天に出店して、というのをどんどん実行していくのはすごいですね。

山田: 背に腹は代えられない状況だったんですよ。会社の収益の状況がすごく悪くて辞めたかったけれど、一応「3代目やります!」と言って入っているし、社員にも家族がいるのでとにかくなんとかしなければと。
僕らは問屋としてホームセンターさんに、定価1000円のものを500円で売りますけど、その仕入れ値は480円だったりするんですよ。だから小売をやればめっちゃ儲かると思いました。でも、リアル店舗を出すには投資が必要で、当時はとてもできない。ECなら数十万でスタートできるというので始めたんです。

長谷川: 確かにね。

山田: ところが、昼間トラックに乗って夜作業していると、大体その日に帰れないんですよ。当時ADSLだったから画像もビーっと徐々に出てくるとか、そんな時で。送り状を印刷する仕組みとかもなかったから手で書きましたし、カードのオーソリなんてファックスで確認するんです。カード信販会社に「このカード番号のこの注文がきたけどどうですか?」とファックスで送ったら「OKです」と返ってくるっていう……。

長谷川: 今じゃ考えられない……。

山田: しんどかったですけど、そこに人を充てる余裕がなくて、月商100万円にいったら1人採用しようと決めてたんです。1年半経ってその目標を達成し、近所でパソコンが得意だっていう女の子を1人採用しました。昼間、その子が僕がやりたかったことを全部やってくれるようになって、そこから売上がすごく増えました。だから、もっと早く採用すべきだったと後悔しましたね。儲かったら採ろうじゃなくて、儲かるために人を入れなあかんねんな、ということを理解しまして、そこから積極的に採用するようになりました。

長谷川: なるほど。

山田: でも、ECはいっても月何百万で、問屋事業の方の落ち込みに全然追いつかないんですね。それで2006年に先代に、「このままじゃ全員路頭に迷うことになるから、廃業させてくれ」ってお願いしました。だけど先代が「親父から引き継いだ会社だから、とにかく残してほしい、お前の好きなようにやったらいい」と言うので、当時いた社員さんたちに「もう1年やって赤字だったら廃業しますから、そのつもりでやりましょう」と言って、続けました。そして1年後に見事赤字だったんです。それで退職金をお支払いして、15人くらいいた社員全員を解雇してもう1度最初からスタートしました。

長谷川: マジで!? 情熱大陸とか、そっち系の話みたい(笑)

山田: 会社は今年で創業81年ですけど、実質は2007年にできたベンチャー企業なんですよ。

DIY業界特有の慣習がある中でビジネスモデルを転換

長谷川: 会社名はそのままで、100%EC専業に切り替えたということですか?

山田: そう。でも問屋業はいきなり止めると仕入先さんや卸先に迷惑をかけます。うちからしか仕入れないという金物屋さんもあったので、1件ずつ「あそこに行ってあげて」と同業者に渡していって、問屋業がゼロになったのは2012年です。

長谷川: せっかく売り上げがあるから、全員解雇せずに何人かは残ってもらって続ける、ということは考えなかったんですか?

山田: 詳しく説明すると、当時は赤字なんだけど粗利はあるので、赤字にならない人件費を計算して、「これだったら赤字にならないので、このお給料でいいですか?」と聞いたんです。それが大体、元の給料の半分くらいでしたから、結局全員辞めました。それは、そうですよね。
限られたリソースになったので、これから伸びる、もしくは夢のある方に張らせてくださいと、ECをやることに決めました。
結局、会社は残ったけれど問屋事業は残らなかったんですね。だけど仕入先さんは、ありがたいことに同じなんです。むしろ、当時は4億くらいだった売上が今は40億ですから、メーカーさんにとっては売上が10倍になったという感じで。

長谷川: そんな歴史があったんですね。

山田: こういう経験があって、僕は組織に対してすごいこだわりがあるんです。以前のうちの会社は、「赤字になったら廃業しますよ」って言っても、みんな定時で帰るんですよ。何十年もそうやってきたから、それが文化になっていたんですね。営業先は21時までやっていても18時で帰る。リクルートにいる頃は売るまで帰るなっていう営業をしてたから、すごいギャップがありました。その時のことは組織を変えられなかった失敗として、僕にとってトラウマみたいになっています。やっぱり組織をしっかり作らないと会社はうまくいかないんだ、というのを実体験として理解して、だから採用とか組織とかに強いこだわりがあるんです。

長谷川: 僕、DIY FACTORY以降しか知らなかったから、まさに「ジャック!」みたいな今時の会社だと思ってたけど、かなり泥臭いことを経験されてきたんですね。

山田: 業界も、昔からの慣習が根強いですしね。何もないところで急に「工具のECやりますよ!」と言っても、誰も商品を供給してくれないんですよ。新規参入しようにもメーカーさんとの新しい口座を作れない。

長谷川: どうしてですか?

山田: これまでのおつきあいをすごく気にする業界なんです。代理店がたくさんあって、そこの代理店さん経由で買ってくださいと言われるんです。例えば電動工具のメーカーのマキタさんと、直接口座を持っている代理店は日本に10社しかありません。うちはその1社で、直接マキタさんから仕入れてホームセンターさんなんかに卸していたんです。ところがマキタさんの場合、代理店は直接ユーザーに売ってはいけないというルールがあるんです。それではうちからネットで売ることができないわけです。日本一の品揃えと言っているのに、ユーザーさんにも「なんでお宅はマキタさんの商品だけないんですか?」と聞かれます。それで、5年くらい前にうちを代理店からはずしてもらって、今は別の代理店からマキタさんの商品を仕入れて売っているんです。「今まで、何百社と代理店になりたいというオファーがあった。代理店から下ろしてくれって言われたのは世界で初めてだ」と、マキタさんには言われましたが。

顧客も取引先も社員も幸せなハッピートライアングルを作りたい

長谷川: 消費者が欲しいと言っているんだから、それまでの関係を清算してでも新しいスキームを作ったということですよね。そもそも卸を100%やめてしまうとか、そういう思いきったことがどうしてできるんですか? 人間て、情とか迷いとかもあって、なかなか決断、実行できないものだと思うんですけど。

山田: やっぱりリクルートの影響は大きいと思います。あとは、全くの素人として入ったから業界の常識に疑問を抱けたのかもしれません。例えばこの業界では約束手形で支払うのが当たり前なんですよ。でも、不渡りなんかも多くて、今だから言えますけど、社長さんやその家族のところまで「金払ってくれ」と行ったこともあって、大変な思いをしました。だからそういうのはもうやめよう、と変えていきました。

長谷川: 僕は前職ではリテールのお客さん中心にやってきたんですが、仰る通り、川下のスーパーさんとかホームセンターさんとかが強いんですよね。俺たちが客押さえてるんだから、言うこと聞いてくれよ、というマインドがあって、例えば店の棚割りを仕入先に作らせるとか。
そういう点では、東急ハンズはちょっと違うんですよ。すごく仕入先さんを大事にするので、もし何かのミスで支払いが滞ったりしたときは、社内の怒りようが半端ないんです。「あり得ない! 今すぐ銀行行って払え!」みたいな感じですよ。

山田: 僕は東急ハンズさんが大好きで、取り引きはなかったんですけど、問屋やっているときには何回も営業に行きましたよ。ハンズさんには、こだわりの商品とか、どこにも置いていない商品がありますよね。
ホームセンター業界って、おっしゃるように問屋に売場づくりをさせるから、同質化するんです。ぱっと見た時にどこのお店か分からないくらい。僕もよく手伝いに行かされましたけど、そういうアンハッピーな取り引きは良くないですよね。Amazonも、カスタマーファーストと言っているけど、サプライヤーの方で泣いている人がいっぱいいるわけですよ。誰かを幸せにするために誰かを泣かせるというのは、絶対に続かないと思うんです。だから、うちの会社のミッションは「ハッピートライアングルから、健全な未来へ。」なんです。お客さんを幸せにするのは当たり前ですが、取引先さんも、うちの社員も、みんなが綺麗な三角形でハッピーになれるようなビジネスをやろうね、と。取引先さんに対して絶対に偉そうに言ってはいけないし、売り上げでも貢献しなきゃいけない。そして、うちの社員もハッピーにならないと意味がない。そういうことを、すごく言うようになったんです。後付けですけどね。ハンズさんのことを悪く言うメーカーさんはいないので、そういう意味でも、僕はハンズさんのお店をよく見ていました。

日本のホームセンターはなぜネットで店舗在庫公開できないか

山田: 東急ハンズって、オムニチャネルの走りですよね。最近はどんなことを考えてるんですか?

長谷川: 僕が考えているのはかなり単純なことで、いわゆるオムニチャネルって、インターネットを活かしてお客様の課題を解決することなんだと思ってるんですね。だから、Twitterとかソーシャルメディアが流行った時に考えたのが、店舗にかかってくる電話の課題を解決しようと思ったんです。電話のうちの7〜8割は「この商品は◯◯店にありますか?」というものなんですよ。それで在庫があるとわかったら、「届けてくれへん?」という人と、自分で買いに来る人がいる。要するに、店に行って無駄になるのが嫌やから、買いたいものがあるかどうか知りたいということなんですね。それを解決せずにTwitterでウェーイとやることに何の意味があるのか、と思って、まずは店舗在庫の公開をすることにしたんです。

山田: 店舗在庫を公開したのはいつですか?

長谷川: Twitterが出たときに、Googleでキーワード検索するみたいなのじゃなく、「こういう商品がほしい」「あるよ」とか、会話みたいなことができないかな、と思っていろいろ探したらチームラボが「僕たちできます」と言うんで、「コレカモ.net」というのを作ったんですよ。

山田: え、コレカモ.net、すごい見てた!

長谷川: 今は、スマホのアプリで各店の在庫が見られます。これからはAIとか色々あるけれど、お客さんの困りごとをなくすということをやっていこう、というのは変わらないですね。

山田: 日本のホームセンターで、そういうことやっているところはないですよね?

長谷川: そうかもしれない。スマホアプリを作る時、この辺はアメリカの方が進んでいたから聞いたら、アメリカは実数、つまり下駄を履かせないというんですよ。で、仲良くしていた無印良品さんに聞くと、その当時は下駄はかせてるって。例えば5個以上は実数で、2〜5個は残り少し、2個以下は無し、と表示するとか。無印の場合、だいたい5個くらいは在庫があるというのでそれができたわけだけど、僕らは1個とか2個しか在庫がないものがめっちゃあるんですよ。結局は店舗に迷惑をかけちゃいけないというので、下駄を履かせて、1個しかないものは無し、と出るようにしたんですけど、それは工具とかの変わった商品だと機会損失になるんですよね。

山田: 日本のホームセンターで買い物しようとすると、例えば「この金具が5個必要」というとき、あるかないか分からないけど店に行ってみるんですよね。車を駐車場に駐めて、売り場を探し回って、やっと見つけたら4個しかない。とりあえず4個取ってレジで並んで買って、もう1件ホームセンター行こう、みたいなことをしているわけです。でも、イギリスなんかはもうそうじゃないんですよね。全部在庫が公開されているので、ウェブで在庫を見てその場で決裁を済ませる。店に行くとカウンターに5個置いてあるんで、それを受け取って帰るだけです。
こんな単純なことが、なんで日本ではできないんですかと聞くと、例えば、ウェブ上では5個あった商品を、別のお客さんが買い物カゴに入れていたらどうするんですか、と。リアルタイムで在庫を管理するにしても、お客さんがカゴに入れてレジに来て、POSを通るまでは分からないから、その間のことを気にするんですね。
だけど、それで困る人がどれだけいるんですか? 海外ではそれを気にしていなくて、ホーム・デポとかも全部在庫を公開しています。商品1つ1つにタグが付いているわけじゃないでしょうから、確かにズレは起きるんでしょうけど、それを気にするよりも多くのお客さんを幸せにしたほうがいいですよね。

長谷川: 全くそう思います。日本の人って完璧主義というか、ちょっとでもアカンところがあったら、こんなものまだ出したらアカン、みたいなところがありますね。
そういう意味で、シリコンバレーと中国はヤバイと思っています。中国の人たちって、グレーなときはゴー、というところがあるから特にイノベーションの分野で先に行くんでしょうね。

DIY文化を浸透させ、日本の住環境を変えたい

山田: ハンズさんは、リアルイベントやったらいいと思うんですよ。

長谷川: 確かにね。

山田: 例えば東京ドームを借りてクリエイターさん集めたりとか、ハンズさんが今までお世話になってるような納品業社さん集めてイベントやったら、めちゃくちゃ来ると思いますよ。夏休みの自由研究をハンズでやろうぜ! みたいな企画をぶち上げて8月とかにやったら、めちゃくちゃ子供たちが来るでしょう。10万人の子供を楽しませる計画とかやったら、すごい面白いと思います。

長谷川: それはすごい!

山田: ハンズのバリューも上がるし、ハンズって楽しい場所なんだって、子供達にも思ってもらえますから。

長谷川: いいですね。店ではゴールデンウィークとか、子供向けのワークショックとかもやるんだけど、どうしてもこじんまりしちゃうんですよね。ドーン! とやるのがDNA的に苦手なんです。

山田: でもね、何年か前に大阪府の住宅供給公社と一緒に団地をリノベーションするっていうのをやったんです。実は、その時の行政の公社の担当者が元ハンズの人だったんです。ハンズにいた頃からこういうのをやりたかった、と。DIY FACTORYの大阪の一号店ができたときから知っていてくれたらしく、声をかけてくれはって、一緒にやることになったんですよ。

長谷川: へぇ、そうなんですか。

山田: 日本の住まいって、めちゃくちゃ不自由なんですよ、衣食住の中でも、衣や食って自由に選べるじゃないですか。でも、日本の住まいって自分で選ぶということができない、賃貸だったら何も触っちゃいけない、みたいな。外国の人からは、日本の賃貸の住まいって真っ白な壁紙で「病室ですか」って言われるんです。でも、もっと自由にできるはずで、そこを牽引していくのは、やっぱりリテールなんですよ。実際の小売業がそこを牽引していかないと、ECだけではたかだか数%の世界なので変えられないんです。だから、僕らがカインズと提携したのも、ここを変えましょう、ということなんです。「日本にDIY文化を浸透させる」、それだけを基本合意契約書の内容にしましょうと言って、そういう契約をしたんですね。数字がない契約書って異例なものだと思いますが。
そういうことって、カインズだけでも当然できないし、やっぱり色々なプレイヤーがそこに参加してほしいんですね。それでいくと、ハンズさんは筆頭プレイヤーなんですよ。日本のユーザーにとって、住まいを良くするお店として一番最初に思いつくところでしょう? だから、ぜひ一緒に面白いことしましょう。

長谷川: ぜひ、やりたいですね! 今日はありがとうございました。