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長谷川秀樹のIT酒場放浪記 第46回 株式会社ココカラファインヘルスケア 販促部マーケティングチーム マネジャー 郡司 昇さん


ハンズラボCEOの長谷川秀樹が、どうすればエンタープライズ系エンジニアがもっと元気になるのか?という悩みの答えを探し、IT業界のさまざまな人と酒を酌み交わしながら語り合う本対談。第46回目には、ココカラファインのマーケティングとECの責任者である郡司 昇さんに登場いただきました。調剤薬局やドラッグストアという業態におけるオムニチャネル化を推進しながら、業界としての課題解決にも意欲的に取り組んでいます。差別化されていない現状をどのように打開しようとしているのか。業界の慣習と併せつつ、お話をうかがいました。

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株式会社ココカラファインヘルスケア 販促部マーケティングチーム マネジャー 郡司 昇さん

1992年、昭和大学薬学部薬学科を卒業後、薬剤師として株式会社セイジョーに入社する。ドラッグストア店長を経て独立し、株式会社ランド設立。セイジョーとのフランチャイズ契約のもとドラッグストアを出店。2001年、株式会社ランド退社。株式会社コーエイドラッグに入社し、調剤(保険)薬局管理薬剤師として仕事の傍ら、ドラッグストア自動発注システムを構築する。2004年3月、株式会社コーエイドラッグを退社し、ふたたびドラッグストアを出店。2007年4月に古巣である株式会社セイジョーに戻り、調剤部課長や事業推進室 営業管理課長などを経て、2010年10月に合併を機に株式会社ココカラファインに転籍。

2013年4月EC事業分社化に伴う社長公募により、株式会社ココカラファインOEC 代表取締役社長就任。2016年4月株式会社ココカラファイン 統合マーケティング部長兼任。株式会社ココカラファインOECは当初の目的(営業黒字)を達成したため、オムニチャネルにおける経営効率を考慮して同年10月グループのドラッグストア・調剤薬局約1,300店舗の大多数が所属する株式会社ココカラファインヘルスケアに経営統合。同年10月株式会社ココカラファインヘルスケアに転籍。現職。

 

リアル店舗とECショップの連携によるドラッグストアのオムニチャネルとは?

長谷川:郡司さんと初めてお会いしたのは、New Yorkでしたよね。2015年1月NRF(全米小売業協会主催のカンファレンス・展示会)のツアーでした。共通の知り合いも多くて、いろいろお話しして。

郡司:そうでしたね。実はその前年の10月オムニチャネルツアーにも参加していたんです。

その共通の知り合いの一人にお声掛けをいただいたので、NRFで発表される米国最新トレンドを知る貴重な機会ですので、まさかの3ヶ月間隔でNew Yorkに行くことにしました。だけど、長谷川さんと名刺交換した時に案の定「なんでオムニチャネルやろうとするのに、ECだけ別会社なの?」なんて突っ込まれて(笑)。

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NRFのツアーで、オムニチャネルでおなじみmacy’s前。
長谷川がいかに痩せたかということが…わかる。(左奥から4番目)

長谷川:でも今はマーケティング部門の責任者にもなられて、これはデジタルとアナログの両方からマーケティングをやっていこうということですよね。

郡司:ええ、私はEC事業責任者を3年前からやっているのですが、マーケティング部門はこの4月にできたばかりなんです。もともと弊社EC事業は2006年くらいからやっていたのですが、やればやるほど赤字が膨らむという状態で、それを一度きちんとしきり直して、損益に対する責任を持つということで事業会社化しようという話になったんです。当時、私自身は販社統合のためのマニュアルを始めとした様々な施策に仕掛かっていたのでEC事業会社を自分でやるつもりはなかったのですが、以前からECについての構想があったので、その事業計画をまとめてプレゼンしたら「じゃあ、お前やれ」と。

長谷川:2つの責任者になって、どんなことを感じられますか。

郡司:1つは、医薬品をはじめとしたドラッグストア商品のEC化率はそんなには高くはならないだろうという実感です。数字や理屈からも想像は難くないですが、ECをやってみて肌感覚としてそう思うようになりました。薬などは早くほしいだろうし、化粧品は試したい。リピートするものはまとめ買いや特価を狙う人が多いので、物流に巨大投資する企業やメーカーサイトには勝てない。となれば、ドラッグストアにおけるECも含めたIT活用の存在意義はリアルに近いもの。いろいろ試せることだったり、プロのアドバイスが得られたりすることなんだろうなと。となれば、ITで実現すべきなのは店舗での顧客満足強化なのかなということをECに取り組んでわりと早期に考えました。

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長谷川:確かにECで買うならAmazonとか楽天とか、リアルなら近所のドラッグストアという感じってありますよね。

郡司:Amazonとか楽天にはチャネルを持って、運転させていくために十分な黒字であればいいかなと。それで、本店ECの方は、リアルの店舗のサポートが主目的になると思ったんです。そう考えながら調べてみると、無印良品さんとか、東急ハンズさんに突き当たる。おかげさまでいろいろ勉強させていただいています(笑)。

その中で課題として感じているのが、セリングからマーケティングへのシフトです。これまではメーカーさん・ベンダーさんとの商談が上流で店舗の品ぞろえが決まっていきました。メーカーさん・ベンダーさんは大手ドラッグストアのほとんどを商談して回っているので、どこも同じような品揃えになるわけです。それでは差別化できないですから、もっと各店舗の地域性とお客様に応じた商品を、スタッフ自ら見出して店頭に置くことができるような仕組みが作れたらと思っています。

長谷川:業界的にはどうなんですか。急速に統廃合が進んでいるようにも感じられますが。

郡司:業界の総売上は6兆円で、その7割を上位10社が占めている状況です。統廃合の目的は、バイイングパワーを高めるため。スーパーマーケットの場合、生鮮物流が不可欠なので地域密着型の店舗が強いわけです。だから、小さい店でも生き残れる。一方、ドラッグストアは使用期限が2〜3年という薬、化粧品、期限がない日用雑貨などが多いですから、物流が即日である必要性があまりない。物流の難易度が低いということから、どうしても仕入れ力としてボリュームが不可欠になるんですよね。で、もともとドラッグストアはみんな全国展開を目指して100店舗程度でもいろんな県にまたがっていた。となれば、統廃合して一緒になった方が合理的という判断になるんだと思います。

長谷川:それは面白いですね。スーパーもドラッグストアも日々の生活に欠かせない存在ながら、「長持ちするもの」を扱っているからというので、事情がそこまでかわるとは(笑)。

 

薬剤師から紆余曲折を経てチェーンのマーケティング責任者

長谷川:ところで、郡司さんは前職では何をされていたんですか。

郡司:実は、もともと薬剤師なんです。薬学部で研究職を志望していたのですが、母子家庭で母の健康不安もあって、世田谷区と大田区中心で50店舗ほどなので転勤がないドラッグストアチェーン「セイジョー」に入社しました。その後、株式会社を作って、セイジョーとのフランチャイズ契約で独立して港区高輪に9坪という小さな店を出したんですが、3年目で共同経営をやっていた親戚に譲って、コーエイドラッグという現在クリエイトSDホールディングス社長の廣瀬さんが当時経営していたチェーンに再就職しました。そこで調剤の薬局長(管理薬剤師)をしながら、ドラッグ事業自動発注システムのロジックなどを作っていました。その後、今度は完全自営でドラッグストアを開店したんですが、目の前に大きなドラッグストアができて撤退せざるをえなくなり、セイジョーから「調剤が伸びているのでマネジャーとして戻らないか」という話をいただいて戻ったんです。

長谷川:ドラッグストア業界の中でもけっこういろいろとご経験されているのですね。

郡司:ええ、けっこう苦難の道です(笑)。調剤のマネジャーとなった時、前年比1.5倍以上の伸びにも関わらず導入された在庫管理システムに問題が発生し、現場が混乱していました。そういう状況なので現場の声をひたすら重視した結果、当時の経営層とけっこうやり合いまして…、事業管理部門に異動してからは上も下も見えるようになったので、良い意味でトップダウンとボトムアップのバランスが取れるようになったと思います。

長谷川:いわゆる「パパママストア」の店長もご経験の上で、チェーンのマーケティング責任者となっているのは、両方を知っているという意味でもいいですね。そんな郡司さんから見て、店舗への権限委譲はどのくらいまですべきだと思われますか。

郡司:一般論としては、社内教育など全体の仕組みへの考え方とリンクするのが自然ですよね。自主性を重んじるのであれば、本部からは共通化できるシステムを提供するのみで、店長が経営やマーケティングまで考えて自立的に運営できるのが理想だと思います。とはいえ、業界ではそうなっていないことが多いと思います。

長谷川:セントラルコントロールが実態、というわけですか。でも「パパママストア」的に自分でいろいろと運営する方が絶対楽しいでしょう。

郡司:そうですね、立地や顧客を知った上でコンセプトを立てて、仕入れや販売の施策を考えるわけですから、売れるとやっぱりうれしいですよね。ただ、現状だと店長が自店にない商品を知る機会って案外少ないんですよ。雑誌やCMで認知していても、展示会などでバイイングするには至っていないので。

長谷川:ウォルグリーンとか、もうスーパーみたいになっていますよね。あれも1つのドラッグストアの発展形だと思うのですが、今後、ドラッグストアはどんなふうに変化していくのでしょうか。業界内の差別化もそうだし、スーパーなど他業態との競争も課題ですよね。

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郡司:スーパーとの競争ということでいえば、九州のコスモスさんが当てはまりますかね。他の企業が参入しない「小商圏」に狙いを定めて大型店舗を出店し、EDLPの低価格化を極められている。業界内のリサーチによると、ドラッグストアの印象度と好感度はリンクしていて「知っていれば好き」ということです。つまり、どこも似たり寄ったりということなんですよ。

なおLINEを最も効果的に売り上げにつなげたとして、日経デジタルマーケティングのランキングで1位と2位にドラッグストアチェーンが入っていたのですが、ドラッグストアの場合、基本的に全ての顧客に同じ情報が届いていて、本来のマーケティングとはいえない状態も出てきます。たとえば好きな服のブランドからなら新製品の情報が届くとうれしいでしょう。でもドラッグストアは扱いカテゴリが広いので、大手の新商品が出ると情報が興味のない人にも届いてしまう。長谷川さんや私にファンデーション新製品情報が届いても迷惑なだけですが、ビューティ関心度の高い女性には嬉しい情報です。様々な属性の人がいるので、本来ならそのセグメンテーションが必要なんですが、できていないんですよね。結果として、効果のあるものとして経営を圧迫する全品5%や10%値引きのクーポンが乱発されてしまう。

長谷川:なるほど、品揃えだけでなくてマーケティングの施策そのものが課題というわけですね。

郡司:ええ、もう「売り方」そのものが課題だと思います。もちろん、前述のコスモスさんみたいに出店が戦略的なところもありますし、店の見た目や接客ではなくて、とにかく安さを追求しているところもあります。ただ、意図的かというと、そうでないことがほとんどです。

ココカラファインは「人々のココロとカラダの健康を追求し地域社会に貢献する」を経営理念として掲げているので、その方法で売ることを考えます。だから、差別化ポイントといったら、一人ひとり異なる顧客の健康ニーズに対応する「One to One」だと思っています。

 

ネットによる医療情報の提供で『友達以上、医者未満』の頼れる存在に

長谷川:「One to One」の施策としてどんなことを考えているんですか。

郡司:たとえば、事前の検討行動で青汁の情報をしきりに見ているけれど、POSデータでは購入していないことが分かった場合、その人に青汁という商品に紐づけた「お試しクーポン」などを提供すれば購買意欲を高められるかもしれません。さらに、商品に紐づけることでメーカーさんの協力を得ることができるでしょう。

長谷川:それは、お客さんもメーカーも嬉しくて三方よしですよね。でも、定期的に購入するものなどだとAmazonみたいなところがガサッと持っていく恐れもあるわけでしょう。そういうネット系に対して脅威を感じることはありますか。

郡司:確かにそのステージではAmazonに勝つのはなかなか難しいかもしれません。でも、ドラッグストアの強みはリアルな店舗で「見て買える」「すぐ買える」というところだと思うので、そこを強化した施策なら有効だと思いますね。

例えば、病院にいくほどではないけどちょっと調子が悪い時、思い出してもらえる存在にはなりたい。もちろんスタッフ研修なども行なってはいますが、そう頻繁にできるものではないし、大手は一定以上の水準にあるので他社との差別化は難しい。そこで、ネット上で『友達以上、医者未満』を念頭に様々な施策をスタートさせています。

体調が悪いという時に一番相談しやすいのは家族や友達ですが、専門家ではないので正しい答えがかえってくるとは限りません。一方、一番相談したいのは医師ですが、ちょっと調子がおかしいというくらいで受診するのは難しいですよね。そこで『友達以上、医者未満』の存在にココカラファインがなりますよという意思表示をしていきます。

このステージでは「囲い込み」をするという発想ではなく、「見てすぐ買える」という機能を強化することに重点を置きたいですね。

長谷川:最近だとDeNAの「Welq」の撤退騒動などで、医療系コンテンツへの風当たりが強くなっています。

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郡司:そこはもう自分たちのリソースとして監修をしっかりしていますから(笑)。店頭で言っていることとサイトに記載されていることが違っては本末転倒ですので、店舗で説明するための教育内容とコンテンツはリンクして作成していますし、薬機法だけでなく医師法、景表法も考慮に入れたガイドラインに沿って業務遂行しています。また、ガイドラインのボーダーと判断したものは薬剤師かつ弁護士の方のアドバイスをいただいたうえで投稿の判断を事前にしています。まず自社のサイトで「ちょっとした不調」についてのコンテンツを提供していきます。また、OK Waveに「専門家」として回答するサービスがあるんですが、そこにココカラファインの専門家薬剤師として登場し、相談事に応対するということをはじめました。そこから直接購買に結びつくことは期待していません。少しずつココカラファインに対して、ヘルスケアイメージを持っていただこうと思っています。

長谷川:なるほどね、ドラッグストアが出す情報となれば、消費者も一応安心して受け取るでしょうからね。でも、直近で効果が出ないのって、社内でなかなか評価してもらいにくいでしょう。

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「ココカラクラブ」(www.cocokarafine.co.jp/)

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OKWAVE Professional ココカラファイン 薬剤師 (http://okwave.jp/profile/u2770375.html)

郡司:まあ、そういう人もいますね。でも、実は問題はもっと手前なんです。6社が合併してできたので、サイトだけでも数多くあって、整理が必要でした。それで、まずはお客様向けの情報を一つの窓口にしようということで「お客様向けサイト」「EC」、そして「ココカラクラブカード会員サイト」の3つを1つに集約させました。

実は秋まではECとクラブカード会員サイトのIDが分かれていたので、アプリIDも含めて統合させて、1つのIDでECとクラブカード会員機能、アプリを全て利用できるようにしたところです。ここでの目的も販売というより、「友達以上、医者未満」での情報提供がメインです。また、各店の在庫情報もオープンにして「店に行けばある」ことがわかるように、お客様の利便性を高めようとしています。

長谷川:その辺り、大変だったでしょう。

郡司:まあ、まだ進行中ですが(笑)。昨年、ECサイトをAWS上にリプレースして、コマース21をベースにしました。そこに至るまでがまあ大変でした。実務的な情報って、もっと担当者同士でやりとりするべきだと思いますね。どうしても決裁者は機能の有無と合計コストで判断するので、現場の“分かる人”がもっと比較検討しなくては。とはいえ、「目に見えない差」ってやってみないと分からないでしょう。その知見は発注側同士で共有しないと、同じ過ちを各社で繰り返すことになりますからね。

 

変わらない調剤薬局のシステム

長谷川:なかなかITベンダーで業務を分かっている人って少ないですよね。会社の中にはいるんでしょうけど、アテンドされた人によって全然クオリティも違うし。

郡司:一般的にITベンダーを決める時に、大手が入れているとか、価格で決まっちゃうということも多いのでしょう。あと、機能をちゃんと現場で使いこなせるのか調査・検討しないまま、決めてしまうということもあると思います。だから入れてみて、改善に向けて苦労することもしばしばあります。

長谷川:調剤薬局のシステムってどんな機能があるんですか。

郡司:在庫管理や伝票管理、薬歴管理を行うシステムがそれぞれあって、基幹システムとしてレセプトコンピュータがあります。処方箋を受け付けてデータを入れると、保険点数と本人負担が計算され、薬の説明書が出てくるというものです。健康保険は県や区で異なっていて毎年改定されるし、あと薬も頻繁に変わりますが、データさえきちんと刷新されていれば、個人的にはレセプトコンピューターは何でもいいと思っています。問題は在庫管理と伝票管理システムですね。それがバラバラで、各会社でロジックを考えて最適化しようとしています。

長谷川:なんだか売り買いでもいろんな業種業態で事情が違うんだなあと、実感します。

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郡司:医療用医薬品の供給一つとっても、全体最適化ができれば薬局にも患者さんにも卸さんにも負担が減るし、社会全体での無駄がなくなるんですが、従来通りを踏襲する形では問題も解決できないですからね。

長谷川:システムもそうですが、患者側から見れば、簡単な診察くらい薬剤師が代わってやってくれればいいのにと思うんですが。

郡司:そこは法的な問題もあり役割も違いますからね。うちでもOK Waveでは一般的な話をするのに留まり、個別の診断とみなされる行為はしないというルールで運用しています。ただ、風邪だという自覚があるなら、病院よりも、薬局薬店でOTC薬(一般用医薬品)を選ぶ際に薬剤師からアドバイスを受ける方が選択肢は多いかもしれません。

と考えると、たとえばインフルエンザの検査薬が薬局で買えるようになると便利でしょうね。それでインフルエンザと目星がつけば、病院に行って確定してもらう…、みたいな。

長谷川:それいいですね。もう体調が悪い時に病院に行くのは辛いですから。でも、難しいでしょうかね。

郡司:いろんな理由がありますね。中性脂肪を下げるEPAの薬にしても、原因はともかく結果として、医師が必要と診断した人のみが服用できるという形になり、でもそういう人は病院からも同様の薬をもらいますから薬局で新たに買うことはないんです。というわけで店では売れないので、ほとんど店頭にはおかれていません。検査薬関係が簡単に買えるようになると、生活者のQOLは大きく良くなるのです。患者さんのことを考え抜いて行動される医師もいらっしゃいました。調剤時代、HIV専門医院を立ち上げるので、その近所の弊社ドラッグ店舗にHIV用の薬を置く薬局を開いてもらえないかと依頼があったことがありました。HIV用の薬は非常に高額で、対象の患者さんの数が少ないということで、普通の薬局では在庫していませんので。

当時、薬剤師不足が極まっていたのですが、社会的意義もあることですので、ドラッグ事業の協力も得て売場を削って薬局を併設しました。そこでは医師と薬剤師が連携して定期的にカンファレンスを行い、より良い薬、より安価で効果的な方法を探して情報交換していますね。

長谷川:いいですね。やっぱりそこはシームレスになっていると患者になる身としては安心です。

 

薬剤師として被災地支援に参加 そこで感じた薬局の在り方とは

郡司:まだそれでも平時ならば、病院で待ち時間が長くても、薬剤師が受け身でも何とかなるんです。でも、震災のときは薬剤師としての在り方に問題を感じましたね。

医師は災害の急性期活動を担う災害派遣医療チーム「DMAT」があってすぐに現地に駆けつけます。災害規模によって被災地の医療体制が回復しない場合はDMATと交代するように日本医師会災害医療チーム「JMAT」が現地入りします。看護師も意識が高い人が多くてJMAT参加する医師が募集すると希望者はすぐに集まる。でも、薬剤師会が派遣を決めたのはかなり後でした。

災害時にはまず薬が不足しますし、自分が何を飲んでいるのかも分からない人が増えます。「いつもの血圧の白い錠剤」としか分からないわけですね。薬剤師が必要になる場面が多いはずなんです。それでココカラファインとして3月下旬JMATに同行して薬剤師を派遣することになった時に真っ先に手をあげました。で、参加することになり、医師と看護師、薬剤師、事務員のチームを組んで宮城県で無料診察を行なったんです。最初は避難所で、避難所が終わるとコンビニなどで車の中の人にも声をかけてまわりました。震災独自の症例もいろいろあって、エコノミー症候群とか家族を目の前で失ったことによる鬱、津波が運んできた泥が乾燥して粉塵になって喘息がひどくなった人もいました。あの時ほど「薬剤師でよかった」と思ったことはないですね。

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長谷川:薬は代替がきかないですからね。そう考えると、シンプルに調剤薬局で在庫を持つというのは、地域の災害対策としても不可欠なことなのでしょうね。調剤薬局やドラッグストアの存在意義を改めて実感します。でも、そもそもドラッグストアって比較的新しい業態ですよね。

郡司:ええ、40年くらいですかね。もともとは「パパママ薬局」が起点で、急拡大したのは同一エリアへの出店やOTCの定価撤廃などの規制緩和があって価格競争が始まったことが大きいでしょうね。その後もいろいろとルールが変わり、チェーン化しなければやっていけなくなったこともあってドラッグストアチェーンが続々増え、拡大していきました。

長谷川:でも、どうして日用品を取り扱うようになったんですか。それも、激安というところが多いですよね。

郡司:日用品を取り扱っているのは、商店街での役割が踏襲されているんだと思います。激安なのは、薬の利幅が大きいから。トイレットペーパーを買いにきて、ついでに常備薬の風邪薬を買っていく…、みたいなことを戦略的に狙っているわけです。普段日用品を買っている店で、薬も買うでしょう。

長谷川:確かに買ってますね。あれは戦略だったのか(笑)。

郡司:そもそもOTCだけじゃなく、調剤薬局の利益もそれなりにあって。各ドラッグストア企業が調剤に注力しだしたのは、ドラッグストア事業の競争激化も一因と思います。また、チェーン化していない「パパママ薬局」も多く、日本ではコンビニよりも多いんですよ。さきほどドラッグストア業界は上位10社で7割のシェアといいましたが、調剤だと1割しかありません。

パパママ薬局には地域密着という利点があります。でも、チェーン店になると教育やシステムにも投資できて、前述したような「友達以上、医者未満」といった情報提供もできるようになります。

長谷川:日本のドラッグストアはまだ差別化できていないから、まだまだチャンスがありそうですよね。

郡司:ええ、ココカラファインは「cure」「care」「fine」をテーマにしています。つまり、病気や不調の改善=Cureに加えて、体調を整えること=Care、そしてもっと健康や美をポジティブに追求しながら生活するお手伝い=Fineの三位一体。あくまで健康寿命を延ばすことが大切だと考えています。震災でも感じたんですが、人ってCureだけでは健全に生きていけないんですよ。CareとFineにこそ、ドラッグストアの存在意義があるんじゃないかと思っています。

 

目的主義で自発的に生きる 生涯現役でいるための健康づくり

長谷川:人の健康と老いって、本当に国家的な問題ですよね。医療費はどんどん上がるし、高齢化は進むし。年金制度も崩壊しそうだと言われています。でも、ある官公庁勤めの知人は、人口バブルが弾けてしばらくはきついけど、少しずつ人は死んでいくのでそのうちバランスが整うんじゃないかと予測していましたね。それまでは借金しながら耐え忍べばいいと。

郡司:耐え忍ぶといえば、国民性という点もありますね。

そういえば、今年になって中国出身の2年目社員が配属されたんですが、とにかく仕事への意欲がすごいんです。同じ立場の日本人とはモチベーションに圧倒的な差がある。まあ、日本に来る人は成功を望んで来るわけだし、貪欲かつ優秀なので単純に比較はできないんですが。

長谷川:そこは僕もすごく懸念してます。うちの息子も一人っ子で、何かと恵まれているんですよね。僕自身は兄がいて、そう裕福でもなかったのでがつがつしてた(笑)。よくいえば、ハングリー精神があって、もっとがんばれば、もっといいことがあると思っていましたから。今の20代は、満ち足りた中で楽しそうだから仕事をする、自己実現のために仕事をするという人が増えているといいます。それではたして、いざというときに踏ん張れるのか。息子も含めてちょっと心配ですね。

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郡司:実は、僕はあまりハングリー精神がないんですよ。母子家庭でしたが、母が稼いでくれていたのでお金で苦労もしていないし、兄弟間の競争もなかったので。2回お店の出店で成功していないのは、そのせいもあるかと自己分析しています。石にかじりついてでも数値目標を達成して収入をアップするという発想があまりなくて。なので営業職には向いていないでしょうね。

物事と向き合う時に、「なぜそうなったか」という原因に注目することが好きで、それに比べると結果はあまり興味がないんですよ。どうやって実現するかというのを考えるのは好きだし得意ですが、それを日々徹底していくのは苦手かもしれません。

長谷川:確かに、個人的な欲望に対するハングリー精神ではないかもしれないけど、興味があることには貪欲じゃないですか。自発的にトランジションしながら行動されているご様子は、どこからどう見ても目的主義的だと思います。

郡司:その自覚はあるつもりですけどね。47歳になったので、残された時間の中で何をすべきかというのは常に意識しています。多くの現場や営業職が「何個売れたか」に注力する中で、自分は「なぜ売れたのか」「もっとよくするためにはどうしたらいいのか」に注目するのが自分の仕事なのかなと。

長谷川:起点がそこだから、オムニチャネルなどの施策も情熱を持って取り組めるのでしょう。「今流行だから」とかでやらされている人が担当者という企業は、まず失敗するでしょうからね。

郡司:そもそもそれではあまりにつまらないですもんね。とはいえ、時間がなさ過ぎるのが悩ましいです。今ある場所におかれてみると、改めて問題が山積みでやるべきことが次々と思い当たる。それを今必死に取り組んでいるところです。

長谷川:ポジションから全体を捉えて「自分が成すべきこと」を見出せる人はすばらしいと思います。お互い健康に気をつけて、来る高齢化社会も現役でがんばれるようにいたしましょう。本日はありがとうございました。

郡司:ありがとうございました。

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