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長谷川秀樹のIT酒場放浪記 第42回 株式会社アイスタイル取締役 兼 CFO 菅原敬さん


長谷川秀樹,菅原敬
ハンズラボCEOの長谷川秀樹がIT業界のさまざまな人と酒を酌み交わしながら語り合う本対談。今回のゲストは、@cosme を運営するアイスタイルの創業時から関わり、現在は投資会社も経営する菅原敬さん(取締役 兼 CFO)です。実は「IT酒場放浪記」のきっかけにもなったという菅原さんとのお話は、創業秘話からシステム開発の組織づくり、美容業界の変革への思いまで多岐に渡りました。

アイスタイルの創業を手弁当でサポートし、5年後に正式ジョイン

長谷川 菅原さんは、どういう経緯でいつ頃アイスタイルにジョインされたんですか?

菅原 アイスタイルの社長の吉松とは、同じ96年にアクセンチュアに入社してるんですよ。入社2年目に、僕がアサインされていたプロジェクトに吉松が入ってきて、そこで一緒になったんです。僕らのひとつ下には、今は投資家で2000年頃はビットバレーブームの中心にいた松山太河という奴がいて、「もうコンサルティングなんてつまんないから、ネットベンチャーやりましょうよ」なんて話をしていたんですね。それで吉松もネットエイジという会社にボーナスを突っ込んで投資したりして、徐々にIT起業家のコミュニティに入って行き……。

長谷川 それで、「コンサルなんてやめちまおう」と?

菅原ちょうどそのころ、吉松の友人の山田メユミという女性が伊勢半という老舗の化粧品メーカーで働いていて。山田はコスメの開発やブランドの立ち上げをやっていたんですけど、自分も化粧品大好きだし、仕事でもプライベートでもいろんなメーカーの化粧品を使うので、その感想文をメモしていたんです。それを「週刊コスメ通信」というメルマガで配信し出すと、半年くらいで5,000人くらいの読者が付いたんですね。

長谷川 5,000人はすごいですね。

菅原敬,長谷川秀樹

菅原 で、「その商品、私はこう思いました」という読者からの反応が、たくさんそのメールボックスに返ってくるんです。職業柄、吉松はそれをデータベースに格納したくなるわけですよ。そうすればHTMLで表示できるし、投稿も受け付けてアップデートもできる、「そのままにしておくのはもったいない」と。「それやったら、世の中の人達がすごいハッピーになるんじゃない?」ということで、ふたりは有限会社を立ち上げた。それが99年7月、アイスタイルの始まりです。

長谷川 そうだったんですね。

菅原 その半年前ぐらいから僕も巻き込まれて、うちの実家とか、夜中のプロジェクトルームとか、地方のプロジェクトで滞在していた借り上げマンションの中とかで何人かで事業計画を一緒に書き、投資家回りをして、サイトの構築のためのドキュメントも作って……。アクセンチュアの奴らは同期も後輩もみんな巻き込まれましたよ。

僕はフルタイムで入ってくれって言われたんだけど、まだコンサルタント3年目ですからね。吉松の新しいチャレンジを応援したいけど、元々コンサルティング業界に憧れて入ったので、もうちょっとやりたかったんです。とりあえずマネジャーの仕事を一通りやったら一人前なんじゃないかと思ったので、シニアマネジャーに上がるタイミングで辞めるつもりで、しばらくはコンサルの仕事をしながらサポートしていました。海外出張に行けば、化粧品のあれ買ってこい、これ買ってこいとかいろいろ頼まれたり、こちらからは投資家を紹介したり、ずっと報酬もなしでやっていましたね。で、途中から会社法が変わって、2001年かな、取締役が3人必要になり、「取締役が足りないからなってくれ」と言われて取締役になったんです。僕がフルタイムで入ったのは2004年。アクセンチュアの次に入ったアーサー・D・リトルという戦略コンサルティングファームで、シニアマネジャーに昇進できそうかなといった時期です。

長谷川 アイスタイルの立ち上げから5年ぐらいは並走して、5年後ぐらいにやっとフルタイムでジョインするということになったんですね。

社内エンジニアの役割を変え、開発のスピードを向上

菅原 僕が入ったタイミングでは、基本的に吉松と山田がすべてを見ていたんですよ。いわゆるベンチャーの組織としてよくありがちなハブ&スポーク型で、中心にいる創業者がすべてを管轄している、そういうマネジメントの仕方を4年間やって、かなり厳しくなっていたんですね。

長谷川 その当時で何人くらいの組織になっていたんですか?

菅原 60人くらいですかね。もう全部見きれないということで、チーム経営をしようと、吉松は僕の他にも佃、高松を誘って取締役にしたんです。

長谷川 チーム経営への転換はすぐにできるものですか?

菅原 その前に、結構経営課題がありましたね。収益源のほとんどが広告だったんだけど、当時は広告代理店さんとのお付き合いが分からなくてゴタゴタしていたり、組織の中では営業がすごく力を持っていて、組織内バランスが崩れてたりね。
そんな中で、エンジニアは単なるソフトウェアの製造工場になっていて。会社の屋台骨は『@cosme 』というサイトなんだけど、それをどんどんブラッシュアップして新しい機能を作っても「お疲れさま」とも言われず、バグがあればみんなから総スカンだし、「なんであれができたのに、これができないの?」みたいなことを言われる。エンジニアの開発のキャパシティが会社の収益のボトルネックになって、「だから会社が成長できないんだ」みたいな雰囲気になっていたんですね。

菅原敬

長谷川 あぁ……。

菅原 新しく入った3人がそれぞれテーマ毎の課題をしていくんですけど、僕はCTOをやったんです。それでシステムの内製を止めました。みんな開発が好きかもしれないけど、一旦ストップ。エンジニアたちには「俺たちは下請け工場じゃないんだ。うちはIT企業で、俺たちはその収益基盤をつくって会社の屋台骨をつくるんだ」と言ったんです。今でいうエンジニアリングプロデューサーですけど、当時は「社内ITコンサルタント」という言い方をしました。で、懐かしのBIメソッド(当時アクセンチュアで使われていたソフトウェア開発メソドロジー)、あれの簡略版を僕と数名のチームで作ったんです。ドキュメンテーションの仕方だとか、当時はウォーターフォール型だったので、開発のチェックポイントからテストシナリオの設計の仕方から、あとはコメントのルールなんかも全部、最低限のレベルでかなり明確な方法論を導入しました。そして、いろんなコネでパートナーさんを引っ張ってきて全部外注化したわけです。

長谷川 ほう。

菅原 1、2年経つと、社内のエンジニアの地位は上がりましたね。「みんなの希望をきれいに実現してくれる」という評価になった。外注化したことでコストは若干上がったでしょうけど、開発による成長のボトルネックがなくなって、エンジニアの地位が上がってイコールパートナーになった。そうやって会社をすごくフラットにしたというのが、僕が最初の1年ちょっとでやったことですね。

長谷川 実は東急ハンズも今、同じ状態に陥っているんですよね。2008年以前は自社開発してなかったんで、年間の活動計画にあることしかやらないから、ユーザー部門はシステムに対する要望があったとしても、リクエストするのもあきらめていた。そういう状態のところに僕が来て自社開発を始め、「こんなの欲しい」って言われたらすぐに「はい、できましたー!」ってやるようになって、最初は超喜んでもらってたんです。だけど、それから7年ぐらい経ったら、さっき菅原さんがおっしゃっていたのと全く同じことになっちゃったんですね。つまり、システム開発は固定費でやっているので誰も追加の金を払っていないという状況で、「要件言ったもん勝ち」みたいになって、どんどん要望は来る。でもやっぱりキャパシティーには限界があるから「それはできない」となると、「何か遅れている」というふうな話になっていくんです。まさに「工場じゃねえんだ!」という感じで(笑)

菅原 うんうん。

菅原敬,長谷川秀樹

長谷川 ここで一発また揺り戻しで変えないといけないかなと考えています。内製が悪いわけでもないんだけど、ライフサイクル的に一度ガーッと揺り戻して、そうするとまたそれはそれで、高いだの、動きが遅いだのということになると思うんですけどね……。

菅原 行ったり来たりなんですよね。僕らも、さっき言ったような形でスピードもクオリティも上がって、会社の成長につながって良いことずくめだったんですけど、今度はドキュメントがないと作れなくなっちゃった。ITコンサルタントがパワーを持ちすぎて、ドキュメントだらけの開発チームになっちゃったので、今度は簡素化しないといけないと。だけど全部内製化するのはすごく時間がかかるので、内製と外製のミックスの体制に、僕の次のCTOが切り替えたんです。

長谷川 なるほど。えぇ話ですな~。

菅原 そしたら、そのCTOはすごく悩んでね。何かというと、内製プラス外製でコストコントロールの難易度が一気に上がったんです。Excelですごい膨大な表を目をチカチカさせながら管理して……。彼が3年くらいやって、その後で今のCTOに変わって、ようやく落ち着いた感じですかね。

実はアイスタイルに向いているエンタープライズ系エンジニア

長谷川 今は開発のメンバーが何人くらいですか?

菅原 150名くらいで、そのうち技術派遣や常駐業務委託が5割弱。技術派遣や常駐業務委託と言っても昔みたいに外に丸投げではなくて、オフィスに常駐してもらって、経費もうちがコントロールしているという形ですね。

長谷川 それはいいですね。150名で「@cosme 」のサイトとかアプリを作ってるんですね。

菅原 ECとか、バックエンドの広告配信システムとか、何から何までやってますよ。社内の情シスも10人くらいいます。

長谷川 なるほどね。御社に中途で入るエンジニアはどういうところから来る人が多いですか?

菅原 受託開発の会社よりはサービス運営会社のエンジニアが多いです。でも、SIerからの転職も、フリーランスの受託エンジニアも、絶賛大募集中ですよ。

長谷川 そうなんですね。ハンズラボも募集中です!
エンジニアって、エンタープライズ系の、要するに帳票ばかり作らされている人と、ネット系のサービスを作っている人とで大きく分かれていて、後者の方はそれなりに楽しくワイワイやっている感じがするんです。僕は元々はエンタープライズ系の人間なので、そっちの世界の人が御社みたいなところにどんどん転職したらいいのにな、と思うんですけどね。

菅原敬,長谷川秀樹

菅原 エンタープライズのミッションクリティカルなシステムをやった経験のある、責任感のある人間というのは、うちではすごく価値のある存在だと思いますよ。というのは、@cosme は大体1,400万人の方に毎月使っていただいているんです。年齢別で言うと、20代の日本人女性の80%位、30代の70%弱が毎月1回以上使ってくれているんですね。それだけ社会インフラとしても貴重だし、我々の収益源でもあるので、ゼロベースで「こんな面白いアプリ作ろう」みたいなやり方はないわけですよ。僕らは美容×ITでこの先10年、20年ずっと突き進む戦略が決まっています。一応アジャイルで開発しているので、事業部側のディレクターとプランナーとデザイナーと一緒にやっていく中で、エンジニアにも「こういう画面遷移にすればユーザビリティも上がるよ」みたいなことは言ってもらいたい。アジャイルらしい関知はして欲しいんだけども、言葉は悪いですけど、単に「新しいサービスをつくりたいんですよ」みたいなWebプランナー上がりのデータベースのことが分からない人には、うちの会社でのエンジニアプロデュースはちょっと重すぎるかなと思いますね。

長谷川 今の話を聞いただけで勝手なイメージで言いますけど、エンタープライズ系の人が転職する先として、メルカリに行くんだったら、アイスタイルさん行った方がいいんじゃないかと思いましたね。

菅原 ハイキタ!(メルカリは大好きです!)

長谷川 やっぱりね、エンタープライズ出身だと、Web系に行きたいんだけど、何かみんなTシャツGパン系で、俺ムリかな?とか、ちょっと思っている人もいるかもしれないですから。そういう人には、アイスタイルさんが合うかもしれないですよね。別にメルカリさんが悪いとか、決してそういうことじゃなくて。

菅原 うちもエンジニアはTシャツGパンだけど、事業部側とデザイナーも合わせたら200人くらいが同時にモノづくりをしているんですよ。しかもかなりのユーザー数を抱えているということで社会的責任も重い。そうすると、そのダイナミクスをコントロールするプロトコルはある程度必要で、例えばバージョン管理をどうしていくのかとか、コードの記述やコメントのルールをどうするのかとか、エンジニアの会話を聞いていると、そういうところはすごい意識し合っているんですね。そういう最低限のプロトコルというか、機密は守りつつ、同時にそれに従って待っているようなエンジニアだけじゃ困るんです。うちの会社にいる限りはWebエンジニアとしてスキルアップが必要で、新しい言語とかフレームワークも使います。エンジニア同士の切磋琢磨も個人個人の学びも必要です。あとは、エンジニアとして言うべきことを言うこと。要は非エンジニアの開発メンバーが分からないことがあれば、エンジニアとしてちゃんと説明するという文化も必要なんです。そういう意味で、いわゆるスタートアップのかなり自由な、「とりあえずみんなワイワイ作ろうぜ」ではない、ハイブリッドな感じがうちの会社なのかなという感じしますね。CTOが聞いたら、「全然違う!」って言うかもしれないけど(笑)

長谷川 菅原さんは今CFOですよね。今日こんなにシステム開発の話が出て、読者はびっくりすると思います(笑)

菅原 CFOと言っても、管理系は見ていないCFO。僕、新規事業ばかりやってるんですよ。

長谷川 菅原さんて、スーパージェネラリストですよね。なんでなんですか? 普通は、これが得意とか、こういう領域は興味ないとかあると思うんですけど。

菅原 うーん、僕らはコンサルタントだった時に、このプロジェクトは嫌だからこっちやりたいとかってないじゃないですか。それと同じなんですよね。その時々で会社に必要でやってくれと言われることをやってきたんです。
今やっている新しい投資チームは、やるんだったら中途半端じゃなくてちゃんとやりたいと思ったから、外部からバリバリのプロに集まってもらってわがままを聞いてもらって、ファンドにはアイスタイルから10%の出資は受けているけれど残りは外から調達して始めたんですけどね。

@cosme に販売店情報が追加されたことでできるようになること

長谷川 さっき@cosme のユーザー数がかなり多いという話がありましたけど、東急ハンズの店員が持つiPod touchにも、@cosmeのアプリを入れてるんですよ。全店舗の従業員にアンケートを取ったら「@cosmeのアプリを入れて欲しい」と。お客さんが@cosme を見て「この商品欲しい」と聞いてくるから、これで勉強しておかないとお客さんと会話できないんですね。

菅原敬,長谷川秀樹

菅原 東急ハンズには「ハンズビー」という小型の店舗があって、そこで扱っているのは恐らく6割位は化粧品とか美容に関わるものなんですよね。
ハンズさんにひとつ相談があるんですけどね、これまで@cosme のデータベースというのは、ユーザー情報があって、商品情報があって、1対Nで商品レビューのデータが下がっているという構造だったんですが、ここ3年ぐらいかけて、商品情報にもう1つ別のデータ群を追加したんですよ。それは、この商品がどこで売られているかという販売店情報。それによって、どの商品がどこで売られているというお店マップが作れると同時に、お店ページも作れるので、コスメ版の「ぐるなび」が作れるんです。そこを「月額固定課金でプロモーションしてください」というサービスを始めようと思っていまして、ハンズさんでパイロット導入、いかがでしょうか?

長谷川全然いいですよ! 1個だけポイントがあって、「この商品はその店で取り寄せできるかどうか」ということが、マスター情報でもいいのでシステム同期できるんだったらやりたいなと思います。

菅原ちょっと1回話しさせてください。

長谷川 ぜひ。化粧品の「ぐるなび」ね、なるほどね?。

菅原うちは、クライアントから広告料をいただいてプロモーション活動にご協力はしますが、ランキングについてはあくまで公正中立というポリシーを貫いているので結果的にランキングの上位に聞いたことがないメーカーのものが上がるわけですよ。で、「この商品ってどこで買えるの?」というユーザーの問い合わせがすごく多いんです。地方だと「もしかしたら駅前のパルコにあるかもしれないけど、通勤経路的になかなか行かないし」みたいな人が@cosme を見て、例えば「駅前のパルコだったら売っている」とわかったら、パルコに寄るわけですよ。「どこで何が売られているという情報が欲しい」という声がすごく多くて、今、販売店情報をコツコツためているところなんです。

美容を「女性が賢い生き方を追究すること」と捉え、ビジネスの領域を広げる

長谷川 もうやっていらっしゃるかもしれないですけど、化粧品以外でちょっと似たような別の領域に行くということは考えているんですか?

菅原 基本的には美容の領域から出るつもりはないですけど、美容というのは化粧品というモノだけではないと考えています。僕と吉松の2人で、美というのは、「女性が賢い生き方を追求することだ」という定義をしたんですね。そうしたら、当然エステとかフェイシャルとかネイルとか、そういう美容サービスも入るし、正しいものを食べる、正しい健康をつくる、正しい睡眠をとる、正しい予防医療をするとか、あるいは女性として新しい学びを得るとか、すべてが美だと捉えられる、そういう都合のいいことを考えましてね。その範疇内で美を拡大していこうということで、例えば正しい食べ方をして、きれいにやせるダイエットとか、スキンケアやヘルスケア、内面的にきれいになることに目を向けたエイジングケアのコンテンツをつくったりとか、我々はそっち側に寄っていますね。当然、美容サロン系の予約サービスとかもやっているんですけど。

菅原敬,長谷川秀樹

長谷川 医療と美容って法律的には別になっていますけど、一方で「きれいになることで自信がもてる」とか、「自信がよりきれいに見せる」みたいな心の問題って医療にも関わるところがあると思うんです。アイスタイルさんとしては医療とか医学にアプローチしていこうという考えはあるんですか?

菅原 興味ありますよ。医療って、きちんと効果を認められているモノやサービスを、資格を持った人が提供するものなんですよね。でも、効果を証明しきれないヘルスケアサービスもたくさんあって、それは例えばオムロンの体温計もそうじゃないですか。化粧品は、「こういう条件だったらこういう効果は謳ってもいいけど、これ以上は薬事法違反ですよ」というなんとももどかしいところのあるな商品なんですね。なので、製薬メーカーさんが10年、20年かけて研究開発し、何百億円投入して被験者をもとにさんざん検証して、ようやく認可がおりるというのとは違うんですけど、もっとライトな世界で人を健康にするモノとかサービスというのはあり得ると思っています。

長谷川 そう考えていくと、御社のビジネス領域って、ものすごく広いですよね。

菅原 そう、世界中でこれをやりたいんです。だから僕らの今の戦略って、ここ2~30年ずっと変わらないで続いていくと思います。

長谷川 男性向けはどうですか?

菅原 男性は、日本だと動かしようがないんですよね、マーケットが小さ過ぎて。過去10年、20年、「今年こそ男性コスメの元年」と毎年言っているんですけども……。長谷川さん、スキンケアしてます?

長谷川 してないです。

菅原 ですよね。でも、今の20代のアンケート見ると、80数%がスキンケアしているんですよ。お風呂上がりにローションつけるし、クリームつけるし、洗顔フォームで洗顔するわけ。そういう男性には、今コンビニコスメが売れているんです。これが30代になると、スキンケアをしている男性って20%ぐらいだと思う。40代になったら5%ない。そうすると、あと10年かかって年齢が上がっていけば、もっと多くの男性が多分伊勢丹メンズでメンズコスメ買うようになりますよ。
ちなみに世界の男性化粧品の約80%は韓国で消費されるって言われてるんですよ。だから「SK-II メン」も「ランコム メン」も、ローンチはソウルのロッテ百貨店なんです。

長谷川 へぇ、そうなんですか!

世界のクローンサイトの経営者と会い、提携の可能性を探る

菅原 海外で@cosme とハンズが一緒になったら、面白くないですか?

長谷川 超面白いと思います! グローバル展開はどうされるんですか?

菅原 悩んでます。と言っても止まってるわけじゃなくて、よく分からないからできることは全部やってます。

長谷川 クチコミサイトで先行している海外のローカル企業もあると思いますけど、そういうのを買収するんですか? それとも純粋培養で勝負をかけます?

菅原敬,長谷川秀樹

菅原 成長が速い方を取ります。@cosme のクローンサイトって世界中にあるんですけど、僕はほぼすべてのCEOに会ってるんですよ。

長谷川 会っている? こっちからアポを取ってですか?

菅原 そう。

長谷川 それで「お前、パクってるだろ」みたいな話するんですか?

菅原 いや、相手は大体「会いたかった! 話し聞きたかったんだよ?!」みたいなノリか、場合によっては「パクっちゃってごめんなさい」という場合もあります。「すげー、インスパイヤされたよ、ありがとう」みたいな場合もあるし。十数社くらい会ってますね。世界中の化粧品レビューサイトのほぼすべて。

長谷川 すごいですね! その目的というのは?

菅原 提携とか、アライアンスの可能性の模索です。擦り合うかどうか、まずは会ってみるということです。

長谷川 なるほどねぇ。
ところで、化粧品というのはやっぱり先進国の方がよく使われるんですか? 途上国ビジネスとかはどうなんでしょう。

菅原 美容は衣食住、通信の次ですよね。途上国は美容の前に医療と衛生なんですよ。例えばASEANの中でも幾つかの国では美容はまだ早すぎて、例えば週に何回かはシャワーを浴びよう、シャンプーをしよう、ということで、石鹸やシャンプーなんかもボトルでは高くて買えないから1回分ずつを売っているような状況ですよね。

長谷川 じゃあ、そこには参入せずにその後から?

菅原 そうですね。だいぶ先だと思います。

長谷川 でも、SIerの仕事とかを考えると、相手が大手だと儲かるけど仕事はつまらない。小さいところだとすごく喜んでくれるんだけどカネはない、みたいなところがありますよね。どの業界でもそうなのかな、と思ったんですけど。金持ちは言ってしまえばどうでもいいじゃないですか。いくらでも着飾ることができる。まだ化粧が一般的でないような国の人に、ちょっとでも綺麗になってもらって明日の活力にしてもらうようなことの方がインパクトがあるんじゃないですかね。

菅原 いずれやりたいのはね、消費側を支援するのも大事ですが、生産側をサポートするということですね。その方が、途上国ビジネスとしてはより成果を出しやすい。例えば、僕がECの社長やってるときの話ですけど、スリランカには親にお金がないから、生きていくために奴隷になる少女たちがいるんですね。とあるプロジェクトがその子たちにオーガニック石鹸の作り方を教えて、すごく綺麗なブランディングで先進国に売るみたいなことをやっていて。そういうモノづくりの方が、サポートがしやすいかな、と思うんです。

長谷川 なるほど。それはいい話ですね。

プラットフォーマーの立場から化粧品業界を変えたい

長谷川 もし、花王さんとか資生堂さんとかに「役員待遇で来てくれ」って言われたら行きますか?

菅原 いやー、そんなお誘いないだろうし、ありがたいお話しながら行きませんね。

長谷川 どうしてです?

菅原 青臭いですけど、世界の化粧品業界を変えようと思ってるから。1社に行ったら僕ができることがすごく小さくなっちゃうんですよね。中にいると変えられないことってたくさんあるんですよ。アイスタイルは業界の一員ではあるけれど、メーカーではなくプラットフォーマーだからこそ変えられることがあると思っているので。

菅原敬

長谷川 一方で、大手が変わることでそれがデファクトになって業界に伝播していくということもあるんじゃないですか?

菅原 僕らのデータベースを見る限り、日本には化粧品メーカーが2万社あるんですよ。すごく分散してるんですよね。日本で資生堂がトップだと言っても、マーケットシェアは10%台なんです。だから1社変わっても、他が付いてこなければ、変わらないですよ。

長谷川 なるほど。
菅原さんは今、投資会社の仕事もやってますよね。こういう業界、会社、あるいはこういう経営者に投資したいというのを教えてもらえますか?

菅原 どの産業領域とかは、特に無いですね。もうインターネットは当たり前のものになって、その中だけで新しいことってもうそんなには無いんじゃないかと思うから、インターネットをうまく使いながらリアルの世界をどう変えていくかというのが、面白いと思いますよ。30代40代の経営者で、BtoBビジネスができる、リアルを巻き込んだ業界破壊型のベンチャーがあるとムズムズしてきます。

長谷川 ほぅ。なるほど~。

菅原 うちの会社は、業界特化型でバリューチェーン構造をどう組み替えるか、その中にどんなサービスを入れることで業界がうまく回るかみたいな事業のポジショニングをしてきたところがあるので、バリューチェーンの転換ポイントを作ってくれるような会社は結構好きですね。結局、うちの会社と思想が似てる会社が好きということですけど。
逆に、CFOにファイナンスを任せるようなCEOは、お金を集めるべきじゃないと思っています。社長自身が「死んでもお金を集めたい」と思っていないようなところ、「これはCFOにの仕事だから」なんて言っているところに投資してもうまく行きっこないですよ。

長谷川 ベンチャーの社長って、必ずしもファイナンスが得意じゃないという場合もありますよね。

菅原 得意かどうかじゃないんですよ。どれだけ会社のサステナビリティに責任を持つかという話なので。だってリスクマネーを預けるんですよ。僕らも外部の投資家からお金を預かってファンドマネージャーの役割をしているので、リターンを返さなきゃいけないんですからね。覚悟のない会社には投資したくないですよ。長谷川さんだって、外から東急ハンズにやってきて「誰だコイツ」という目で見られながらも、歯を食いしばって実績出して、それを続けてきたから今につながっているわけじゃないですか。ベンチャー投資も一緒ですよ。

「IT酒場放浪記」スタートの裏には菅原さんとの出会いがあった

長谷川 菅原さん、今日いいこと言うてますな?。いつもはね、しょうもない話半分になっちゃうんですけど。

菅原 いや、結構仕事の話多いじゃないですか。僕らで話すと仕事と家庭の話かな。

長谷川 まあ、そうですね。僕、EC担当になった時にたまたまアクセンチュアのEC勉強会があって、そこで菅原さんに出会ったんですね。その時は本当に何もわからなかったから「いろいろ教えてください」と菅原さんのところに行ったら、収益構造から何からなんでも教えてくれて、すごくありがたかったんですよ。あと、「こういう会がある」「こんな人がいる」と、めっちゃいろんな人を紹介してもらって。菅原さんには、大変、お世話になりました。

菅原 それはね、要は飲み会に誘ったということですよね(笑)毎週のように一緒に飲みましたよね。

長谷川 そうです。情シス業界ってそんなに社外の横のつながりが無かったですから、ECをやるようになって初めて、外の人としゃべるって、こんなに楽しくって、勉強になって、それにこんなにエネルギッシュな人がいるんだ、ということを感じてね。最初に菅原さんに連れ回されていろいろな人に紹介してもらったというのが、この「IT酒場放浪記」を含め、今の社外活動の起源なんですよ。

菅原 そうだったんだ。僕も最初はEC業界分かんなくて、いろんな人に教えてもらったから、「ペイ・フォワード」ですよね。

長谷川 そうですね。今まで言ったことなかったですけど、菅原さんにはすごく恩義を感じているんです。これからもよろしくお願いします。今日は、ありがとうございました!

菅原敬,長谷川秀樹


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