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長谷川秀樹のIT酒場放浪記 第38回 アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 マーケティング本部 本部長 小島英揮さん


小島英揮,長谷川秀樹
ハンズラボCEOの長谷川秀樹が、IT業界のさまざまな人と酒を酌み交わしながら語り合う本対談。今回はアマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社でマーケティング本部長を務める小島英揮さんの登場です。アマゾン ウェブ サービス(AWS)のユーザグループ「JAWS-UG」の運営に携わり、日本におけるAWS普及の立役者と言われる小島さんに、AWS日本上陸の経緯から、コミュニティマーケティングの効果および運営の秘訣までたっぷりうかがいました。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 マーケティング本部 本部長 小島英揮さん
明治大学卒業後、電子フォーム/XML関連ソフトでのマーケティング責任者や、アドビシステムズでのPDF、RIAのエンタープライズ、デベロッパーマーケティングなど、一貫してITのマーケティング職を経験。アドビシステムズ在籍時にはFxUG(Flex User Group)、AWSではJAWS-UG(Japan AWS User Group)という全国規模のデベロッパーコミュティの立ち上げ&運用経験をもつ。2009年12月より現職となり、AWSクラウドの日本におけるマーケティングを統括。

AWSなんて絶対売れない
誰もが当時はそう思っていた

長谷川いやいや、またお会いしましたね。AWSのイベントで会ったばかりなのに(笑)。盛況でなによりでしたね。いろいろと勉強させていただきました。

小島その節はありがとうございました。

長谷川それで、ちょっと遡って小島さんとの出会いを思い出してたんですよ。そしたら、早稲田大学の丸山不二夫先生主催のクラウド研究会が初対面でしたね。確か、渋谷のIBMで開催された勉強会でした。今思うと、IBMでAWSを話すというのも、まだ、AWSが無名だった時代背景ですよね?。

小島そうですね、2009年12月入社で、すぐ発表だったんです。実は丸山先生とは前職のアドビのときから知り合いで、「転職しますメール」を送ったら、その返事でオファーが来たんですよ。

小島英揮,長谷川秀樹

長谷川私のAWSの最初の印象は、「こりゃ、売れないな」です。(笑)前職で外資系のERPの営業をしていた人間の率直な印象は、「いやあ、小島さん、あなたはえらい難しいものを売ろうとされている。絶対日本じゃ売れないよ」って感じでした。ERPですら難しいのに、ましてインフラ。「契約書は英語だし」とか、「サポートはちゃんとできる?」とか、もう機能の善し悪しじゃなくて、他の部分でブレーキがかかるんですよね。

小島「サーバはアメリカ?マジ?」なんてよく驚かれましたね。そんなものを日本企業が導入する訳ないでしょうって。

長谷川当時の小島さんの講演での質疑応答もすごく印象的でしたよ。「セキュリティに問題ないんですか」「サービス品質保証はどうなってるのか」とか言われても、僕なんかはユーザ企業ですから「東急ハンズでは、そういう方針でやってます」って言えちゃうんですよね、相手と違う意見だとしても。AWSのセキュリティーは大丈夫か?という質問にも、「貴社のFWのファームウエアのバージョンは何ですか? アップデートされてますか」というと「ベンダーにまかせている」で、私が、「ベンダーにまかせているのもAWSにまかせているのも同じなのでは?」とか言ってムッとさせても平気(笑)。でも、小島さんはそういうわけにはいかないですから。

小島まあ、そうですね。

長谷川多くの外資系のITセールスは、①「大丈夫、気持ちの問題」と畳み掛ける、②「グローバルではこれが標準ですが」と反論する、とか、無意識に上から目線のいや?な雰囲気になるんです。それが小島さんはまったくなかった。反論もしない、でも迎合もしない。

小島ああ、「柳のような?」とかよく言われました。いろいろ叩かれた時間が長かったので、身に付いた処世術でしょうか(笑)。でも、せっかく伝えにきているのに、怒らせたり、イヤな気分にさせたりするんじゃ逆効果ですから。なので、できるだけイメージや感情で話すのではなく、反論する場合であっても、あくまで「Fact=事実」を淡々と伝えるように心がけていました。「変なこと言うヤツだ」と思われても、嫌われなければ話はまた聞いてもらえる機会があると思っていたので。

新しい技術やサービスの障壁は
「何か」への漠とした不安

長谷川小島さんは、新しいテクノロジーや製品の普及活動を山ほど経験されてますもんね。XMLや電子申請とか、RIAのエンタープライズとか。でも、わからないまま批判する人に対して、「僕はこのバリューを信じてますから!」ってよくキレずにいられるなあと。

小島怒らせちゃ元も子もないですし。でも、気をつけているのは、先ほど長谷川さんもおっしゃってくださった「迎合しない」ことでしょうか。相手の言うことは相手にとって正義なので「それはそうでしょう」と受け止める。その上で「でも、こういう考え方もありますよ」と事実を伝える。すると、もしかしたら相手も新しい視点を得てくれるかもしれないし、二人の掛け合いを見ている人に「小島が言うのも一理あるな」と思ってもらえるかもしれませんし。

長谷川なるほど、第三者が見ての「空気感」ってありますしね。

小島そう、論理的に論破できるものは論破しますよ。でも、議論しても仕方がないものもあるじゃないですか。たとえば、セキュリティの話をするとき、お客様が求めるのは「安心=peace of mind」ですが、ベンダーが提供できるのは数値的な「安全」なんです。お客様はセキュリティの話などしていない、求めているのは「俺を安心させろ」なんです。でも、どんなに数字を出しても、安心できない人はできない。

長谷川あるあるですね。そういう人に限って「何かあったらどうするんだ」なんて、リスクや不安の整理ができていない。

小島そう、だから何がどう不安なのか整理して、不安の原因を1つ1つ紐解いていくと、「あれ、そんなに不安でもないかも」ってなることが多いですね。

長谷川僕の経験上、「なんかあったらどうするんだ?」って時は、「なんかがある」ことは99.99%、ない。

小島そうなんですよね(笑)。でも、「誰かがやってきて?」みたいな、スパイ小説みたいなことを妄想される方もいるんです。じゃあ、社内にサーバがあれば大丈夫かといえば、そうでもない。社内に誰か入ってサーバールームで消火器を噴射されたらおしまいですよ。だから、「場所が分からないから不安」とは一概に言えないわけで。「場所が分かると安心、だけど分からない方が安全」という行き違いはけっこうありますね。

小島英揮,長谷川秀樹

長谷川データセンタもよく考えたら、他社のサーバがすぐ脇にあるわけですしね。そういう「常識」や「思い込み」を静かに揺るがすの、ホントに上手ですよね。

小島正しい方を教え諭すというより、あえて前提を疑うきっかけを提供して、あらためて考えていただくという感じでしょうか。そうすると疑問や質問も具体的になりますし、こちらからの話も聞いていただけるようになりますから。

実は恵まれた環境だった?
日本でのAWSの事業展開

長谷川いや?、それにしてもインフラは手強い。情シス部長が一番変えたくない部分じゃないですか。それを洋モノにね、洋モノにするなんてね。ゲーム業界とかはともかく、エンタープライズ系ではとてもイメージできなかったですね。

小島でも、エンタープライズって実は課題を多く抱えているんですよね。予算は限られるけど、やるべきことはどんどん増えている。だから、AWSって一気にその課題を解決できるんですよ…、って言いたいんですけれど、僕らが言ってもなかなか信じてもらえない。でも、実際に体験した人が「使ってみたらよかった」という話を共有し合う、そこにコミュニティの価値があるのだと思います。

長谷川みんな、洋モノは高いと思ってるし。いろいろと勘違いや思い違いがありますからね。

小島そう、だから口コミの威力って大きいんですよ。ベンダーの言うことは、頭では理解しても、感情的に共感できないし、腹落ちしない。でも、自分と同じ目線のユーザの立場の人が言えば、ダイレクトに入ってくるし、一番効果的なんですよね。

長谷川なるほどね。あと、信頼性と言う意味では「Amazon」のブランド力が功を奏しってことはないですか。知っている会社の新サービスの方が、まったく知らない会社のものより安心、と思いそうですが。

小島まあ、それはあるでしょうね。でも、戦略としてはさほど重視されてはいなかったようです。というのも、日本は別としてAPAC(アジア、オーストラリア等の環太平洋地域)にはリテールはなくて純粋にクラウドだけで展開しているし、ブラジルにもクラウド事業のリージョンはあっても(当時は)リテールは展開していなかった。Amazonっていうドメインや商標を取るのに苦労したと聞いたことがありますよ。

小島英揮

長谷川まあ、ブラジルは、本場というか、本家アマゾン川がありますからね(笑)。では、どうやって「どこでAWSを展開する」と判断しているんですか。

小島もうAWSが参入すべき市場を直接見ていますね。まず現地から国境を跨いでサービスを利用されている方が既に多くいらっしゃること。そこに国のIT市場規模などと照らし合わせると、潜在的な市場が見えてくるわけです。日本はIT予算をしっかり持っていて、意外かもしれませんが当時からAWSの米国にあるデータセンタを利用されていた方も多くて、さらにAmazonブランドが認知されているという、なかなか恵まれた環境で事業がスタートしたんです。

長谷川「大変なものを持ってきて」と心配されていた裏で、実はしっかり勝算ありきだったんですね。

小島そうかもしれませんね。Amozonのリテール(amazon.co.jp)も、日本からの洋書の購入がすごく多かったことから、潜在的にいいマーケットだと判断して入ったと聞いています。

長谷川もう本当にボーダレスなんですねえ。でも、一応日本にリージョンを設けているのは、それなりの理由があるからですか。

小島やはり1つはお客様が感じる一種の「気持ち悪さ」、やはり日本にあると安心という感覚的なものですね。そしてもう1つは「レイテンシの問題」。ゲーム会社さんからとか要望が多かったんですが、米国にあるだけでは実質的な通信速度を課題にしている人も多かった。だから、「東京にできたからやろう」ではなくて、AWSを使いたくても「東京にないからできない」と思っていたお客様が、障壁が消えたところでドドッと入ってきてくださったんです。

長谷川なるほど、日本はいい市場だったんですね。

クラウドの利点は
使った人が一番知っている

長谷川ただ、さほどこだわりのないユーザには、「AWSは日本で本気でやろうとしている」というアピールにもなりましたよね。ただ最近、僕自身は「どこにあってもいい」、いやむしろ「東京でなくていいのに」と思ってますよ。

小島というと?

長谷川東京は地価も電気料金も高いでしょう。それよりもっと安価なところにすればいいのにと。

小島そんなコスト重視のお客様には、最も集積度の高い米国データセンタをおすすめしています。 さらに、一定期間サーバーを使うことが明らかなら、1 年または 3 年契約での「リザーブドインスタンス」という手もありますし、短期利用で安くしたいなら、AWSならではの「定価」より安い「時価」で利用できるスポットインスタンスを使うこともできる。 ただ確かに安心感なり、スピードなりで東京にこだわる方もいらっしゃるので、事業者としてはいろいろ品揃えせざるを得ないというところですね。

小島英揮,長谷川秀樹

長谷川スピードがサービスの品質に関わるというのなら、仕方ないでしょうけど、何となくの安心のためにコストを掛けることに違和感があるんですよね。それも「わからないから不安」という。じゃあ、いろいろ勉強したり、テストしたりすればいいのに。オンプレだと正直時間がかかるから、その間のコストが膨大になるでしょう。その意味でAWSはいろいろと試せるし、フィードバックも早いし、いい環境だと思うんですけどね。

小島スピードはクラウドの強みですよね。あと、AWSなら、ダメだと思ったら後戻りできるので、いろいろ試せるわけですが、オンプレだとそうはいかない。それでダブルチェックだの決裁だの、スピードも遅くなるし、コストもかかる。進みながら簡単にピポットできる強みは大きいと思うんですよ。

長谷川考え方そのものが違うから、その快適さやメリットは使った人じゃないとわからない。そこでコミュニティを作って、そこで勝手にいいところを話し合わせるなんて、やりますよねえ。コミュニティマーケティングって、小島さんの命名ですか。

小島いや、どうなんだろう。ただ2年前くらいから「コミュニティマーケティング」という言い方をしていたら(参照記事:商品はファンには売るな!?マーケティング担当者が語った、最強のコミュニティ運営術)、各方面からたくさん問い合わせをいただくようになりました。とはいえ、けっこうBtoCではアンバサダーマーケティングという名称で同じような事例もありますし、特殊なことではないと思うんですよね。

ただBtoCは直接購入決定者にアプローチできますが、BtoBとなるとユーザと決裁者が遠い。だからコミュニティの効果を疑問視する人もいました。ただ、決裁者って、AWSの場合「情報システム部長」な場合が多いわけですが、そのネットワークって密接で広いんですよ。その中で「俺間違ってない?」「遅れてない?」と意識し合っている。そこに働きかけることで成果が出るだろうとは予想していました。

長谷川僕がAWSのコミュニティマーケティングをすごいと思うのは、セールスまでのエコシステムとして完結しているところです。通常、どんな商材でも、マーケティングが場を温めて、セールスがクロージングに行くでしょう。でも、AWSには代理店さんとか、エバンジェリスト的な人とかがいて、コミュニケーションもサポートも、セールスまでもやっちゃうのがすごいなと。「パートナーエコシステム」的な…。

小島確かにパートナーさんの働きは大きいですよね。でも、パートナーさんも売らんかなでアプローチはしてないですからね。たぶん、商材の違いも大きいと思うんですよね。AWSクラウドを使い始めるには、基本的に発注書もいらないし、与信もいらない、無料アカウントを開けば必要なものをいつでも使えるので、一歩踏み出すためのコストが小さいというのもあるのかもしれません。

長谷川小島さんがよく言っているSell Through The Community (コミュニティを介して売る)という考え方っていいですよね。コミュニティに参加している人に無理に売りつけたり、沢山使ってもらわなくてもいい、でも、自分が使って良いと思った経験があるものであれば、その良さを回りに広めてもらうという考え方なので、押し売り感がないし。

長谷川秀樹

小島だからいいんですよね。「売るため」に無理して「この商材いいよ」って言わなくていいんですから。

コミュニティ成功の8割は
いいリーダーのおかげ

長谷川それでもね、売らないとダメでしょ。小島さん自身、成果を上げなくちゃならないわけで。どうしても麻薬的に「クロージングしたい!」気分って出てくるじゃないですか。パートナーさんに「売ってよね」とプレッシャー与えるとか。

小島コミュニティに対してそれをする、つまりSell To The Communityになると、もうダメですよね。コミュニティの人向けに僕たちが売るようになったら、みんな引いちゃますから。でも、コミュニティ外では使っていただくための活動はもちろんやってるんですよ。すると、「コミュニティで○○さんからこう聞いてます」「コミュニティでいろんな情報がでていたので理解しやすかった」とかって反応が必ずある。つまり我々がお客様に行く前に地ならしができている場合が多くあるので、そうなるとあとは個別の疑問・質問に答えると、クロージングを早くできるんです。

長谷川セールスに行くという、小島さんのもう1つの顔を初めて見ました(笑)。少なくとも表の顔ではコミュニティ運営者として、みんなが主役である感を創出する必要がありますよね。やらされている感が見えた途端にコミュニティは破綻する。でも、好き勝手な方に行かれたら、困るでしょうし。いったい、どうコントロールしているんですか。

小島農業と同じなんですよ。いい種を見つけて、いい水と土壌を用意すれば、自然といい作物が穫れる。つまり、成功の鍵は「よいコミュニティリーダーを見つけること」。それで8割が決まると思います。それ以外で僕がやっているのは、いい水をあげること。

長谷川いいコミュニティリーダーの要件って、どんなことですか。

小島マメで人のために仕事をするのを喜びと感じられる人ですね。たとえば飲み会があったら、予約を取ったり、出欠を取ったり。決してAWSや技術に一番長けている必要はないんです。けっこうコミュニティって“神”みたいな、こんなことできちゃうんだ!って、すごい人がたくさんいるんです。でも、そういう人はこだわりが強すぎて、スピーカーとか、センターとかならともかく、ファシリテーターには向かない人も多いですね。

小島英揮,長谷川秀樹

長谷川なるほど、適材適所で人を見つけて、依頼することが大切なんですね。

小島そうです。最初が肝心ですね。以前はそこにもかなり関与していたんですが、最近は支部が増えるときなど、リーダーが新たにリーダーに向く人を見つけてきてくれるんです。私たちもお会いすることがありますが、最近は基本的にはほぼお任せ状態です。あくまでこちらからお願いというスタンスですし。コミュニティの公正さを担保するために、謝礼金などは一切発生していませんから。

長谷川ファシリテーターにも出ないんですか?。もう、宗教じゃん?!?

小島そう、「いいものを広めたい」っていう情熱、そして「人の役にたって感謝されると嬉しい」という満足感だけで回っているんですよ。「やる気駆動」とも呼んでいます。よくお金の使い方について聞かれるんですけど、ここのコミュニティ活動に対価としてお金を投入したらこの流れは消えちゃいます。ただ、ユーザ自身がコミュニティ活動を通じて、ビジネス的に成功するのは悪で、「清貧であるべき」みたいな風潮は良くないと思いますね。盛ったり、嘘をついたりはNGですが、ぜひ、好きな技術を突き詰めて、新しいキャリアやビジネスにつなげて成功しほしいと思っています。成功を推奨するのは、いままでのコミュニティとは少し違うかも。

長谷川ごりごり属人的なのは興味深いですね。でも、システマチックに理解したくなる気持ちもわかります。プログラム化したいって言われませんか。

小島特に米国の人はそうですね。これはどういうプログラムで動いているんだ? みたいな。でも、実際はごりごり属人的で、人によって全然アウトプットが違うんですよ。繰り返しになりますが、強いて言えば、良いリーダーを見つけることがコツといえば、コツですね。

コミュニティ運営のコツは
三河屋的1to1マーケティング

長谷川では、よいリーダーをみつけた後、どうするんですか?いわゆる「水」の部分。

小島その人が喜べる環境や仕掛けを用意することでしょうか。基本的には「皆が喜ぶと嬉しい」という人が多いんですよ。そのために活性化する場やテーマを提供したり、壇上で感謝される場を提供する機会をつくったり。とにかく「承認」につながる事を意識しています。

長谷川でも、なかなか難しいんじゃないですか。同じ会社にいるわけでもないし。

小島英揮,長谷川秀樹

小島そうですね。でも、そんなに人数が多くもないので、1to1マーケティングに近いですよ。コミュニティやFacebookなどでやりとりしているとバイオリズム的なものとか、価値観もわかってきますし、時に悩みも見えてきます。昔はサザエさんの三河屋さんみたいな個人商店じゃないとできなかったことが、今は技術的な環境変化で離れていても可能になってきましたからね。

長谷川こうして聞いてると、上司と部下、監督と選手みたいな、“愛”を感じますね。信頼関係って「見てもらっていること」から醸成されるでしょう。

小島確かにそうですね。その上で、時間と相手の変化に気づくセンサーは不可欠かなあ。相手の変化に気が付かず、ただ「見てるだけ」なら、単なるストーカーですから(笑)。

長谷川でも、好きな人に対してでないと、できなくないですか? 管理職とか「やらなくちゃならない関係」でも、しぶしぶやっている人は多いのに。

小島基本的にやりたくない人をモチベートするのは時間の無駄だと思っているので、まず無理にお願いすることはないですから。やりたいと思っている人をサポートするは、全然苦にならないですね。

長谷川ちなみにどうやってそういう人を見つけるんですか。

小島新たにコミュニティを立ち上げる時には、「ゼロ次会」というのを立ち上げ前にやるんですよ。まずはリーダーなどを決めずにフラットな関係で集まってもらって、そこで熱く語って、共感していただける方、ファシリテーターとしての力のある人を何人か見定めて「複数名」お願いするんです。この何人かがとても大切で、しかも知らない同士がいい。

長谷川おお、「七人の侍」的な?

小島まさにそれです。一人だと寂しいし、喜びを共感できない。でも、知らない同士なら、甘えもないし、それぞれ緊張感があって。「こういう世界にいこうよ」「いいね!」という共感だけでつながる関係だからこそ、実現できるんだと思います。

長谷川そうした人たちにどうやって動いてもらうんですか。

小島もちろんやっていただきたいことはお伝えします。でも、それ以外の時でも常にコンタクトを取るようにしています。そもそも用があるときだけ連絡しても、人は動いてくれませんからね。

長谷川最近JAWSで流行っているAWS-HUBなんか、関西のコミュニティの人たちが自発的に始めたらしいですよね。コミュニティの勉強会後の懇親会の調整って大変ですもんね。それを自分で自分の飲み分を支払うイギリス式パブ「HUB」を使って、途中参加途中退場OKにして、誰でも気軽に参加できるようにした。あれとか、すごくいいですよね。

小島そう、あれ確か始めたの、比企さんがリーダーをしていたころの大阪のJAWS-UGじゃなかったかなあ。

長谷川ホントですか。そうそう、比企さんとはラスベガスで開催される「AWS re:Invent」でお引き合わせいただきまして、その後、仕事や技術の話をまったくせずに、いつのまにか仲良くなってたんですよね。その後、なぜか僕も触発されていろいろAWS関係やってるし、比企さんとも仕事でご紹介を受けていい関係が続いているし。まさに、小島マジック…。

小島そういう人同士を引き合わせると、自然に物事って転がっていくんだと思いますよ。

長谷川ホント、手のひらで転がされてる感じ。怖いよねえ~(笑)。

無償のコミュニティ活動で
プライスレスなメリット

長谷川僕はあちこちで講演をやっているので、AWSから相当お金もらっていると思われているんです(笑)。が、AWSはドケチで一銭も出てませんっ!

小島まあ、無理は申しませんので(笑)。というか、そこにお金をつけはじめると、途端におかしなことになりますからね。

小島英揮

長谷川そうなんですよね。でも、スピーカーとして登場できるというのは、AWSに価値を認められたわけで、それで「知られることによるリターン」もいろいろありますね。人に知ってもらえるし、インバウンドで依頼が来ることも増える。僕の一番の楽しみは、講演者の控え室なんです。同じ講演者としてご挨拶して、いろいろお話しする。気になっていた人に気軽に会えて、もう、お金払ってもいいくらい。

小島「知られることによるリターン」はすごく重要ですよね。講演者も実力があれば、どんどん人脈広げて、ステップアップしていきますからね。いい講演だと他のところでも話して欲しいということになるし。そうやって活躍の場が増えて、ビジネスのサイクルがすごく早くなったという人も多いですよ。今までは、どこか権威があるメディアとかに出たりしないと気づかれなかったのが、小さなコミュニティからあっというまにメジャーになっていく。ある意味、コミュニティがインキュベータになって、新しいキャリアパスを作っているのだと思います。

長谷川ファシリテーターの喜びは、そこにもあるんでしょうね。コミュニティが育つだけでなく、人も育ててスターにしていくみたいな。そういうプロデューサー的な人っていますからね。逆に、コミュニティリーダーに向かない人っているんですか。

小島うーん、逆にコミュニティを自分のやりたいことに利用しようとする人。そうなると、やはりメンバー側が違和感を感じるみたいですね。やっぱりコミュニティは「こうやろう」って皆で決めて動かしていきたいものじゃないですか。とはいえ、そういうタイプは講演者としては向いていることもあるので、そういう役どころでスターになってもらうのがいいかなと思います。職人や選手で優れていても、必ずしもいい監督、いいプロデューサーにはなれないってところでしょうか。でも、いい選手や職人はいたほうがいいわけですし。

長谷川そう考えると、俺、コミュニティリーダーは難しいかもしれないなあ…。

小島長谷川さんは教祖タイプですからね(笑)。ファシリテーターというより、人をインスパイアしていくタイプ。でも、コミュニティっていろんな人がいて、いろんな刺激を受けて成り立っていくわけなので、なくてはならない存在なんですよ。

長谷川いろいろいた方が楽しいですしね。そんな小島さんは一応サラリーをもらいつつも、コミュニティへの情熱は人一倍ですよね。モチベーションはどこにあるんですか。

小島やっぱりAWSの価値を信じていることかなあ。なのに、不当に「気持ち悪い」とか言われているという状態がもどかしいというか…。技術の秀逸さやユーザ価値の高さもあり、同時に産業構造的にもイノベーティブな役割を果たしていると思うんです。ITってこれまで元締めがいて、利益を分配するモデルが多かったですよね。結果、実際に手を動かしている人が不当に扱われていることも少なくなかったし、ユーザに請求の内容がブラックボックスだった。でも、AWSはベストプライスでフラットなので、その辺りが改善されていくと思うんですよ。

長谷川AWSを愛しているんですねえ。

小島ほら、ベンダーがそういうと狂信的に見えるじゃないですか。だから、ベンダー側でない人から「いいね」って言ってもらえる仲間を増やそうと。それがモチベーションでしょうね。

長谷川もコミュニティを構築!?
目指せ、コーヒーエバンジェリスト

小島ところで、長谷川さん、ずいぶんお姿がすっきりとされましたね。例のシリコンバレー式バターコーヒーダイエット、今も続けられているんですか。

長谷川けっこう続いてますね~。

小島長谷川さんに効果が出たと聞いて、妻がカビ毒の恐れが少ない「スペシャリティコーヒー」をAmazonで見てみたら、すかさず「この購入者はこれも買ってます」って、「グラスフェッドバター」って出てきたんですよ。日本でもバターコーヒーってかなりメジャーになっている印象がありますよね。

長谷川そんなこと言われたら、小島さん…、僕、もう何時間もしゃべっちゃいますよ。いいんですか。

小島どうぞ、どうぞ?。僕の周りで長谷川さんは既に「バターコーヒーエバンジェリスト」ですよ。SNSで「バターコーヒー始めました」っていう知り合い、続々と増えてますから。まさにコミュニティができ始めてますよね。間近で成功例を見ると、口コミで広がるじゃないですか。

長谷川確かに、メッセンジャーとかで「どんなコーヒー買ってるの?バターは?」ってちょこちょこ問い合わせがきます。でも、もともとは本を読んで、さらにブレインパッドの草野さんがやっていらっしゃって、実際すごく痩せていらしたので、僕も始めたんですよ。

小島なるほど、理論とエビデンスが一致したわけですね。とはいえ、必ずしも先駆者や熟知している人がコミュニティリーダーになるとは限らないって先ほど言ったじゃないですか。長谷川さんの周りにフォロワーが生まれているのが見えますもん。

長谷川そうですかあ~、じゃあ、お店でも開いちゃおうかな。

小島新しいコミュニティの誕生ですね。じゃあ、そろそろAWS-HUBも始まったし、そちらに席を移して、相談しましょうか。

長谷川おっ、バターコーヒーコミュニティの「ゼロ次会」ですね。行きましょう。

小島英揮,長谷川秀樹


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