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長谷川秀樹のIT酒場放浪記 第35回 売れるネット広告社 加藤公一レオさん


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ハンズラボCEOの長谷川秀樹が、IT業界のさまざまな人と酒場で語り合う本対談。今回は、通販業界では超有名なコンサルティング企業の売れるネット広告社 加藤公一レオさん。ネット広告のレスポンスを“確実に”アップさせてしまうため、クライアント企業から「レスポンスの魔術師」との異名をとるレオさん。大事なことは「おもてなし」の心と語る、その方法論をあますところなく紹介します。

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株式会社 売れるネット広告社 代表取締役社長 加藤公一レオさん
1975年ブラジル・サンパウロ生まれ、アメリカ・ロサンゼルス育ち。
西南学院大学経済学部卒業後、三菱商事株式会社に入社。
その後、Havas Worldwide Tokyo、株式会社アサツーディ・ケイ(ADK)にて、
一貫してネットビジネスを軸としたダイレクトレスポンスマーケティングに従事し、
担当した全てのクライアント(広告主)のネット広告を大成功させる。
その実践経験とノウハウをもとに、ネット広告のレスポンスを確実にアップさせてしまうため、
クライアント企業から『レスポンスの魔術師』との異名をとる。
やずやベストパートナー賞 受賞。
Webクリエーション・アウォード Web人貢献賞 受賞。
「アドテック東京」「アドテック九州」「宣伝会議」「日経デジタルマーケティング」「通販新聞」など講演多数。
アドテック東京2012 公式カンファレンス 人気スピーカー1位。
アドテック九州2013 公式カンファレンス 人気スピーカー1位。
アドテック九州2014 公式カンファレンス 人気スピーカー1位。
「九州インターネット広告協会」の初代会長も務めた。
著書に『単品通販“売れる”インターネット広告』(日本文芸社)
『100%確実に売上がアップする最強の仕組み』(ダイヤモンド社)。

長谷川:今日はありがとうございます。

加藤:長谷川さんのことはad:techでも見ていて、関西弁で面白い方だなと思っていました。こうして個別に会うのは実は初めてなんですよね

長谷川:なんですよね。でも、僕一度、ad:techで加藤さん倒したことがありますからね(ニヤリ)

――ん、というと?

長谷川:ad:techって、毎年人気スピーカーランキングを出すんですよ。

加藤:そうそう。そこで僕、3年連続1位だったんですね。東京と九州と東京で優勝して、残すは大阪のみで全国制覇というところで、長谷川さんに優勝を持ってかれて。

――なるほど、全国制覇を阻止した男なんですね。

長谷川:そう、大阪は死守!(笑)。まあ、私がというよりは、他のパネラーの方のおかげなんですけども。

「本音」のみで生きている感じがスゴイよね

長谷川:でも、加藤さんって、「建前」が全然ないじゃないですか。すべて「本音」というか。そこがすごく好きでね。それなのに、どうやってそこまでビジネスで成功できるのか、不思議だったりするもん。大企業だと摩擦が生じたりもすると思うんだけど。

加藤:そこは多分、逆張りの発想なんですよ。大企業に来る人ってみんな同じスーツ来て「建前」ばかり。そこに「本音」の人がたまにきたら、当然印象に残りますよね。さらに僕のやっているダイレクトマーケティング、それも「通販」の世界って、そもそも建前がなくて、数値がすべて。何本取れたかの世界なので、「建前」の入る余地がないんですよ。そうすると僕も段々本音のみになっていくんですね。

長谷川:売れるネット広告社を作る時って、最初からダイレクトマーケティング一本でやろうと決めていたんですか?

加藤:そうですね。僕、三菱商事、ADK(アサツーディ・ケイ)と就職してきて、9年ほどやっていく中で、ダイレクトマーケティングの世界でどんどん知名度が上がっていったんですよ。それで起業した感じです。当時、ADKのネット広告の売上の1/4を稼いでいましたから。

長谷川:マジで!? それは夜の街で経費かなり使っちゃうよね。

加藤:年間500万円くらい使ってました(笑)

長谷川:マジで!?(笑) それで「独立してやったるぜ!」っていう感じだったんだ。

加藤:むしろ、もっと前から逆算してました。本当は30歳くらいで独立したかったんですよ。起業は子供の頃からの夢で、人生の前提で。じゃあ、そこに向けて、いま何をすべきかとめちゃくちゃ考えてました。最初、三菱商事に入って働いているうちに、やっぱり会社の看板ありきで、このままじゃ個人としては有名になれないなと気付いて、じゃあどうしようと思って、2007年に本を出したり、MarkeZineやWeb担とかに連載の原稿を持ち込んだり。

長谷川:ん、それは何時代?

加藤:ADK時代です。それこそ28、29歳のころ。

長谷川:原稿は自分で書いたんですか?

加藤:書きました。自分ならではの尖った文章にしたくて。本音っぽいこと書いたほうがやっぱり刺さりますからね。僕、最初からADKは辞めるつもりでいたので、会社の規定も無視して、結構好き勝手に自分を売り込んでたんです。そうすると次第に連載が持てて、講演に呼ばれて、するとまた取材がきて――と、この10年間すごい好循環に恵まれて。

長谷川:加藤さんのSNS見てても、すごいはっちゃけててさ、「あんなチャラけた奴で大丈夫か、取引するの止めとけよ。なんて思われるのが怖いから、あげるの止めとこ」みたいな、そういう人が多いと思うんですけど、まったく関係ないですもんね。

加藤:関係ないですね(笑)。

なぜかというと、ダイレクトマーケティングは完全に「実力勝負の世界」だから。僕がもしイメージやブランディングの仕事をしていたら、こんな胡散臭い奴に誰も頼まなかったと思います(笑)。でも、やっているのはダイレクトマーケティングで、ネット広告。すべて数字がモノを言う世界なので、胡散臭いから仕事がこないなんてことはないんですよね。逆に常識的で目立たない9割よりも、胡散臭くても目立つ1割の方でよかったと思うくらいで。

長谷川:なんかさ、偏差値高い人ほど建前が増えるのは何でなんでだろう

加藤:守るものが多くなるからでしょうね。でもエリートぶっている大手広告関係者よりも、ズバリ胡散臭い「情報商材屋」の方がよっぽどダイレクトマーケティングを勉強しているし、よっぽど広告・マーケティングがウマイですよ。彼らは常に本音ですし。でも彼らがエリートの広告業界、表舞台に呼ばれることはないんですよ。ad:techにも呼ばれてないですよね。でもじゃあ、何で僕が呼ばれるかというと、三菱商事とADKと、元エリート側の人間だからなんです。広告・マーケティング手法の本質は胡散臭い人と変わらないんですけど(というか彼らが僕をパクったと思っています)、元エリートのバックボーンがあるから呼ばれる。でもね、実はこの業界、表舞台に出てこない優秀な人達が沢山いるんですよね。

長谷川:そういえば、ad:techもあれだけコマあるのに、そういう人の講演って無いですよね。絶対面白いと思うのに。

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「売れるネット広告」の方法論

長谷川:そんなダイレクトマーケティングの「レオメソッド」って、通販以外にも適用できる領域がたくさんあると思うんですど、別の領域の仕事も受けるんですか?

加藤:そうですね。基本として受けるのは「単品通販」です。総合通販ではなく、健康食品とか化粧品の単品系ですね。でも当然、他の業界からも相談は受けます。そういう時は、必ず「ダイレクトマーケティング」の良いところを持ち込むようにしています。

例えばTVCM。畑が違うので、TVCMそのものの仕事は知識はないんですけど、TVCMをネット上でABテストしましょうという発想でやったら大成功したことがあります。同じように店舗業界でも仕組化してほしいと相談されて、その時は、店舗の世界にCRMの考え方を持ち込んで。店舗ってお客さまが来ても「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」で、あとは「しーん」となっちゃうじゃないですか。例えば、こういう飲食店でも、ちゃんと会員登録して、あとでメールやLINEでフォローしましょうと言ってますね。

長谷川:デジマ業界全体については、どういうお考えですか?

加藤:1つ思うのは、みんな一生懸命、「バズワード」を流行らそうとしているところがありますよね。昔から「Web 2.0」とか「セカンドライフマーケティング」とか「ビッグデータ」とか。でも、バズワードを作って業界盛り上げても、儲かるのはコンサル会社だけなんですよ。肝心のクライアント企業は、バスワードを使いこなす前に次のバスワードがきちゃって、実りを得られない。大事なのはそうじゃなくて、何十年も前から続く基本の仕組みの方だと思います。まずお客さんを集めて、育てて、リピートしてもらうという仕組みは、それこそ江戸時代からやっていて、そういうのを電子化する方がよっぽどいい。しっかりとランディングページ作って、CRM作ってと。新しい商品を作るためにバズワードをこしらえるのは「目眩まし」みたいでホント大嫌いなんですよね。

長谷川:なるほどねー。じゃあ、例えば、DMPってどうですか?・ DMPって「オーディエンス拡張」とかいって、ランディング前のまだこちらに気づいていない人に「届ける」という触れ込みじゃないですか。ホントに効果ある?

加藤:効果は上がったとしても、同じだけコストも上がりますよっていう世界だと思います。思うのは、DMPにしても何にしても、アドテクすべてが「ターゲティング」に特化しすぎていて。ターゲティングって「絞る」だけで、そもそもの「受け皿」がクソだったら、いくらターゲティングしてもクソなわけで。ad:techに行っても「ターゲティングロジック」の話ばかりで、根本が抜けているような気がして、なんか気にくわないんですよね。

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絶妙な「セクシー」が人を惹きつける

長谷川:加藤さんの作るランディングページものって、ちょっとマジメな人からすると「何をアホなことを」って言われそうなところを逆張りしているというか、まあ一言でいうと「下品」じゃないですか(笑)。あれってやっぱり、これまで色々やってきて「なんだかんだキレイ事いっても、人間の本質は結局こういうことでしょ」っていう境地に行き着いた感じなんですか?

加藤:あれもですね、実は僕の好みでああしているわけではなくて、これまで数えきれないほど繰り返してきたABテストの結果なんですよ。「上品」「下品」でいうと、これ難しいところなんですけど、自分では「セクシー」なところを狙っているんです。例えば、麦わら帽子と白いワンピースだと清楚すぎてイマイチ魅力がないし、オッパイ丸出しのAV女優みたいになると下品すぎる。そのちょうど中間にあるセクシーさが一番人を惹きつけると思うんですよ。

長谷川:ほうほう、なるほどね。例えばね、不動産業界だと「マンションポエム」というのがあるの知ってます? 例えば「究極の世界、その先へ」みたいな。「なんじゃそれ!」っていう感じなんだけど、ああいうフワッとしたなんとなくキレイな言葉って、加藤さん絶対キライなんだろうなって(笑)

加藤:キライというか、それも、例えば「究極の世界、その先へ」と「1億円に見える3000万円の家」のどっちがいいか、ちゃんとABテストやりましょうよということなんですよね。カッコいいものや清純なものが必ず売れるわけではない。

TVCMの世界観と価値は?

長谷川:TVCMだと、どういうのが好きというか、効果あると思います?

加藤:今だとライザップが一番ですね。「分かりやすさ」と「連続性」があるじゃないですか。ユニクロのTVCMとかも「連続性」があって、始まった瞬間に何って分かる。それをライザップもこの数年間徹底したんですよね。

長谷川:ああ、確かに、ライザップは尺が良いよね。ちんたら観なくても、「AKBも来たか!」と内容がすぐ分かる。最初は一般人らしき人たちが「パーパッパ~、パーパッパ~」とやってて、「これ健康に悪いんじゃね?」と噂が立ったら、すぐさま医者を出して「私たちもやってます」と。さらに結婚の時にカップルでダイエットしようとか、じーちゃんだってやってもいいんだとか、「自分には関係ないよね」と思っていた人たちをどんどん巻き込んでいくのがすごいなあって。

加藤:ですよねー。あれは素晴らしいと思います。そういう意味だと、一番尊敬しているのは「キンチョール」とかも、「あの世界観」を何十年も続けていて、もう大好きなんですよね(笑)

――例えば、キャリアが桃太郎とかやってるじゃないですか。あれは?

加藤:大嫌いですね。なんか、タレントやシナリオ合戦みたいで、どこも同じことやっていて飽き飽きですね。クリエイターの「お遊び」にしか見えない。

長谷川:確かにあれ、記憶には残るけど、「じゃあ、これで売れるの?」っていうと怪しい。そこにムカつくわけだよね。

加藤:そうです。好感度を上げるには良いんでしょうけど、だったらポップやチラシにお金かけたほうが絶対いい。広告費って、社員は広告費のために年収の一部を犠牲にしているはずなんですよ。つまり、広告費は「命の金」。それをお遊びっぽいのに使うのは大嫌いで。僕も中小のクライアントとか沢山やっていて、広告に対する一生懸命さを見ているので、ああいう語呂合わせみたいのが出てくると、「こっちは毎日命がけで数字追ってるのに」と思うんですよ。まあ、最終的には嫉妬なんですけどね。「こんなことしやがって、う、羨ましくなんかないんだからね!」っていう(笑)

長谷川:TVCMやっている人たちは、どういう考え方なんでしょうかね。例えば、B2BのTVCMなんかだと、自己満足以外の何があるんだろうとか。企業の中でこんなことにこれくらいは予算を使うという枠があって、「何をしようか」「TVCMじゃないの?」「ですよね!社長」みたいな感じだったり、もしくはCSR的な意味だけでやってるんじゃないかって。

加藤:確かに(笑)。でもまあ、TVCMって「社員満足度向上」の意味も強いんだと思います。

長谷川:ああ、なるほどね。最近でいうと、ネット系の会社がTVCMでユーザー集めているケースも増えましたよね。あれは良いなって思うんです。

加藤:僕も、TVという媒体そのものはすごく良いものだと思っていて。例えば、単品通販の世界でも、ネット広告でいけるのは売上100億円くらいまで。そこからさらに500億、700億とスケールするにはマスメディアが絶対必要で。TVCMはお金がないと出来ない分、パワーゲームができるんですよね。そういう意味だと、ネット広告にはまだまだ限界がある。だから、売れるネット広告社も、決して「ネット広告オンリー」ではないんですよ。「ネットがTVを抜いた」というのも、広告主の数が膨大なだけですよね。でもまあ、なんというか、僕は「TV、新聞、ラジオの影響力が落ちている」みたいな業界ネタはどうでもよくて。それよりもクライアント、特に日本の経済にとって一番大事なのは「メーカー」なんですよね。彼らがいるから僕らも、流通業だって金融業だって食べていける。それに比べたら、広告業界なんてどうでもいいんですよ。

長谷川:ふむふむ。

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「子供のころ家にあった」が究極のブランド力

加藤:長谷川さんの広告感は?

長谷川:小売業の新店の場合は、開店前工事をしていること自体が広告なんですよね。「あそこ何できるんやろな?」「東急ハンズらしいで」みたいな。で、開店してからは、交通広告、つまり、駅張りのポスターなどが圧倒的にいいと思います。東急ハンズの場合は、駅直結とか駅チカですから。全国展開してしる大手チェーンになると、マスメディアとかネット広告とか、有効になってくるんじゃないですかね。そうねー。広告については、東急ハンズは誰も方法論を持っていないのが実情なんですよ。何となく昔から「チラシは効果が高い」という意識はあるけど、新聞の発行部数は減ってるし、そもそもチラシは計測しようがないし。そういうのがあって何となくWebにシフトしているけど、正直、僕も色々やってきて、東急ハンズの場合はWebって効果ないんじゃないかなあと懐疑的なんだよね。Twitterもね、代理店に聞いても、新規狙いなのか、リピーター狙いなのかもはっきりしなくて。フォロワーもアクティブなのは数千人だけじゃないかっていうのもあるし。

だったら、アクティブユーザーだけで250万人くらいはいるハンズクラブ会員にメールした方がいいんじゃねと思ったりね。

加藤:それもSNSというバズワードに乗っかっているだけで、本質を見失っている可能性がありますよね。

長谷川:個人的には、投入すべきは多分、交通広告なんだろなあと。この春に東急ハンズ仙台店ができるんですね。東北初店舗なので、確かにホワイトスペースなんですけど、でも、色々試して思ったのは、東急ハンズをそもそも知らない・興味がない層をネット広告で引き寄せようとしたら、いくらホワイトスペースといえど、それこそ膨大な量の広告を投入しなくちゃならない。だったら、東急ハンズをなんとな~くでも知っている人に向けて訴求した方が良いだろうなあと。となると、やっぱり駅の出入り口が一番なんですよ。

交通広告では、PASMOをスキャンするスキャナーあたりに広告だしたいですね。必ず、乗降客は、みんな見ますから。それで、東急に「改札のタッチするところに広告を出させて」と頼んでみたんです。そしたら「レギュレーション上、難しい」というので「じゃあ、せめて改札近くにドーンと…」「それも難しいです」と断られて。

加藤:(笑)

長谷川:あと、東急ハンズの通販でいくと、広告はことごとくROIがでなかったです。色々と試しましたが。構造的に商品原価率が高い、商品単価が低いので、どうしても、広告ROIでなかったです。ポイントアップとかしたほうが、まだROIいいですね。とにかく僕らの場合、ネット広告は効果が出ないんですよね。SNSも当初は色々試したんですけど、売上が上がったとしても0.01%くらいで、「おー、そうか、なるほどねー」と思って。「ここまで上がらないものかねしかし」という感じなんですよ。

加藤:確かに、業態的にネット広告は遠いかもしれませんね。

長谷川:例えばさ、花王とかLIONとかコカ・コーラとか、昔からずっとTVCMやっている企業ってあるじゃないですか。ああいうところは止めたら売上落ちるもんなんですかね。

加藤:うーん、通販だったら確実に下がります。ただ、花王とかLIONとかそこまでのブランドになると影響ないと思いますね。TVCMって瞬間的に認知を高めるじゃないですか、その分、止めると一気に下がるんですね。…何が言いたいかというと、ブランドや認知度の本質ってTVCMではなくて、結局のところ「子供の頃に家にあったかどうか」だと思うんですよ。それってつまりは「売れた」ってことだと思うんですけど、そういうブランド力は強い。「子供の頃の思い出感」があるところは、TVCM止めてもブランド力はそうそう下がらないので、その1/4でも棚確保に回した方が効果は高い気がします。

日本の「おもてなし」は世界に通用する!

長谷川:加藤さんは海外の調査ってしますか?

加藤:調査というか、海外展開する予定はありますよ。中国と米国に。

長谷川:あ、そうなんや。やっぱり日本とは違います?

加藤:全然違いますね~。例えば、米国はバーンと商品売って終わりの「売切型」ですよね。一方で、日本の通販とかは「おもてなし」重視で、リピーターをすごく大事にします。それって江戸時代からの伝統だけど、海外にはない考えなので、ASPサービスを作ってとあれこれやるよりも、「おもてなし」の仕組みをそのまま持っていった方が儲かるんですよ。「おもてなし」されて嫌という人種はいないですから。

――確かに。インドでも日本式洗車が人気らしいですよね。あっちって砂埃がすごいんですけど、水をかけてゴシゴシやるだけのサービスしかなくて、洗車してもらうと逆に傷だらけになっちゃってたそうなんです。そこに日本式の泡を使った洗車をそのまんま持っていったら、すごい人気が出たらしく。

加藤:そう。「おもてなし」のサービスは全世界に通用すると思いますよ。僕はECの世界の人間なので、そこでいかに「おもてなし」を実現するかに挑戦しているわけです。

長谷川:なるほど。ガソリンスタンドは確かに面白い例かもしれないですね。日本はどんどんセルフに向かってるけど、「窓拭きますよー」って海外に持っていったら、「なにー? 窓拭いてくれるんだ!」って、エライ人気出そうですもんね。

本国と海外でブランドイメージが変化するジレンマ

加藤:ハンズさんでは、海外展開はどうお考えなんですか?

長谷川:うちはそんなに、グループ通して、海外展開にはあんまり積極的じゃないですね。まだまだ、日本にホワイトスペースがあるんで、リソース配分も、国内が優先になるというか。根性ないんですよ。「そもそも日本でもシェア取ってないのに、海外?」みたいなところがあって。上海にも出してましたけど、チャイナリスクあるから止めて。今はシンガポールとかマレーシアとか、ASEANを中心に進めているという感じですね。

でも、マーケティングって面白いなと思ったのは、今から20年前くらいですかね、前職でアクセンチュアにいたときに、海外の小売業リテールの経営陣が日本に視察に来るということで、日本のスーパー業界はこうで、コンビニ業界はこうで、百貨店業界はこうでと紹介してたんですよ。で、「結局どこが面白かった?」と聞くと、90%以上の人が「東急ハンズ」っていうんですよ。なんでかというと、「自分の国にないから」と。それが面白いなあと思ってたので、僕、東急ハンズはいるときに「いつか海外やらしてくれ」って言ってたくらいなんですよね。だから、ハンズが海外行くのには前向きなんですけど、会社としてはあまりアクセルを踏まないというか、拡大路線ではないんですよね。

ただ、難しいのは、例えば台湾にフランチャイズがあるんですけど、現地のスーパーとかと同じにならないためには直仕入れじゃなくて、日本から持っていくんですね。すると「ジャパンプレミアムショップ」になっちゃうんです。要は、関税と輸送費で高くなる。そうすると、これは「へぇ」って思ったところなんですけど、ユニクロが国によっては高級ブランドになっちゃってるのと同じように、本国と海外でブランドイメージが変わってくるんですよ。台湾でも高いという声があるので、少し現地仕入れもして安くするんですけど、そうすると商品の独自性がなくなっていく。そんなジレンマがあるんですよね。

加藤:なるほど。

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すべての商売は「定期購買型」にするべき

長谷川:加藤さんの業態だと、単品通販のECサイトを運営するクライアントはほぼ定期購買のようなビジネスモデルですよね。

加藤:100%定期コースですね。単品通販はどれも定期コースじゃないと採算とれないです。1万円の化粧品だったら1人にかけるコスト(CPO)って約2万5000円と、2.5倍かかるんです。そうすると定期コースで安定してリピートしてもらわないとやっていけない。だから、みんな定期コースにどう誘導するかを必死にやってますね。

長谷川:こんな商品・サービスも実は定期購買が良いっていうのも、きっとありますよね。

加藤:結論から言うと、「全商売でそうすべき」と思ってます。魚屋でもネクタイでも毎月定額で違ったものが届くような。それこそキャバクラだって定期コースにすべきだと思うんですよ。毎回LINEとかでしつこいくらいお誘いするくらいなら、毎月3万円で行き放題とかね。そういっても、みんな忙しくて毎日は行けないんだから。

長谷川:なるほどねえ。スポーツジムと同じですよね。

加藤:そうそう。例えばハンズでも毎月1万円のものを5000円で選んで届けますみたいな。継続性のストックビジネスが一番安定するし、世の中の商売はすべてそういうビジネスモデルをつくるべきなんですよ。

長谷川:俺、社内でそれ提案するわ。というのもさ、うちの商品て生活必需品ではないけど、季節によって「こんなのあるんだ!?」という驚きがあって。一度、バイヤーにそういうのを案内してもらったことがあるんだけど、すごく良かったんですよ。商品って何となく見てても「ふ~ん」で終わっちゃうから、それをしっかり紹介する意味でも、プッシュ型で定期的に送るのはいいかもしれない。

加藤:そうですよね。どの商売も定期コースにできると思うんですよ。ファッションだって今は自分で選んでますけど、毎月選んでくれたらどれだけ楽か(笑)。そうやって、いま単品通販の世界でやっていることを、他業界にも広めていくのが、いまの目標だったりします。

長谷川:確かに、服とかは、自分で選ぶといつも同じになっちゃいますもんね。いま「Amazon Prime」がどんどん来てるじゃないですか。でも、まだまだAmazonに食われない領域もありそうですね。

加藤:本気で「テクノロジーが全てを変える」と思っている人がいるんですけど、びっくりしますよね、「そうじゃない!」って。仕組みとしては素晴らしいかもしれないけど、完全自動じゃ絶対に「おもてなし」は不可能なんだから。アナログな部分って絶対必要なんですよね。Webなんて高々数年で、ダイレクトマーケティングには数百年の歴史があるわけで、最終的にひと・ものを動かすのは、アイデアや企画や想いなんですよ。

実はね、僕も、その数百年の実績や先人が創ってきたダイレクトマーケティングのノウハウを、Webの世界に持ち込んでいるだけなんですよ。DMやチラシ、コールセンターのような仕組みですよね。だから、自分で創ったものなんて、実は1つもないんですよ。

長谷川:レオさんって結構マジメなんですね。

加藤:そうなんですよ。おちゃらけは結構演出なんです。

長谷川:ad:techでキャバクラブースやバニーガールバー作ってるくせに(笑)

加藤:そういうアホなノリは大好き♪(笑)

長谷川:ずっと今の仕事を続けていく予定ですか?

加藤:いや、引退しますよ。あと10年もいないと思う。その後はハワイでアイスクリーム屋やります。

長谷川:え、そうなん?(笑)

加藤:はい(笑)

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なんていうか僕、20~30代のころ死ぬほど働いてて、そんな自分を「いつかハワイでのんびりアイスをやる」と騙すことで乗り越えてきたんですね。そうやって騙し続けた以上は、実現してあげようと思って。あとは、下のためにも、早いうちに席を空けたいですしね。だから「今の仕事は40代まで」って公言してます。

この5~6年は人生で一番楽しくて。大企業にいた時は世の中に自分が影響を与えた感覚なんてなかったんですけど、今の会社はワンルームマンションで2人から始めたので、そこから段々大きくなっていく成長感がたまりませんでした。

大企業は舞台として、ブランドと資金力とネットワークと人材をうまく利用しながら、あとは自分をいかに「ブランド化」していくか。若いころは三菱商事の加藤、ADKの加藤と自己紹介してましたけど、今ではもう起業する数年前はリーマンなのに企画書にも社名を記載しなかったいですからね。起業時も最初から黒字でノーリスクだったのは、そうやってADK時代に知名度を上げたからですし。本当の安定って大企業で働くことではなくて、「とにかく圧倒的な実力をつけて、自分をブランド化すること」だと思います。そうすれば何があっても、身1つで商売できる。それくらいの実力がつけば、怖いもの無いですからね。

長谷川:なるほどねえ。

ちなみにハワイでやるのは何系のアイスですか?

加藤:そりゃもちろん、「売れるアイスクリーム屋」です!(笑)

長谷川:ありがとうございました(笑)


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