AWS活用事例、メディア・セミナー情報や名物・社長のほろ酔い対談などをお届けするブログです

HANDS LAB

HANDS LAB BLOG

ハンズラボブログ

長谷川秀樹のIT酒場放浪記 第28回 株式会社成城石井 執行役員 早藤正史さん


ハンズラボCEOの長谷川秀樹が、エンタープライズ系エンジニアが元気に働ける方法を探し、業界のさまざまな人と酒を酌み交わしながら語り合う本対談。第28回のゲストは、こだわりの品揃えにファンも多いスーパーマーケット、成城石井の早藤正史さん(執行役員/店舗運営本部本部長/店舗運営部部長 店舗開発部、物流戦略部、ネット事業担当)です。成城石井のユニークさの根本にある哲学や東急ハンズとの共通点など、思わず成城石井で買い物がしたくなるお話が満載です。

こだわりのある会社で仕事がしたかった

長谷川 早藤さんは転職ではなく、最初から成城石井に入社されたんですか?

早藤 そうです。97年入社です。出身は滋賀県なんですが、大学で東京に来たら帰りたくなくなったというか、せっかくなら東京がいいなと、東京近郊にしかない会社を探しました。

長谷川 もともと小売業を希望して?

早藤 いえ全然。すごい氷河期だったので、どこか決まるところでいいと。でもやっぱり何かこだわりのあるところで働きたいという思いはあって、食が好きだったので成城石井に行ってみたら、「いいな」と感じたんですね。

sakaba28_02

長谷川 入った時に希望の部署はあったんですか。小売業の花形というとバイヤーですかね。

早藤: 僕は店長になりたいと思ってたんです。世界各国に行くバイヤーも面白そうでしたけど。

長谷川 そうですよね。フランスに行ってワインやチーズを買い付けしたりとか…。

早藤: ワインはいいな、と思いましたけど、実はチーズが苦手だったんですよ。入社して成城石井の成城店に配属になったのですが、チーズを切る仕事があったんですよね。チーズ室というのがあって、そこに入った瞬間「この匂いは無理!」と(笑) 上司にも「これは無理です」と言ったくらいで…。

長谷川 へぇ、僕はフランス料理店でバイトしていたことがあって、そのときにチーズって美味しいと思いましたけどね。

早藤: 今は慣れて、美味しいと思いますけどね。文化というか、食べ慣れると美味しい、飲み慣れると美味しい、というものはありますよね。

長谷川 御社は店ごとに、各部門のチーフがいるという形ですか。

早藤: 店舗の大きさにもよりますが、基本的にはそうですね。店ごとにチーズのチーフがいたりして…。

長谷川 早藤さんが好きなカテゴリーというのは?

早藤: 僕はやっぱりお酒と、お酒にまつわるものが好きですね。入社してから勉強して、いろいろ知るにつれてワインて美味しいなと思うようになりまして、お酒の部門のチーフになりたいと思っていました。でも叶わず…。店長の時に、一度兼務でやりましたけどね。

優秀な人は“人心を集める人”

長谷川 43歳という年齢と役職からすると、早藤さんはプロパー社員ではぶっちぎりで出世したパターンじゃないですか?

早藤: いえいえ、プロパーと言ったら、社長がプロパーですから。 彼は42歳で社長になりました。

長谷川 社長はおいくつ?

早藤: 今48歳です。

sakaba28_03

長谷川 なるほど。でも、今43歳でこの役職というのは他にいないわけですよね。御社において伸びるというか、優秀だとみなされるのは、どんなスキルを持ってどんな行いをする人なんですか?

早藤: 難しいですけど、上にあがる人って多くの人をマネージしていく立場になるので、「人心を集める人」ですよね。人が動いてくれるかどうか、ということにつながるので。小売業だと特に、お店の店長ひとりが直接数字を作ることはできなくて、働きやすい雰囲気を作るのが重要なんですね。お店のみんなのやる気とか仲がいい悪いといったことを、お客様は感じると思うんですよ。そういう、見えないけど重要なことって結構あるんじゃないかなと…。

長谷川 なるほど。東急ハンズの場合、役職者になりたくない人って結構いるんですよね。部下を管理するよりも、好きな商品を売っていたいというタイプ。役職があがって現場から離れていくとなると、「たとえ給料上がったって、そんなん俺の人生じゃない」みたいなことを言う人がわりといるんです。

早藤: あ、いますいます! そういう人は重要ですよね。お客様をつかめるのはそういう人で、そういう人ががんばる環境を作るのが大事かな、と。東急ハンズさんもそうですが、売っているのが特徴ある商品で、ただ置いておいたら売れるというものわけではないので、伝道者というか、伝える役割の人が必要な部分が多いので。

店の評価軸は「売上」ではない

sakaba28_04

長谷川 お店の評価というのは、どのようにされているんですか?

早藤: あいさつ、クリンリネス、欠品の防止、鮮度管理という、4つの基本の徹底、これが評価の上で一番重要視されています。売上の前年比とかは店舗のKPIには入っていないんですよ。

長谷川 そうなんですか!店舗の評価軸に売上前年比がない!!!???そんな小売業が世の中にある? 売上はどうでもいいんですか?

早藤: 売上を追って売れている商品を広げると、他と同質化しますよね。そして値段競争になります。それで勝てる企業は、一番大きな企業だけだと思うんですね。

長谷川 結局規模の大きいところが、バイイングパワーで勝つに決まってると。

早藤: そうです。なおかつ、せっかくお店で人手をかけていろいろなことをやろうとしているのに、一番売れる商品というと接客がいらない商品が多いじゃないですか。

長谷川 なるほど。

早藤: 品揃えとして置くことはあるんですよ。でも、ほとんど定価ですね。いくつかの広い店舗では花王の「アタック」を置いているんですけど、それも定価で売っているので、花王の人が感動していたと聞きました(笑)

長谷川 「希望小売価格で売ってくれとる!」「俺らの希望が通っとる!」と(笑)

早藤: 他と比べたら高いですけど、それでも必要なら買ってください、という位置づけなので。価格競争をすると、どうしても人の削減みたいなことになって、それをやり過ぎると店の良さはなくなります。小売業が魅力的になろうとしたら、給料が上がらないとダメですよね。人ががんばって、ファンが増えて、最終的に売上が伸びればいいな、という考え方です。

長谷川 売上よりも4つの基本を徹底しているというのは、やっぱりすごいですね。

早藤: 徹底するのに一番重要なのは、それが評価につながるかどうかということです。最初に覆面モニターによるチェックを始めた時は、店長がいつ誰が来るのかを調べて、そのときだけちゃんとやろう、というようなこともあったんですよ。でも何年かやるうちに、チェックの結果を見て自分たちの悪いところを直そう、という文化に変わりました。その点数は社長も確認して会議をするんですけど、点数が悪いところは人間関係が悪かったりして、2〜3ヶ月低評価が続くと問題が出てくるものなんです。ほとんどが人間関係か、もしくは人がいなくてギリギリのところでまわしているとかが原因で…。だからSOSじゃないですけど、問題の芽を見つけるということになりますね。

長谷川 なるほど。人間関係が良くてみんな元気にやっていれば、それがお客さんに伝わっていくと。店長というのは、店のみんなが仲良く明るくできるようにするのが一番の仕事だということですよね。

早藤: そうです。

長谷川 これは世の中にもっと広めたい話ですね。リテール業界の人も知らんのちゃうかなぁ? まあ、知ったところで真似できないですけどね。

成城石井が独自である理由

長谷川 成城石井さんはカテゴリーで言うとスーパーマーケットじゃないですか。でも、他のスーパーマーケットや量販店とは品揃えとかブランド認知が違う。なんでこうなったんですかね?

早藤: 一番大きいのは、最初の店舗である成城のお店のお客様の存在ですね。昔から文化人とか学者さんとか、海外に行かれる方も多くて、食にこだわりを持つ人が多くいらっしゃったんです。「海外で見つけたこれを入れてくれ」とか「これが美味しいから置いてくれ」とか、そういうお客様の要望に答えようとしてやってきたら、他と違う一面ができたんじゃないかと。

早藤正史

長谷川 他のスーパーとは違う、と業界で認識され始めたのはいつ頃からなんですかね?

早藤: 97年にJR恵比寿駅のアトレに駅ナカ店の第1号を出したんですね。聞くところによると、成城石井が入って他のテナントさんの売上が上がったらしいんですよ。日常のものを買っていただくのと一緒に、ファッションだとか他のものも売れたということみたいなんです。それ以来、JRさんからもそれ以外の会社さんからも、駅での出店の依頼をたくさんいただくようになりました。「駅ナカ店=成城石井」というイメージがついたのが大きな転機じゃないかと思います。Wikipediaで「駅ナカ」を検索すると成城石井が出てくるんですよ。2代目社長の石井良明氏が「駅ナカ」という言葉を使ったのが最初だという説があるらしくて。

長谷川 へぇ、そうなんですか!

早藤: 一般的なスーパーって標準フォーマットがあるんですよ。究極に効率化を図るので、450坪から600坪と決まっている。今は違ってきていますけど、昔なら必ず入ってすぐに青果があって、お肉があって、奥に乳製品があって、と決められたレイアウトがあるんです。でも、成城石井はそれがなくて、お惣菜から始まったり青果から始まったり、店によってバラバラ。駅ナカの店って450坪もないじゃないですか。標準化で効率化するのではなく、お客さんに合わせて売り場を作るというのを最初にやったのが、成城石井なんじゃないかなと。

長谷川 ほうほう。

早藤: スーパーマーケットって、元々は専門店と違って野菜もお肉もお魚も…、と全部揃うのが特徴なんですね。そういう意味では、スーパーさんには「成城石井はスーパーじゃない」って言われるんですが、お肉をやっていない店、魚をやっていない店というふうに、揃わないカテゴリーが結構あるんですよ。さっき各部門のチーフがいるといいましたが、状況に合わせてカテゴリーを選んで出店できるので、それはひとつの強みになっていると思います。

長谷川 一時期スーパーマーケットがGMS (General Merchandise Store)の方に流れていく時代があったじゃないですか。成城石井はそういう話はなかったんですか? 服飾も置いたらいいんじゃないかとか、お客さんも求めてるんじゃないかとか…。

早藤: 成城を始め、感度の高いお客様が住まれている土地とか、駅ナカとか、やっぱり地価が高いじゃないですか。だから大きな店を作ると商売にならないんですよね。高い家賃に耐えられるスーパーマーケットであるというのは、ひとつの特徴だと思います。

長谷川 なるほど。

早藤: スーパーの中でお惣菜を作ると、厨房が必要ですよね。そうすると設備も高いし、売場の面積も減ってしまうということで、僕らの場合は惣菜の製造工場のセントラルキッチンがあることが役に立っているんです。発注すると1個から来るんですよ。他のスーパーさんですとケース単位の発注が一般的ですけど、狭い面積の中で商品数を増やすには在庫を極力少なくしないといけないですから。物流倉庫で分けて、1商品1個から取れるようにすることで、店のバックヤードをできるだけ小さくして。

長谷川 1個からでも発注できるというのはすごいですね。

早藤: ハンズさんも、「ハンズ ビー」とかは結構小ロットでやってるんじゃないですか?

長谷川 やってますね。僕らが扱う雑貨は、食品スーパーさんに比べてより小さいパパママストア的な取引先さんも多くて、ボリュームが出ないんですね。そういうところは、「月曜に注文したら水曜日に届けてね」というような発注サイクルもないんです。そう決めても、向こうも「約束できません」というところがあるので。逆に「何ロットから」という約束もない。だから僕らも、商品マスタ上の最低発注数はほとんど1ですね。あとは明文化されていない心の中のボリュームというのがあって、2万円分くらいの注文が溜まったら送られてくる、という感じで、それまでは向こうで止めてるんです。届かないから電話したら、「着払いだったら送れますけど」と言われたりして。だから僕らの発注端末には他にはない機能が付いてるんですよ。発注すると、この発注先にいくら発注残があるかが出るんです。それが2万円とか3万円とかにならないと、あちらは送ってくれないので。

sakaba28_06

早藤: それはすごいですね。僕らも東急ハンズさんと近いです。物流センターを作ったのは、こだわった生産者さんはたいてい個人でやっているので、年間で作れる量なんて限られるんですね。店がそれぞれに発注をすると対応できないので、作ったものを全部物流センターに入れてもらってるんですよ。その上で、各店舗から物流センターに発注してるんです。採れただけ、とかになるので、全店に置けるとは限らないんですよね。「365日安定的に欠品なしでやる」という考え方ではないから、こだわった商品が置けるんです。

長谷川 東急ハンズで店ごとの仕入れから本部バイヤー制に変わったとき、みんなそれと同じことを言っていましたね。本部で一括してやるようになると、全店に行き渡る供給量があるものを仕入れるようになるんですけど、そうすると「ちょっと変わった面白い商品」みたいなのがなくなっちゃうと。

1店舗で仕入れている時代って、バイイングパワーはないんだけど、仕入先さんが店舗の近所で商売やっているから、「ごめん、あれ持ってきてくれる?」と言えば「分かりましたー」と持ってきてくれるような感じでね。外部倉庫がまわりにあるような良さはありましたよね。

早藤: いいですねぇ。僕たちの場合、こだわった生産者さんに他の生産者さんを紹介していただけることが多いです。「あそこもええもん作ってるから、紹介するわ」みたいな感じでね。そんなご縁で扱わせていただいている商品て、いいんですよね。美味しいですし。

いかに美味しいものをそろえるか。
ブランドは後からついてくる

長谷川 ブランドの考え方について聞きたいんですけど、僕が東急ハンズに入社した時に、「東急ハンズ」というブランドはどうやってできたんですか? というのをいろんな人に聞いたんですよ。そうしたら、ブランディングの部署があった時代はないし、「ハンズらしく」とよく言うけどその定義もないと。単にみんなが面白いものを仕入れようとしてたら、なんとなくみんなに知られるようになっただけ、と言うんです。成城石井さんの場合、ブランドに関しての戦略のようなものはあるんですか?

早藤: 全然ないですね。いい商品を仕入れるということで成り立っている会社なので、大事なのは中身。規定を作ってそれを守るのがブランディングではないですよね。ハンズさんと同じように、美味しいものをどう揃えようかということを考えてやっているうちに、今のようになったということです。例えばワインて、輸入するときに赤道を通るんです。そうすると熱劣化と言って味が変わってしまう。「日本で飲むのと海外で飲むのとでは味が違う」とお客様から言われて、「それじゃあ」ということで定温のコンテナで運んで、ワイン専用の倉庫で保管するようになったんです。湿度も温度も管理された150万本まで預けられる倉庫で、常に100万本は在庫があります。

sakaba28_07

長谷川 そうなんですか!

早藤: 品質にこだわるのが大好きで、どこよりも美味しいってことを伝えたいという思いがあるんですね。
ちなみに成城石井は卸売営業部というのもあって、ワインを有名なホテルやレストランで扱っていただいたり、他のスーパーさんにも成城石井の輸入会社が仕入れたものを売っているんですよ。

長谷川 面白いですね! そういう事業もあるのか…。

早藤: 全国のスーパーさん270店舗くらいに、「成城石井コーナー」というショップインショップのような売場をやっていただいていたりもしています。逆に、紀伊国屋さんからは昔からパンを仕入れているんですよ。紀伊国屋さんのキャパもあるので全店ではないのですが、古い店には紀伊国屋のパンのファンというお客さんがいるので、ずっと取り扱っているんです。だから、そもそも競合店という考え方が本当にないんですよね。みんなお取引様ですから。

長谷川 へぇ、面白いですねぇ。本当に特殊な会社なんですね。
でも、ハンズも競合というのはほとんど気にしていないんですよね。あえて競合店は? というと、一番近いのはロフトさんだと思うんですけど。我々も定価販売なので、価格での競争はないですしね。

共通点の多い成城石井とハンズ、いつかコラボも!?

早藤: 成城石井と東急ハンズさんて、似てますよね。

長谷川 今日話を聞いて、そう思いました。ローソンさんよりは俺らの方が絶対似てるね(笑) 今、ローソンから人は来てるんですか?

早藤: 出向の人は来てるんですけど、どちらかというと「成城石井の勉強をしてこい」という感じで若い人が来られています。

長谷川 あ、そういう感じなんですか。

早藤: ローソンのトップの玉塚さんは成城石井は成城石井のスタイルでやればいいという考え方で、非常に大事にしていただいてますね。

長谷川 そうなんですね。
話は戻りますけど、成城石井さんと東急ハンズとすごく合いそうなんで、コラボ店みたいなこととかやったら面白そうですよね。

sakaba28_08

早藤: それはやってみたいですね! 喰い合うところもないですもんね。

長谷川 かけらもない(笑)

早藤: テーブルウェアなんかも多く扱ってらっしゃるから、そういうものと食品と一緒に並べたりしたら、面白いですよね。

長谷川 僕らはフランチャイズのしくみもあるんで、いろんなやり方ができると思いますよ。
今度ちょっと、うちの店舗開発の者に「こういう話で盛り上がったんだけど」って言っていいですか?

早藤: いいですね。ぜひお話しましょう。

長谷川 じゃあ、今度はその話でお会いしましょう。今日は、どうもありがとうございました!

sakaba28_01


  • IT酒場放浪記 記事一覧
  • エンジニア募集中!