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長谷川秀樹のIT酒場放浪記 第24回 ASCII.jp 大谷イビサさん


ハンズラボCEOの長谷川秀樹が、どうすればエンタープライズ系エンジニアがもっと元気になるのか?という悩みの答えを探し、IT業界のさまざまな人と酒を酌み交わしながら語り合う本対談。第24回目は、株式会社KADOKAWA TECH.ASCII.jp編集記者の大谷イビサさんをお迎えしました。アスキー一筋、業界の御意見番として講演などでも活躍中の大谷さんのメディア論とは? エンタープライズとスタートアップの狭間で揺れる記者魂とは?

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株式会社KADOKAWA TECH.ASCII.jp 大谷イビサさん
ASCII.jpのTECH・ビジネス担当。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、日々新しい技術や製品の情報を追う。読んで楽しい記事、それなりの広告収入、クライアント満足度の3つを満たすIT媒体の在り方について、頭を悩ませている。

「エンタ-テイメント」がアスキーのDNA

長谷川:なれそめはたしかAWS Summit Tokyo 2014のパネルディスカッションですよね。玉川さんがモデレーターで、NTTドコモの大野さん、日清食品の喜多羅さんと僕が登壇して、それを記事にしてもらって。そこで僕のことを「関西弁で押しまくるボスキャラ感満載の~」と紹介してもらったことが、個人的にツボだったんです(笑)

大谷:ありがとうございます(笑)。実は「このセッション、絶対面白いから」と小耳に挟んでいて。長谷川さんのことはJAWS DAYS 2014の講演で拝見していて、面白い方だなと思っていたので、それはぜひ行こうと。

長谷川:基調講演ではない、こういうセッションを取り上げてもらえるのはうれしいですね。

大谷:そこは理由があって、基調講演って他のメディアも大勢取り上げるじゃないですか。そんな中で基調講演だけ取り上げても意味がないなと。極端な話、そこは他のライターに任せて、自分はもっと尖った取材をしようと、イベントの時はいつもセッションリストを見つめながら、ああいう面白いセッションを狙っているんです。

長谷川:大谷さんは元からアスキーですか?

大谷:1996年にバイトで入って以来、アスキーです。「ASCII DOS/V ISSUE」という自作PCの雑誌からで、その時は「コンピュータ分かる?」「全然わかりません」だったけど、アスキーイケイケで人が全然足りないので「いいから早くおいでよ」という感じでしたね。

長谷川:その頃ってPCブームで、「週刊アスキー」もどんどん売れるような時代ですよね。

大谷:そうそう。ただ「週刊アスキー」はまだなくて、「EYE-COM」というコンシューマ誌がある頃でした。アスキーって硬派向けで、「ASCII DOS/V ISSUE」では、毎日倉庫にこもってひたすらDOS/Vのベンチマークをしていましたね(笑)

長谷川:ああ、なるほどねー。当時は電源入れると轟音にまずビビりましたよね。ファンがゴーって。それでもう、電源落としましたもん、僕(笑)

大谷:ベンチマークの時はそれが何十台もですよ(笑)

で、その後、90年代後半にWindows NTの雑誌に移ったのを皮切りに、いわゆる「法人向け」を担当しています。IT系媒体という意味ではなんだかんだで15~6年になりますね。

長谷川:あ、法人向けは90年代後半からなんですか?

大谷:ええ、90年代後半からネットワーク系の雑誌をやっていました。クラウドに触れたのはもっとずっと後からで、2013年にWeb媒体に移ってから勉強し始めました。ネットワーク系の雑誌が終わるかどうかでずっとバタバタしていたので、クラウドの波に気づくのも遅くて(笑)。それこそ本格的に入ったのは、JAWS DAYS 2014くらいからなんですよ。

長谷川:へー、それは意外。「イイクラ」なんてやっていたりするから、もっと前から知っていると思ってたけど。

大谷:逆によく知らないから、「詳しい人集めて聞いてしまえ」という感じなんです(笑)

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「イイクラ」。お酒の力を借りてクラウド界隈の関係者から本音を聞き出すASCII.jp連載「飯田橋クラウドクラブ」の略称。http://ascii.jp/elem/000/001/072/1072324/

長谷川:なるほどねー。

最近よく思うのは――、編集部ってたくさんあるけど、記事だけ見て「あそこのだな」って区別が付かないじゃないですか。均一化されちゃってて。もちろん、「事実を書く」という前提があるのだろうけど、もうちょっと違う書き方のメディアがあってもいいのになあって思うんですよ。それが例えば「ボスキャラ」みたいな書き方でも、登壇者の言うことを100%真に受けるのではなくて「ホンマかいな」とツッコミいれるような書き方でもいいんですけど、読み物として面白いような。大谷さんってまさに「そっち系」じゃないですか。

大谷:まさに「そっち系」ですね(笑)

アスキーのそもそものDNAなんですけど、「エンターテイメント」を重視していて、たとえば「大谷さん、写真撮ると絶対ポーズ取るよね」って言われるけど、「撮られるからには何かやるでしょ」とずっと指導されてきたんですね。それに加えて、エンタープライズ系の記事って基本読まれないわけですよ。何かしらフックが必要ということで、「エンタ-テイメント」を売りにしているところがあります。

デベロッパーブログにメディアは勝てない!?

長谷川:JAWS-UGに直接入り込もうと思ったのも、そうした考えからですか?

大谷:そうですね。元々はJAWS DAYS 2014の際に、得上さん(マイニングブラウニー代表取締役の得上竜一氏)とかに「メディアスポンサーやりませんか?」と誘われて、でもメディアスポンサーってイベント側に媒体ロゴを提供するだけで面白くないので、「それだったらしっかり聞くので、JAWS DAYSの面白さをちゃんと教えてください」と取材したのがきっかけです。そこから直接コミュニティに参加してしまうわけだけど――

我々の仕事って広報・PRの人から「記事にしてください」と情報をもらうんですけど、コミュニティに入ると、情報の鮮度が全然違うことに気づくわけですよ。そこではいち早く技術を検証して、実際に使っている。これはもう、ユーザーから直接話を聞かないとダメだなと思って。ちなみに情報源が変わる」というのは、これまでの記者生活の中でもものすごい変革でしたね。

長谷川:確かに、インターネットの普及でエンジニアの情報源もかなり変わりましたね。昔は何か知ろうと思ったら大手ベンダーや調査会社に聞くしかなくて、メディアも特権階級で「メディアだから得られる情報」というのがあったけど、クラウドなんかも今や個人がちょこちょこっと弄ってブログにあげちゃいますからね。で、そっちの方が詳しいじゃん、と。メディアはどうやって食べていくのかと心配になったりして。

大谷:そう、ホントにそうなんです。でも、多くのメディアはデベロッパーブログを相手にしていないんです。ある意味、特権階級に慣れた人が多くて、イベントでも記者向けに特別なブリーフィングあるので「その記事を書けば満足でしょう」となってしまう。

一方でデベロッパーブログは、広告を気にせず、実際に触った深い内容をあのスピードであげてくる。「それに大手メディアが勝てる道理がありますか?」となるわけで、そういう新興メディアを無視するのは、レガシーメディアの怠慢だと思います。

長谷川:業界的には、ああいう風に技術者がブログを書くのって、IT業界が最も盛んですよね。だからIT系のメディアが一番最初につらくなりますよね。

大谷:そういうのを分かっている記者は、ちゃんと自分の“得意分野”や“立ち位置”を作ったりしてるんですよね。

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東急ハンズっぽい小売の情報だけキュレーションしてほしい

長谷川:僕個人としては、メディアにビジネスモデルを変革してほしいんですよ。「そんなのでお金をもらえっこない」というのがあるかもしれないけど、例えば、有償のスマホアプリみたいにユーザー課金モデルにするとか。面白ければユーザーが付いて、つまらなければ離れていく、そんな競争原理が働いて、何よりスポンサーに媚びる必要がないように。そのためにも「ネットの情報はタダ」という風潮を矯正したいですよね。その代わりに、メディアには情報の質をもっと高めてもらって。

というのも、今ってググって出てくる情報が玉石混交じゃないですか。古い記事もあれば、真偽が怪しいものや、煽っているだけで中身のないものもある。そういうのをいちいち見極める時間がもったいないし、無条件で信じちゃう人もいるだろうし。

大谷: 有料化はメディアにとっても悲願ですねー。でもなかなか難しくて。情報がタダっていうこともあるし、メディアに会員情報を管理するためのリテラシーが不足しているという面もあります。そうした中で、果たしてどういうモデルが最適か、なかなか悩ましい。

例えば、長谷川さんはWebサービスが有償でも使おうと思う基準ってあります?

長谷川:んー、そういう意味だと、有償サービスって個人で払うパターンと企業が払うパターンがあるじゃないですか。個人向けだと大変だけど、企業に払ってもらうモデルだと、高額でも成立したりしますよね。

いま個人的に欲しいと思っているのが、小売関連――特に東急ハンズと関連性が高いような情報だけをキュレーションしてくれるサービス。一番近いのは「日経MJ」なんだけど、それでもまだ範囲が広くて。スーパーとかの情報はいらないから、ホントに東急ハンズっぽい情報だけをセグメント化してほしいなと。そしたら店舗スタッフが全員iPod Touchを持っているので、隙間時間に読んでもらうとか、社員教育に使えるんですよね。

「そういうのあったら僕ら、お金出しますよ」って、キュレーションメディア事業者とかに頼むんですけど、彼らはB2Cがメインなので、B2Bにはなかなか興味を持ってもらえなくて。そういう「あなた特化の情報」だったら、ほしいという企業は結構多いと思うんですけどね。

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メディアに新しいビジネスモデルを

長谷川:一方でB2Cの分野でも、「普通に記事を読む」にプラスアルファのちょっとしたアイデアがあればいけるんじゃないかなと。例えばそうだなあ、池澤あやかさんって「かわいさ」だけじゃなくて「プログラミングができる」ことで、「Rubyの女神」とまで呼ばれるようになった。あれってまさに付加価値だと思うんですよ。だから、記事にも何かが付属していて、それが読者にとって付加価値になれば、うまく回るんじゃないかな。ちょっといま思い付きで適当なこと言いますけど、例えば「1年購読したら池澤あやかさんのオフ会に参加できます」とかね。

大谷:うーん、なるほどねえ。

長谷川:例えば、(アスキーが)芸能事務所的になるというのはナシですか?

大谷:ん、というと?

長谷川:その媒体に行けば必ずあの人の発言が読めるみたいに、業界の御意見番を片っ端から抑えて専属契約しておくの。で、何かの新サービスが出たら、主要人物10名にスパーンとメールで聞いて、スパーンとWebに掲出して、1つの媒体にそれらの人たちに賛否両論が並ぶとか。

大谷:あ、そういう意味だと「侍連載」がそういう側面があると思いますね。あとは今回のAWS re:Invent 2015でやったイイクラも現地で関係者を集めて、お酒を飲みながらその場で話してくれという感じでやっていて、そういうのって芸能事務所のリクルーティング的な側面がなきにしもあらずかなと。

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「侍連載」。JAWS-UGメンバーやAWS関係者に、自身の経験やクラウドビジネスへの目覚めを聞くASCII.jp連載「日本のITを変える「AWS侍」に聞く」の略称。http://ascii.jp/elem/000/000/990/990356/

長谷川:例えば、JAWS独占メディアスポンサーじゃないけど、新媒体「JAWS.ASCII.jp」みたいに、ある程度独占的に集中してJAWSを扱うメディアを作るっていうのはどう? もちろん、運営やコストをどうするのかという話はあるけど、そういうのあったら面白いと思うんですよね。

大谷:うん、確かにJAWSの情報がブログに依存しているのはもったいなくて、各地でいろんな勉強会が開かれているのに、みんなバラバラですもんね。本当はちゃんとポータル化して、専任記者みたいなのが各地の勉強会を記事にして、とやればもっと求心力も上がるはずで、メディア的な「情報発信力」という考え方があってもいいかもしれない。

長谷川:じゃあ、やりましょうよ。「JAWS.ASCII.jp」、うまくいくと思うんですけど。

大谷:そうですねぇ、ただ1つ悩ましいのは、大谷としてはどこかで中立性を保ちたいというか、クラウド業界とエンタープライズ業界と色々なところに接点を持っておきたいんですよ。いま読まれるのは確かにクラウド系の記事なんですけど、エンタープライズのオンプレミス製品にもいいものはあって、クラウドじゃないからといって否定するのはもったいない。例えばアスキーのコンシューマの読者も「なにか面白そうだな」と集まってくれるようなコンテンツにしていきたくて。

長谷川:なるほどね。でも、おそらく幅広い層に読んでもらいたいということだと思うんですけど、そうすると「ググってきたその辺の記事と何が違うの?」ということにもなりかねなくて、やっぱり熱狂的なファンを作るためには、ある程度テーマを絞ったほうが熱量あがりませんか?

大谷:そこは難しいんですけど、記事の差別化のためには4つあると思っていて、「早いこと」「深いこと」「希少価値があること」「原資(お金)があること」なんですけど、その内の「希少価値」って、実はマニアックすぎてもダメで。少数の人たちが熱狂するようなことって「マニアック」なことだけど、「希少価値」はその情報を欲している人がある程度いるんけど、なかなか手に入らないことだと思うんですよ。メディアとしてはそこに適切な情報を出していかないと、少数の人が満足するだけでは足りなくて。

マニアックと希少価値の線引きがどこかは、ホントに難しいんですけどね。例えば、「どこまで深いところに突っ込むべきか」というのは記者の中には常にあって、ある程度の深みまで行ってエンジニアが書くような記事を書こうとすると、「あんた、エンジニアなの?」となるし、そこはすごく難しい。

長谷川:なるほど。

もっと大きな話で言うと、ちょっと危険発言かもしれないけど、メディアには“いい意味”で世論を操作してほしいなと思っていて。もちろん中立性っていうのはあると思うし、操作も行き過ぎると中国みたいになっちゃうけど、シンガポールくらいには操作してもいいかなって。結局のところ、世の中はメディアが動かしてきたわけで、例えば、メディアが一斉に「景気がいい」と書いたとしたら、段々「そうなんだ。それじゃお金、使おっかな」となって、本当に景気も良くなると思うんですよ。「足を引っ張る」んじゃなくて、そんな風に「いいことはどんどんやろうよ」「下向いててもしゃーないやろ」という方向に動かしてほしいんですよね。そうしたら政治ももっと動くんじゃないかと。

そこまで大きな話じゃなくても、例えば、僕の嫁さんは、FBでの僕の姿をみて、「ああ、会社でこういうことしてんのね」と、相当な情報量が自然とはいっていく。自分の友人たちが勝手に情報をピックアップして、キュレーションしてくれる。それをスマホでピピッと見られるってすごいことで、メディアって人にやる気を出させたり、なくさせたり、色んな意味でえらいパワーを持っているんですよね。だけど、ITのメディアの話になると途端にスポンサーがどうのこうのとなってしまう。ネットの情報はタダという風潮もあって、どうにかならんかなと思うんですよ。きっと、いい記事とPVが取れる記事は違って、みんな“PVが取れる記事”ばかり気にするから、ネットに浅い記事が溢れるのかなって。

さっき、「アスキーはエンターテイメント」という話があったけど、コンテンツを作る力や魅力はすごいので、何か“いい記事”が増えるような、新しいビジネスモデルが生まれたらいいなと思うんですよね。

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「自分はほんの少し未来を前倒ししているだけ」

大谷:長谷川さん、最近ますます登壇数がすごいですよね。醍醐味はなんですか?

長谷川:そうね。一番のモチベーションは、他社さんから「長谷川さんの講演聞いて、AWS導入を決意しました。」と言われることかな。ちょっとでも、世の中のクラウド推進になっていると思うと、嬉しいですね。

大谷:メディアとは違う立場でそういうことができるのがうらやましいですよね。僕らが書く記事ってユーザーには伝わるけど、経営者はあまり読んでくれない。経営者が新しいことをやろうとすると長谷川さんとかに行き着く。小売のボスで、SIerのボスで、ユーザーコミュニティにもいる。足がたくさん出ているのがやっぱり重要で、そういう特異点に長谷川さんはいるんですよね。

長谷川:もちろん、みんなに担いでもらってのことだし、あくまで東急ハンズという冠があってのことなので、そこを勘違いするとおかしなことになっちゃいますけどね。それとユーザー企業にいるからで、もしSIerにいたらとても言えないですし。SIerの立場で「止まってもいいからいてまえ!」なんて言ったら自分が終わる(笑)

大谷:記者も同じで、大谷もアスキーだからこそできることがある。看板ってやっぱり大きくて、それを傷つけないようにしながら、新しいことをしていきたいと思いますね。

長谷川:メタップスという会社をご存知ですか? アプリ収益化プラットフォームの「metaps」とか、無料のカード決済サービス「SPIKE」とかを運営しているところで、特にSPIKEは「初期費用・月額は不要で、月間売上が100万円まで完全に無料で使えます」というモデルでユーザー数急増してるんだけど、創業者の佐藤航陽さんのブログに、「自分のやっていることはほんの少し未来を前倒ししているだけ」「自分がやらなくてもいつか誰かがやること」「未来を少しだけ近づけている」と書いてあって。

自分がやっていることもそれと同じかなと。水は低きに流れる、その摂理には逆らえないけど、その流れを少し速めることはできて、自分もほんの少し先の未来を先取りした、「ただそれだけ」という思いと、「でも自分が未来を引っ張った」という自負と両方あるんですよね。

大谷:いいですね、そういうの。「流れを早める」「未来を引っ張る」というのも一気にはできなくて、水面下では一人一人の意識が少しずつ変わってるんですよね。記事を書いているときも「この人にこう変わってもらえたらいいな」、「こんな感じで元気になってくれたらいいな」と一人一人に語り掛けている気がします。アスキーってメッセージは基本「ポジティブ」なんですよ。その記事を見て、「すごいな。自分もがんばろう」って前向きになってほしい。

 ハードウェアの激変とIoTの可能性

大谷:今回のre:Inventは行ってみてどうでした?

長谷川:そうねえ。3回目の参加なんだけど、あの場に行って、自分の原点――といったら言い過ぎかもしれないけど、初心に帰って身を清める場という位置づけですね。僕にとっては、技術がどうのというよりも、そこに来ている人たちと仲良くなる方が大きくて。1回目にJAWS-UG大阪の比企さんを紹介されて、2回目にファーストリテイリングの玉置さんと出会って、そういうネットワーキングが楽しみですね。

大谷:技術的にはIaaSはもういいかなという感覚があります。PaaS以上のもっと上のレイヤで頑張ってほしい。re:Inventを見ていても、IaaSは互換機とか共通プラットフォームで、そのうえで何をするかというところに価値が移ってきてますよね。

長谷川:そう。なので講演で「AWSを導入したきっかけ」という話には熱意が持てなくなってきてるもん。もうきっかけとか、その時の細かい想いとか思い出せなくなってるし、「こんなところで話を聞いてないで、早く使ったらええやん」とか思っちゃうんだよね。導入率とかシェアを見ると、「使い始めた」がまだニュースなんでしょうけどね。

大谷:観客が求める長谷川像と自分のイメージ像とギャップが出始めていたりします?

長谷川:そうね。例えば、PCの世界ではずっとインプットはキーボード、アウトブットはディスプレイでした。それがスマホの登場でハードウェアが激変しましたよね。やっぱりハードウェアの変化が、消費者にとってはイノベーションなんでしょうね。ほとんどの消費者はそこしか目に映らないくらいで、そんなインプットとアウトプットを変えるようなことを、やりたいなと思っています。それは、ソフトウエアじゃなくて、ハードウエア(センサー含む)とセットじゃないといけない。

大谷:ロボットも出てきてますしね。僕も最近、スマートウォッチを使っているんですよ。これでFacebookのいいね!ができたり、音声で返答できたり。キーボードで仕事をしてきた身としては、もう目からウロコばかりで。

長谷川:ブルーワーカーなんて外出中にもうキーボード打たないですよね。そういう人のためのITって、まだまだ技術革新があるハズなんです。そういうのやりたくて。

大谷:何かアイデアが?

長谷川:例えば、老人ホームの運営なんて「IoTのかたまり」みたいなもので、体温計も毎日計るんだから、ネットワークで飛ばせたらどれだけ楽かとか。「オム○ンさん、早く作ってよ」とか(笑)。音声認識技術も発達してきているので、PCへの入力も日々の会話から自動入力することも可能かもしれない。そういうの、今度提案しようかなって。グループ会社が運営する介護系施設では、高齢者がお風呂に入って何分以上出てこなかったらアラームを挙げるといったこともやってますね。

大谷:例えば、東急ハンズでIoT製品を扱うのはアリですか? オリジナルブランドかメーカーのコラボか分からないけど、おもちゃのようなIoT製品。社会的な活用以外に、もっとエンターテイメント系のものも増えたらいいなと思っていて。

長谷川:全然アリですよ。例えば「Akerun」(スマホで開錠できるスマートロック)をハンズのバイヤーに紹介したら「いいね!」という反応で、「こういうのどんどん紹介してもいい? 迷惑?」と聞いたら、「いやあすごくいいです!」と。ネタは欲しくてたまらないみたいです(笑)

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スマートロックの「Akerun」https://akerun.com/

スタートアップと大企業の橋渡しがしたい!

大谷:スタートアップの技術を採り入れようという気持ちはあるんですか?

長谷川:それはもう、大好物です!

大谷:実は、いま「大江戸スタートアップ」という媒体をやっているんですけど、やっぱりマネタイズに苦労していて。スタートアップは当然お金を持っていないわけですよ。でも、最近、FinTechがいきなり大手に採用される話とかもあるじゃないですか。そういうスタートアップと大手を橋渡しするようなメディアとしての仕掛けがないかと模索しているんです。

結局、スタートアップは営業力がないのが課題で、彼らの「売る」という業務を何かでお手伝いできないかと。

長谷川:スタートアップは「営業力がない」、一方、大企業には「根性がない」から採用が進まないんだよね。大企業には「大手が言ったならしょうがないけど、聞いたこともない企業の話で失敗したら、どうしてくれるんだ」という風潮があって。メディアに掲載されているかどうかでも、変わってきますけどね。

大谷:それも卵と鶏の話で、事例があれば導入が進むけど、まず最初の事例が取れない。スタートアップ単品だと営業力でどうしても難しいので、何か違う形で――。例えば、スタートアップ自体がフロントからバックエンドまでほぼすべての仕組みをクラウドでやってたりするので、それらをうまくパッケージ化して営業するとか、そういうのがあれば面白いと思うんですよ。どうにかスタートアップの技術をエンタープライズに知ってもらえないかと。

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長谷川:メディアというよりキュレーションの話になると思うんですけど――。東急不動産ホールディングスのIT会議でも「ベンチャー技術を買いたい、育てたい」という話が出て、ところが「どこに投資したらいいか分からない」となる。聞けば、ほとんどの大企業がおなじ悩みを抱いているようで。東急不動産の例だと、不動産関連のベンチャーの話題を月一回キュレーションして提供してくれたら、それだけでお金払うと思います。「スタートアップの営業力不足」の問題もあるけど、急に知らないところから営業に来られても対応に困ったりするので、まずは情報を集約してほしいんですよね。

ちなみに投資金額は、大企業は、結構もってますよ。企業規模によるけど、数十億〜数百億はあります。でも、接点がないから進まないんです。その予算から月額をいくら支払おうと、年に1回とか投資が成就するなら、手数料なんてどうでもよくて。

大谷:やっぱりキュレーションやった方がいいですね。それに近い素案はあるんですよ。

長谷川:結構、意識をドーンと変える必要があると思うんです。たとえばキュレーションでスタートアップの情報を売り込むのも、「普通に営業してるだけで、これでお金なんて取れるわけない」って思いがちかもしれないけど、「それとベンチャーは別なんだ」ってマインドチェンジすると、案外うまくいくんじゃないかな。

大谷:ほんとそうですよね。地方の取材していても、まさにそこが問題となっていて。地方のベンチャーって「東京に営業しなければ」と1日に5件とか営業回りしてるんだけど、それも無駄が多くて、ビデオ会議でも同じことができるわけですよ。地方のベンチャーってそういうハンディキャップを抱えていて。東京のベンチャーとある程度差がなくスタートラインに立てるような、そういう仕組みって何かできないかなと思いますね。そういう意味でもキュレーションという形で情報を広めるのは、スタートアップのためになりそうですね。

長谷川:重要だと思います。スタートアップに急に営業に来られて、大企業の人が迷惑そうな顔したとしても、実は心の奥ではそれを求めていて、諦めずにもうちょっと深いところまで話をすれば興味を持つと、そんな気がしてます。

大谷:スタートアップについては、メディアとしても本当にやるべきことが多くて。アスキーってハードウェアにも強かったりするので、コラボ的に商品開発して、アスキーストアで販売するとか。いろいろ考えられるんですよね。

長谷川:スタートアップの情報ってホントに不足しているので、それをちゃんとキュレーションして紹介するだけでなく、販売・流通までするサイトって面白いかもしれないですね。

大谷:いろいろやっていこうと思います。

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