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長谷川秀樹のIT酒場放浪記 第22回 スカイアーチネットワークス 代表取締役社長 江戸 達博さん


ハンズラボCEOの長谷川秀樹が、どうすればエンタープライズ系エンジニアがもっと元気になるのか?という悩みの答えを探し、IT業界のさまざまな人と酒を酌み交わしながら語り合う本対談。第19回目のゲストは、株式会社スカイアーチネットワークスの江戸達博さん。サーバ ー管理一筋に17年、近年ではAWSのマネージドサービスもいち早く手がけ、クラウドインテグレーターとして業界では知られた存在です。AWSにドはまり中の長谷川に対して、まったりと堅実な顧客志向を語る江戸さんに気づかされることも多い対談となりました。

profile

株式会社スカイアーチネットワークス 代表取締役社長 江戸達博さん
1976年、北海道生まれ。1998年日本体育大学社会体育学科を卒業後、システム系ITベンチャー企業に営業職として入社。1999年、ホスティング(レンタルサーバー)事業の企画立上げを提案して責任者となり、営業部に所属しながらも、技術・管理までの全業務を担う。2001年、顧客からの要望に応える新たなサービスを提供するために独立。株式会社スカイアーチネットワークスを設立し、代表取締役社長に就任する。設立当初より、サーバーインフラの導入設計から・構築作業・管理業務・24時間365日監視・保守サービスまでを一貫して提供し、近年ではクラウドに関するマネージドサービスを幅広く展開している。

サーバー屋の「サバ缶」 ハンズラボの「クラウドわたがし」

長谷川以前、Cloud Daysで「サーバー屋の“サバ缶”」って配ってらしたでしょう。ハンズラボは、その時「クラウドわたがし=WG4」を配ってて、「おおなんと同じセンスの人がおるやん」思ったんですよね(笑)。でも、その時に既にAWSのマネージドサービスを打ち出していて、興味を引かれたのが最初でしょうか。

江戸ああ、ご存知でしたか。うれしいな。以前から名刺代わりにサーバー管理とかけてサバ缶を配ってましたが、あの時からけっこう真面目においしさも追求して、東日本大震災の復興支援の意図もあって宮城県石巻市の木の屋石巻水産さんに作ってもらったんですよ。一応販売もしてまして、1缶380円、「サ(3)・バ(8)の日」の前日に発売開始しました。で、売り上げ金額の38%を被災地の子どもたちの支援活動に寄付しました。

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サバ缶とわたがし

長谷川ダジャレだけかと思ったら、いろいろ凝ってるし、大真面目で復興支援されてたんですね。それで、どんな会社かなと思ったら、長らくサーバー管理をされていて、AWSも積極的に扱っているという。ダジャレ+AWSと、それで一気にシンパシーが湧いて(笑)。AWSの運用管理サービスを開始されたのはいつくらいだったんですか。

江戸AWSは2011年くらいからですかね。クラウド自体は、ニフティクラウドを2010年くらいからでしょうか。

長谷川それは結構早いですよね。なんでまた、興味を持つようになったんですか。

江戸よくそれ聞かれますし、「先見の明があったんですね」って、言われますけど、そんなわけじゃないんです。以前のビジネスもそうですが、お客様から相談されるんですよね。「こんなことやってほしいんだけど」って。「AWSのマネージドサービスやってほしいんだけど」って相談されて、その要望要件に一生懸命追いついて、なんとかビジネスにして横展開している。その繰り返しですよ。

長谷川お客さんから相談されるのは、信頼されているからでしょう。やってくれなさそうなところに相談しないですもんね。

江戸そうおっしゃっていただけるとありがたいですね。そもそも、会社の立ち上げも、お客様の要望がきっかけですから。いや、その前からお客様の要望に応えようとして、いろいろやってきたところがあるんですよ。

長谷川え、それはどういうことですか。

江戸もともと大学を卒業して入社したのが、ITシステム系ITベンチャー企業だったんです。営業で入って、ファイヤーウォールとかLinuxのサーバーを構築して売っていたんですが、2年めのある日、お客様に「あるゲームのiモード版をやりたいから、耐えうる環境を整えてほしい」って言われて、よくわからないまま「できます」って受けてしまって。でも、誰も社内にできる人がいない。で、言い出しっぺで責任者になって、なんとかサービスを開始したんですが、すごい勢いでアクセスが集中してダウンして徹夜続き…。それでも技術もサポートも見よう見まねでやりながら、いろんな人を社内外からかき集めてやっていたんです。

長谷川営業さんなのに?

江戸そうですね。当時はもうワケがわからなくて、無我夢中でやってました。でも、もとはファイヤーウォールを企業に入れていた会社だったので、営業時間は基本的に日中なんですよ。夜は誰もいなくなっちゃう。それで仲のいい人に残業を頼んだり、辞めた人にアルバイト的にお願いしたり、無理矢理続けていたんですが、だんだんと誰も手伝ってくれなくなって、電話すら出てくれなくなった(笑)。それで夜中一人で残ってやるしかなくて。それで、技術的にはかなり鍛えられました。

長谷川1998年入社で2年めといえば、インターネットが急成長していた頃ですよね。

江戸そうです。当時の基盤構築ってRAID組んで1億くらいっていうのが当たり前で、うちはLinuxで2500万円。それでも「安いね」って言われてましたからね(笑)。サービスは会社の売り上げの2/3を占めるくらいになっていたんですが、1人でやっていたので、とにかくしんどくなっちゃって…。お客様に「このサービスを継いで会社やるのと、転職するのだとどっちがいい?」って相談したら、「お金を出すから続けてほしい」って言われて、3年めに起業したというわけです。最初は前職の会社を辞めた人とか、ほとんど旧知の7人でスタートしました。

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長谷川へええ、その会社ももったいないことしましたよね〜。

江戸うーん、他にやれる人を育てていたら、僕が辞めても続けられたと思うんですけど。僕が辞めたら無用の長物になりかねなかったので、仕方なかったのかもしれませんね。

長谷川じゃあ、それ以降はサーバー管理一筋ですか。

江戸はい、サーバー管理一筋です。

長谷川サーバー管理以外で、例えばオリジナルのアプリとか、製品化しようとしなかったんですか。

江戸うーん、1回SNS的なのを作ったことはありますかね。でも、あまり上手くいかなかった。汎用性が高いものを作るというより、汎用性が高いものの上にお客様の要望に応える環境を提供していく方が性に合っているのかな。

長谷川そうですか、それがもう15年めになって、クラウドの運用代行へとつながっていくわけですね。

江戸おかげさまで、なんとかやってます(笑)。

再先端技術を駆使するよりも
安定した技術で顧客仕様に磨き上げる

長谷川ちなみに15年ともなれば、転換期というのがあったんじゃないですか。

江戸あんまりないですねえ(笑)。

長谷川15年間、反抗期もなく、すくすくと〜って感じですか。

江戸そうですね。強いていうなら、かつてハードはお客様に持っていただいて管理だけやっていたものを、価格も高いけど可用性の高いマネージドホスティングとして販売するようになりまして、なかなか好調だったんです。それがだんだん安くて性能がいい機器が出てきたのと、リーマンショックの影響で企業での節約がはじまって、だだっと解約が増えたことがありまして。それが一番うちとしては厳しい時期でしたね。ただ、それをセキュリティ対策、負荷テスト、バックアップというように、サービス別で提供するようになって、今に至るというわけです。

長谷川で、AWSがそこに入ってくるわけですね。

江戸はい、ホスティングサービス事業を止めて、そこにAWSが入ってきた感じですね。もとはお客様の要望ではあったんですが、ある女性社員が「AWSが来ます!」って力説するんです。「へえ、そうかな」と。

長谷川いい女性社員ですねえ(笑)。

江戸いやあ、実際いい子が多いんですよ。僕がいうといやらしく聞こえるかもしれませんが(笑)。本当にスタッフには恵まれてますね。ただ、うちは先進的なことを先陣切ってやるというよりも、安定した技術や仕組みを丁寧に扱ってバリューを出していくとか、そういうのが好きな人が多いみたいですね。

長谷川で、実際AWS関連のサービスは売れているんですよね。

江戸はい、今年はもう全体の売り上げの7割を占めるようになってます。

長谷川えっ、そんなになるんですか。恐るべしAWSですね。オンプレからドンドン移動しているってことでしょうか。

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江戸利益としてはマネージドサービスがまだまだ強いので、全てがクラウドというわけではないですし、そもそもこれからについてはよくわからないですね。サーバー管理する人を雇うのではなく、アウトソースが主流になる流れは間違いないと思うんですが、その形態として「サーバーを丸ごとマネージドで出す」というのは世界的に見ると日本くらいなんです。他国で多いのは、業種別にインフラとアプリケーションをまとめて提供して、困ったことがあったら対応する、という形態でしょうか。それですごく安い。

長谷川それでちゃんと可用性とか、使い勝手とか担保するんですか。

江戸それがしないんですよね。ただ、それで不満に思うのは日本企業くらいで、外国だと多少止まったり、使いにくかったりしても「そんなものか」と思ってもらえる。日本がちょっと特殊なんだというのは、海外に合弁会社を作ってから特に感じるようになりました。

海外スタッフのモチベーションを保つには?

長谷川そうそう、中国の大連に合弁会社を作られたんですよね。僕も前職でアウトソーシング先があったので、大連には時々行きました。親日派が多くて、日本人には過ごしやすい街ですよね。よく行かれるんですか。

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江戸ええ、ちょくちょく行きますね。尖閣諸島の問題以降、「危なくないの?」といわれますが、大連では全く身の危険を感じたことがないです。そもそも、僕、中国人疑惑があるんですよ(笑)。体型とかも大陸系っぽいし、口数少ないし、黙っていれば溶け込んでわからないって言われます。ちょっと前なら服装でばれちゃってましたけど、最近はファッションも日本と変わらなくなってきましたからね。

長谷川たしかに、ちょっと前に上海に行ってきたんですけれど、もう日本はかなわないというくらいの勢いがありますよね。Uberが大流行りで、黒塗りのBMW、ベンツ、アウディがばんばん使われてました。

江戸大連でもすごいことになってましたよ。Uber大人気ですよね。

長谷川大連に行かれるのは、商談目的ですか。

江戸まあ、それに立ち合うこともありますが、ほとんど現地スタッフとのコミュニケーションですね。けっこう人材の流動性が激しくて、すぐ組織がガタガタになってしまうんですよ。

長谷川契約社会ですもんね。ちょっと条件がいいところがあると、あっさり辞めてしまうと聞きました。ドライというか、まあ、雇用側も契約社員として2年で打ち切るので、のんびり長いところに勤められないというのはありますし。

江戸そうですね。でも、できればうちは辞めてほしくないので、僕もちょくちょく顔を出すんけど、それはそれなりに効果があります。ちゃんと一緒に飲みにいったり、話を聞いたりすることで、仕事へのモチベーションを持ってくれる。もちろん、お金にはシビアなんですが、「お金だけ」じゃつなぎ止められない。

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長谷川まあ、そうでしょうね。とはいえ、だんだん人件費は上がって、かなりアッパーになってるから、そろそろ頭打ちかなって言われてるでしょう。そのあたりはどうですか。

江戸それはありますね。転職してもそんなに上がらないってぼやいてました。で、「うちを買わなくちゃならないから、もう少し欲しいんですう」って。実際、最近は円安で元がどんどん上がってるでしょう。正直、コスト的なメリットは中国では小さくなりつつあります。

長谷川となると、人件費とクオリティのバランスからいったら、どこがいいんでしょうね。

日本語が話せないエンジニアを 思い切って採用してみたら…

長谷川僕の前職の会社も、アウトソース先は、大連からフィリピンとか他の国に移してましたね。そうじゃないと、価格競争的に負けてしまうって。

江戸確かに、人件費は変わらないのに、まだまだクオリティは半分…、という感じですもんね。

長谷川けっこう給料としてはそれなりにもらっている層が多いのに、まだまだ上を目指そうというか、がつがつというか。日本では一定もらえば、あとは平和に普通に暮らしていきたいという人の方が多いでしょう。僕自身ハングリーは嫌いじゃないけど、「もう少し落ち着け!」って思いますよね。

江戸中国の場合、貧富の差がとにかくまだ激しいんですよね。そこを残したまま一部だけが急成長している状態だから、一時それなりの給料をもらっても不安だろうし、まだ上も見えてチャンスもあるし。そういう状況下では仕方ないのかなと思います。民族的な性格や文化もあるんでしょうけど。

長谷川他の国の人はどうですか?うち、いま米国人女性がいるんですが、日本が大好きだけどエンジニア未経験で、それでも「ダイジョブです」っていうから採用したら、そこそこやってますね。Wantedlyでたまに海外から問い合わせが来るんですが、「日本語が話せない」というので躊躇しています。

江戸うち、フィリピン人で日本語が話せないという技術者を採用したんですが、すっかり溶け込んでますよ。受け入れ側もはじめは積極的、中立、避けるという3種に分かれてたんですが、彼のプログラマとしてのスペックが高かったからか、ずっと嫌がっていた人が一番仲良くなって、片言の日本語と英語のちゃんぽんでコミュニケーションしてます。彼の明るさは、お国柄なのかなあ。飲んでいても楽しいし、クリスチャンで真面目。むしろ日本語をそれなりに話す人よりも、ちゃんと意識して意思疎通を図ろうとして工夫するので、みんな英語を話すようになってきたし、対応にも慣れてきましたよ。

長谷川なるほど。確かに相手が日本語を話す人だと甘えるでしょうし、それでいて「文脈でわかる」と思って伝えきれていなくてトラブルとか、ありそうですよね。じゃあ、うちも日本語無視で採用してみようかな。

江戸いいと思いますよ。日本語だけじゃなく、日本人にこだわる会社もありますが、10年後に優秀な日本人の技術者が採用できなくなる可能性は大ありだし。どんどん外国人とふれあって対応に慣れておいた方が、将来的にはアドバンテージになると思うんですよね。

長谷川なるほど、ダイバーシティを着々と進めているんですね。

江戸意図したわけではないですけれど、優秀な人を求めれば自然とそうなってくるんじゃないでしょうか。女性スタッフもそうですよ。ライフステージに合わせた働き方を用意すればいい。そりゃあ、日本人男性同士で似た価値観、似たコミュニケーション、似た働き方という組織は楽かもしれないけど、今後は絶対に弱みになると思いますね。そういえば「AWSが来ます!」って予言した女性スタッフは一度産休をとって戻ってきた人。ご家族との時間を大切にしていただきながら、問題ない範囲でバリバリ仕事をしてくれています。

突出したプラットフォームに
独自の付加価値を提供する

長谷川いろんな価値観や背景、国籍がある人が集まってくると、コミュニケーションの場づくりも会社の課題になってきますよね。社員旅行や飲み会などなされることはありますか。

江戸うーん、月並みですが、月1回の営業・技術・管理の発表と全体会議、その後に社内で「ビアバスト」が定例ですね。あとは、7月の創立記念にボーリングなどのイベント、12月の忘年会、その時に営業利益の10%をボーナスとして配分しています。あとは月ごと誕生日会としてオカマバーに行ったり…。ボーリング大会で優勝者はマレーシアの「サバ州」に行って写真を撮ってくるとかやりましたね。あとは、バスツアーとか、カジキ釣りとか…。

長谷川さらっと、月並み以外のこともやってるじゃないですか(笑)。

江戸でも、正直僕が楽しくてやりたいからやってる感じです。イベントがどんなに盛り上がっても、現場が楽しくなければ、辞める人は辞めますからね。人を、組織をどうこうしようというより、楽しめればいいと思っています。

長谷川もう15年になられるんですよね。この先の展望として、何か具体的にイメージされていらっしゃることはありますか。

江戸基本はこれまで同様に、技術的な最先端は追わずに「安定した技術で構築されたプラットフォームに明確な付加価値を提供する」というスタンスでいたいと思っています。ただ、その付加価値への感度は忘れないでいたいですね。というのも、運営・管理という仕事は日々の変化の振れ幅が小さいので、そこにだけ邁進してしまうと仕事に飲み込まれるというか、新しいことや挑戦すべきことに目が向かないことがあるんです。そうした状況にスタッフ、そして組織全体が落ち込まないよう意識し続けるのが自分の役割かなと思っています。

長谷川なるほど。ちなみにいまどんなサービスに注目されていますか。

江戸「Airbnb」とか、余っている部屋や民家を宿泊施設としてシェアするサービスは面白いと思いましたね。中国人なんかは大家族で旅行したりするわけですが、日本には10人などで宿泊できる施設が少ない。そうしたニーズに対して、もともとある民家という“枯れたインフラ”に手を入れて付加価値をつけて貸し出す。その発想は、私たちのサービスのヒントになると思っています。

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空き部屋シェアサイト「Airbnb」www.airbnb.jp/

長谷川「Airbnb」も「Uber」も元々あるものを横串にして、付加価値をつけて提供したことで成功しましたよね。サーバー管理の部分での付加価値って、なかなか差別化するのは難しいようにも思うのですが…。

江戸ええ、まさに。ダウンタイムとか競ってもあまり差がつかないし、さらに自動化の可能性はまだまだあるといっても、サービス自体はかなり横並びになってきつつあります。そこで差がつくのは、属人的な部分。「いい人」で差別化するしかありません。そのためには一人一人のレベルを上げること、たとえば顧客の「何を実現したいのか」を真摯に捉え、実現できることが重要だと考えています。「何が付加価値になるのか=利益の源泉になるのか」を技術者自身が考える必要があるでしょう。

長谷川新しい技術や価値観が続々と生まれていますが、実は「枯れた技術で付加価値」をというのは、一番ユーザが求める価値だったりするんですよね。ついつい新しいものに飛びつきがちな僕も、ちゃんとそのあたりを見極めたいと思います。今日は本当にありがとうございました。

江戸ありがとうございました。

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