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長谷川秀樹のIT酒場放浪記 第12回 パルコ WEB/マーケティング部 部長 林 直孝さん


ハンズラボCEOの長谷川秀樹が、IT業界のさまざまな人と酒場で語り合う本対談。第12回の今回は、株式会社パルコのWEB/マーケティング部を率いる林 直孝さんをゲストにお迎えしました。日本のリテール業界におけるネットマーケティングの歴史をなぞるかのような、パルコのネット施策の経緯を伺いながら、今後多様化するであろう「オムニチャネル」についても意見を交換しました。

株式会社パルコ WEB/マーケティング部 部長 林 直孝さん
1991年、株式会社パルコ入社。全国の店舗、本部、また関連会社でWeb事業を行う(株)パルコ・シティを歴任する。ネット関連業務のみならず、イベント事業や営業など、様々な業務を経験。現在はWEB/マーケティング部の部長に着任し、同社のWebを通じた顧客コミュニケーションおよびオムニチャネルの戦略立案と実務執行などを行っている。

ネット推進のリーダーは
他社がやらない「尖ったイベント」に憧れ入社

長谷川林さんとはもともと2014年1月のNYのオムニチャネル視察ツアーでご一緒して、それ以来カンファレンスなどでもお会いして情報交換するようになりましたが、実はあまりご経歴をうかがったことがないんですよね。企業のIT事業部で新しいプロジェクトを推進している人って、僕もそうなんですが、外部から来た人が多いじゃないですか。しがらみもないし、異なる見方も持ちうるからだと思うんですが。でも、林さんは新卒で入られたと伺いましたが、どのような経緯でWeb/マーケティング部を牽引するようになられたのか、興味があります。

確かに入社時には思ってもみなかった展開ですね。そもそも小売だと思ってパルコの面接を受けてから、そうでないことを知ったくらいで(笑)。渋谷で面白いイベントをやっていたことを思い出して調べてみると、他社がやらない尖ったことをいろいろやってる。これは面白そうだなと思って入社したんです。それでラッキーなことに、希望どおりの渋谷のイベント部署に配属されまして。

長谷川はじめはイベントを担当されていたんですか。パルコのイベントは、いつもおしゃれで時代を先取りするイメージがあります。

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実態はなかなか大変でしたよ。イベント会社に丸投げではなくて、一から十まで、たとえばポスターづくりや会場のレイアウト計画まで自分たちでやるんです。NFL(プロアメリカンフットボールリーグ)の公式ショッププロモーションや、バスケットの3on3のイベントなどでは、チラシも街頭で手配りでした。1991年入社なので、バブル崩壊直前くらいのことです。

長谷川おお、なんだか時代の香りが。よかったですよね、あの時代は…。僕も表参道のフレンチの店でアルバイトしてましたが、学生でも夜中まで仕事してタクシーで帰って、というのが普通でしたからね。それはそれとして、最初はITとあまり関係ないお仕事だったんですね。

そうですね。ローリング・ストーンズ展やブルーハーツ展とか、派手な仕事も多くて楽しかったですよ。でも、ファンが感激に打ち震えるのを見て「いい仕事したなあ」と感激していたら、3年目は管理課という消防訓練や労務管理といった裏方仕事に異動になって。「あの店の◎◎という女の子の連絡先を教えろ」と電話が掛かってきて「できません」と答えたら、会社のエレベーターに落書きで「ハヤシコロス」って書かれたこともありましたね(笑)
ビルの安全って、色んな裏方の人の努力に支えられているんだということを身を以て学びました。

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長谷川ええ〜(笑)。その時もITとは無縁だったんですか。

はい、Windows95がまだの時代ですからね。でも、うちの取り組みは比較的早くて、95年には「電脳空間の仮想のパルコ」というコンセプトで「パルコ・シティ」というHPを立ち上げているんです。

長谷川それって、鬼のように早いですよね。当時、僕はアクセンチュアにいたんですが、まだまだ「HPなんて個人がつくるもので、企業がやる仕事じゃない」みたいな雰囲気だったじゃないですか。

そうですよね。店舗の宣伝とかではなくて、とにかく新しいモノをつくろうみたいな雰囲気でした。楽天は1997年創業ですが、その前から既にECもやってましたから。ちょうど僕も広報室に異動したので、よく覚えています。それで、その名称や業務を引き継いで、2000年に現在の関連会社「パルコ・シティ」が設立されたんです。

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株式会社パルコ・シティ
http://www.parco-city.co.jp/

自信満々で始めたネットショップは半年で頓挫

長谷川おっ、いよいよ林さん自身のITデビューというわけですね。

ええ、そういうことになりますか。ただ確かにビビッときたんですが、正直言うと、当時関わっていた仕事がもう辛くて辛くて、ネットに興味があったというより、新しいことをやりたくて社内公募に飛びついたんです。ただ、入ってからはECやメールマガジンも経験しましたし、テナントの各ショップにHPを持ってもらう企画もやり、そのノウハウを外部に展開することも始めていました。

長谷川2004年にZOZOTOWNがスタートして、ホリエモンが大阪近鉄バファローズやニッポン放送を買収しようとしたのが2004〜2005年でしょう。いやいや、早いですよね。誰もがバブルだと思っていたし、ここまで成熟すると思ってませんでした。もっと早くネットの方に切り替えるべきだったと、当時の自分の感度の低さに反省しきりです。ちなみに印象に残っているお仕事はありますか。

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社外営業で初めて受注した、京都の「オスティア・ジャパン  衣」さんのHP制作の仕事でしょうか。当時でも販売ができるサイトだったんです。とても個性的な服を制作販売されていて、社長さんが「コピーされるから」と躊躇されるのを口説き落としてサイトをつくったんです。ある日、ハウスカードの利用明細と一緒に送られる小冊子で紹介されたところ、爆発的に注文が入りまして。社長さんも驚かれましたが、僕たちもびっくりでした(笑)。それが初めての成功体験でしたね。

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オスティア・ジャパン 衣
http://koromo-kyoto.com/(現在の運営は他社)

長谷川当時はネットのみでの導線がなかったからとはいえ、メディアミックスを既にやっていたわけですね。

あはは、言われてみれば、そうですね。それ以外にも、今はイープラスさんにお任せしていますが、当時はパルコ劇場のチケットや公演DVDもパルコ・シティでネット販売していました。でも、今みたいに自動化されていませんから、クレジットカードの真偽突き合わせも商品手配や発送も手作業です。それでも「オンラインだってモノが売れるんだ」と確信して、「ちゃんとパルコのテナントさんの商品を売ろう」と2003年に「ネット通販」の仕組みをつくったんです。

長谷川「ネット通販」ですか、まだ「EC」という言葉はなかったですもんね。そして今に至るというわけですか。

いえいえ、2003年に今度はパルコ本体の札幌店に営業として転勤になりました。ただ、ECの仕組みはできていましたから、札幌パルコのテナントさんに使っていただくべく営業をして、半年で10店舗くらいからオファーをいただきました。商品を借りてきて写真を撮って、情報を紙でもらったのを打ち込んで、掲載までは全部自分で手作業。クレジットカードは使えなくて、銀行振込と代引きでした。以前の成功体験がありましたから、鼻息も荒く「半年間で500万円売りますから」ってタンカを切ったのに、50万円に届かなくて半年で撃沈しました。

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長谷川林さんにそんな時代があったなんて!若いチャレンジャーの励みになりますね。

いやいや、すごく忙しかったし、辛かったけど、当時の熱意は今も覚えていますね。それに、その後再び2009年にパルコ・シティに戻ってきて、ジャーナル・スタンダードさんに営業に行ったら、札幌パルコの店長だった方がECのマネージャーになられていたんです。そんなふうにつながっていくし、何よりECを回す人の苦労や楽しみが体験できたのは大きな収穫でした。

苦節10年の思いが「カエルパルコ」に昇華

長谷川Web黎明期のゴタゴタ、体験したかったなあ(笑)。僕は先程もちょっと触れましたが、ネットの可能性をあまり認識していなかったんですよね。だから、2010年に東急ハンズの通販事業部長になってから、一から勉強という感じでした。当時「アフィリエイト」すら知らなかったですから。

ええっ、そうなんですか。ずっとEC畑を歩いて来られたのかと、思っていましたよ。

長谷川そうじゃないんですよ。それでも知識はいろいろ本やネットで勉強したり、人に聞いたりして何とかキャッチアップできる。でも、その黎明期の「実感」は欲しかったなと今でも思います。

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でもまあ、私も早い時期にネットの可能性を感じたとはいえ、ネット通販を半年で挫折してから2006年に名古屋に異動になった後は、ネットとは全く関係ない店舗の営業をしていましたから。それでも「ネットで何かやれるんじゃないか」という確信は、ずっと持っていましたね。なので、イントラネット上に、その年に売れた商品を写真にとってログ化するという作業を当時の新入社員と黙々とやってました。来年利用できるだろうと考えたんです。そうこうしているうちに「ネットと店を経験したんだから、もう一回やってみろ」と、2009年にパルコ・シティに戻ることになったんですね。

長谷川「よっ、再登板」というところですね。

うちの会社って、人数が少ないこともあって「なんでもやりなさい」というスタンスで人事異動が頻繁なんですよ。異動直後は以前の成功体験から、カード会員冊子にネットで買える商品を山ほど掲載したんです。ただ、上手くいったのは1年ほど。2010年は潮目が変わって伸びなくなってきたんです。ネットだけじゃダメ、店舗と一緒にやらないとと思うようになりました。

長谷川じゃあ、2012年にパルコ本部に戻られたのは、林さんにとってはタイムリーだったんですね。

そうですね。異動先は経営企画室で、そこで「ネットを使った店舗集客を考えるべき」というテーマで若い社員を集めて「Web戦略プロジェクト」を立ち上げ、その事務局をやることになったんです。そうするうちに、店舗ブログの読者で、来店の促進だけでなくWebだけでも「購入する気持ちになっている」という事例が多数出てくるようになりまして。この「Web上での接客」を一定仕組み化しようと2013年に「Webコミュニケーション部」を立ち上げて推進することになったんです。このタイミングでECショップの運用もパルコ・シティ社からパルコに移行しています。

長谷川この春にも「 WEB/マーケティング部」として組織改編がなされていますね。これはどのような目的なんですか。

店舗とネットの距離をもっと縮めることでしょうか。ショップブログの仕組みを整えて、その中でも商品を購入してもらえる「カエルパルコ」という仕組みをようやく2014年にスタートさせました。札幌での挫折から苦節10年です(笑)。最も商品を理解していて、売りたいというモチベーションを持っている人が、サイト上で商品を紹介する。それが環境的にもようやくできるようになったというわけです。
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カエルパルコ
http://kaeru.parco.jp/

出店ショップのオムニチャネルを支援したい

長谷川「カエルパルコ」以外にもメディアであったり、ICTの社内運用だったり、「 WEB/マーケティング部」が担う部分は広がっているのではないですか。

そのあたりの整理も今回の目的の1つですね。「WEBコミュニケーション部」の他に、カード顧客管理と従業員教育を担っていた「CS/顧客政策部」、Web以外のメディアを担当していた「宣伝部」の3部が統合され2部に再編成されたんです。まず「 WEB/マーケティング部」はICTの構築運営、運営スタッフの教育、アプリとカードでCRMを行い、「メディアコミュニケーション部」はWebも含めたメディア戦略はそこで行なうということになりました。

長谷川なるほど。方法ではなく、目的で整理したということでしょうか。

ということになりますね。BtoC的なお客様とのコミュニケーションは「メディアコミュニケーション部」に統合し、顧客として接点を持てるようになった方のLTVをいかに高めるかという課題は「 WEB/マーケティング部」が担います。今後も回しながら調整することになると思うんですが。

長谷川こうして伺うと、モール事業系の企業さんとしては最先端を走っているように思えるのですが、同業で意識されているところはありますか。

うーん、SC・百貨店という業態でいくと、昔から丸井さんなんかはすごく進んでいらっしゃると思いますね。「マルイウェブチャネル」というプラットフォームで店舗とWebの在庫が統合できているし。物流会社もお持ちなので、いわゆる小売業的なオムニチャネルとして他より一歩進んでいると思います。一方で、小売としては無印良品さんやユナイテッド・アローズさん、あと東急ハンズさんも。

長谷川いやいや、恐縮です。

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マルイウェブチャネル
http://voi.0101.co.jp/

実はパルコは全国に19店舗あるんですが、顧客層もテナント構成も各店違っていて、施策についてはずいぶん悩んだんです。でも、東急ハンズの緒方さんの講演で「店舗ごとに施策を任せ、本部からの発信も行っている」というお話をうかがって、「ああ、その方法でいいんだ」と腑に落ちたことがあったんですよ。

長谷川そんなことがあったんですか。確かに、他社の事例はすごく参考になりますよね。僕もたくさんヒントをもらったり、励まされたり。もちろんそのまま真似しても全く意味がないんですが。

そうそう、小売はオムニチャネルを目指せ!なんて一括りにいうけど、目指すべきものはそれぞれの企業によって全く違いますからね。定義では「在庫も顧客も統合する」というけれど、うちは在庫も持っていないし(笑)。ただ、テナントの大部分は自前でオムニチャネルはできていないことが多いので、パルコに出店すればオムニチャネル的な対応ができるような環境を提供したいんです。それが、うちのオムニチャネルなのかなと考えています。

長谷川それはすごく明確な提供価値ですよね。国内にショップは数あれど、パルコの◎◎店のあの人から買いたい、みたいなことがあるでしょうし。

そうなんですよ。実際、あるショップのブログを欠かさずチェックしているというお客様は「ブログを見ていると接客されている気がする」というんです。それで地元に同じブランドのお店があるのに、わざわざ現金書留を送ってそのショップで買い物をするそうです。今後は流通もポイントも統合されれば、接客が大きな差別化ポイントになる。その時に「ここで買いたい」と思えるショップを数多く擁している、それがパルコの強みになるのではないかと思っています。

リテールのスマホアプリ活用

米国に遅れをとる理由は「国民性」?

長谷川:林さんとご一緒した2014年のオムニチャネルツアーで、一番印象に残っていることってどんなことですか。

:やっぱりスマホアプリとの連携ですかね。どのリテール企業も普通に持っていて、バーコードリーダーが搭載されていて。さらに、どの企業もどこかの真似じゃなくて、企業やサービスによって本当に斬新な使い方がなされていましたね。

長谷川:正直、僕もあれはショックでした。2000年頃だと思うんですが、米国にリテールのソリューション視察に行ったことがあるんです。ノードストロームだったと思うんですが、最新の施策は「他店の在庫管理が見えるようになりました」なんていうのでびっくりしたんです。日本では当たり前だったので。当時、JDA、リテック、SAPリテールなんかもあったんですが、高額なのに正直ダサくて、日本の安いパッケージのほうがええなと、ちょっと見くびっていたんです。それが、今やスマホアプリでは圧倒的な差を付けられているわけでしょう。

僕は2015年のツアーにも行ったんですけど、ウォルマートでは他店より高いレシートをスキャンしたら、その分チャージバックされるとか、ノードストロームだっけな、百貨店では製品の一部、生地とかをスキャンしたら「これじゃないか」と類推して探してくれるとか。もう、その進化の速さに二度びっくりですよ。面白いのが、精度が悪くても平気で出しているんですよね。

ウォルマートのセービング・キャッチャーのコマーシャル動画

:ああ、ざっくりしててもいいよねというのは、お国柄ですかね。2013年11月にスタートトゥディさんのアプリ「WEAR」の活用をパルコが導入した時に大議論になったのも、日本らしいなと思いましたね。

長谷川:パルコ超異端児説が出てましたよね(笑)。

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ファッションコーディネートアプリ「WEAR」

:スマホアプリで商品のバーコードをスキャンすると、商品情報やコーディネートなどが見られるというものでしたが、これをずっと考えてきた会社が開発したUI/UXは絶対に真似できないくらい精度が高いなと思いました。ただ、当時は「ショールーミングがありかなきか」が議論の対象でしたけど。

長谷川:全館店舗での写真撮影禁止にしたところもあったでしょう。あそこは事実上WEARを利用できないようになってますもんね。

:スタートトゥデイさんからは書面でサービス概要をいただいて、僕はとにかくまず会ってみたいと思ったんです。商品のバーコードスキャンについては、おそらくメインのニーズになることはないんじゃないかなと。それよりむしろショップスタッフとお客さんがアプリを介して直接コミュニケーションできる価値の方がきっと大きい。ブログをやっていたことで、その実感がありました。

実際にお会いしてみたら、ファッションが好きで、ユーザーの利便性を考えていて、真剣に業界を良くしたいと考えている方々だったんです。それで、企画をまとめて社内プレゼンテーションしたら、経営陣も「そういう時代だよね」と応諾してくれて。任せるから、若い人が真剣に考えてちゃんとやれと(笑)。

長谷川:その辺りの感度ってすごいですね。企業風土というか、文化なのかなあ。

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「スキャン&後から購入」が当たり前になる時代に

長谷川:そもそも日本では「店内での撮影はお断り」のところばかりでしょう。スキャンだけされて購買は別のところでとなれば、損するだけじゃないですか。

:そのあたりは経営的にも納得してもらえるような仕組みにしました。たとえばバーコードスキャンOKのテナントさんにはスキャンを解除するキーがあり、そこをスキャンしてからじゃないとバーコードスキャンができないんですよ。つまり、どのショップでスキャンして、購入したか履歴が追えるようになっているんです。それでスキャンした結果、ECで購入が成立した場合でも店にアフィリエイトフィーが入るというわけですね。

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長谷川:なるほどねえ。

:これも経営の判断なんですが、アフィリエイトフィーは、テナントさんとシェアしようと。たとえ店頭の売り上げが立たなくても、接客のモチベーションが落ちないスキームを考えたわけですね。でも、実際にはそんなにコンバージョンはおきなくて、せっかく店舗に来ているわけですから、スタッフの接客で購入するケースがほとんどでした。

長谷川:ファッションの場合、「わ、かっこいい」「欲しい!」というパッションが必要というのもあるのでしょう。スキャンして冷静に検討して購入するというよりも、接客を受けながら気持よく購入する、みたいな。

:あとは単純に、スキャンするまでの心的ハードルの高さがまだあるんでしょうね。洋服のタグは取り出しにくいところに付いているし、スタッフの目を意識しながらゴソゴソやって撮影するのは恥ずかしいと感じる人も多いでしょうから。

長谷川:ブランドとか、メーカーとかショップとかのバーコードが複数付いていて混乱することも多いですよね。ただ、東急ハンズアプリの場合「スキャンして後から買う」を利用するのは、利便性からでしょうから。重いものやかさばるの、違う階のものとか、まとめて届けてもらう使い方ですね。

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:接客がない場合の自己完結型購買行動の場合は、堂々とスキャンが普通になるでしょうね。そうなった時に、接客ありの場合もスキャンという行為を通じて、リアルなコミュニケーションが成り立てば、また違った使い方や価値も生まれてくるかもしれないのかなと思います。

長谷川:「スキャンが当たり前になる世界」が来る前にいろいろトライアルアンドエラーをしておかないと。拒絶するだけでは取り残される可能性が高いですから。経営層は今の常識がどんどん覆されていくのを、認識すべきでしょう。

たとえば、最近面白いなあと思ったことなんですが、クレーンとロボットを融合した「クレボット」だったかな。Googleが新社屋を建設するにあたり、それを利用できないか、市に申請しているというんですね。自社で開発しているらしいですよ。それをね、「やっぱり人間がやるべき」とか言っている場合じゃ負けちゃうよと。

Googleの新社屋計画

:ロボット活用を考えるとき「Pepperくん」で何をやろう、とか、あるものを活かした発想にとどまりがちですよね。もちろん持っているリソースが違うかからとか、そういうのもあるかもしれませんが。ただ、意識して今までと違う着眼点を持たないと、これからどんどん異業種との境目がなくなるような気がします。

Uberの相互評価システムが接客を変える?

長谷川:Google Venturesが投資するところ、触手を伸ばすところは要注意でしょう。新しいサービスだと思われていたUberに対抗してGoogleも独自のタクシー配車サービスを計画しているらしいですから、どうなることやら。あと「トラック版Uber」と呼ばれる「Cargomatic」も始まったようですね。復路に空になるトラックがいた場合、それをキャッチして配送を依頼するというサービスなんですが、これもうまくいけば面白いことになりそうだなと。

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Uberのスマホアプリ

:そういえばUberを先日ニューヨークで体験したんですが、確かに「これは使える!」と思いましたね。Uberの運転手はとにかく愛想が良くて、テンションが高くて。こちらも引きずられて、乗っている間はずっと楽しく過ごせたんですよ。

長谷川:Uberの総合評価の仕組みが絶妙らしいじゃないですか。降りてから客がドライバーを評価するし、さらに乗客もドライバーに評価される。それが互いのサービス向上につながるという。

:そう、そこなんですよ。それで帰ってきてから、Uberみたいな仕組みをうちのビジネスでやったらどうなるのか、いろいろ妄想しているところなんです。たとえば「ポケットパルコ」というスマホアプリがあるんですが、クレジットカードを登録して買い物をすると「コイン」が貯まる仕組みがあるんですね。それで、たとえばお店のスタッフの接客を評価してもらうと、コインが貯まるとか。

長谷川:お客様が直接スタッフの接客を評価するシステムということですか。それも面白そうですね。

:ええ、今までは店頭とWebの接客は別モノと思われていましたが、今後はよりいっそうシームレスになっていくでしょう。だから評価も同様にリアルでもWebでも行ってフィードバックするのが自然かなと。特にデジタルでの評価だと、いいか悪いかハッキリ出るし、それは悪いことではないと思うんです。悪ければ何か考えるだろうし、良ければモチベーションアップにつながるでしょうから。

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長谷川:小売の場合は、お客様自身への評価は見せられないのが悩ましいですね。まあ、Uberも内部共有でNGな客は予約できないようになっているらしいですが、小売はだからといって「入るな」とは、いえないですしね(笑)。ただ、モンスターカスタマー対策に費用がかさむのは事実で、できるだけ排除して、その分をいいお客様に還元したいと考えるのが自然でしょう。何かいい方法がないかと思うのですが。

:モンスターカスタマーに効果があるかどうかはわかりませんが、供給側も客側も「評価されている」と意識することで、1段上に上がるというか、いい接客をしよう、いい顧客であろうとする気がします。実際自分もそうでしたし(笑)。その効果はパルコでも期待してみたいなと思っているんです。

長谷川:確かに「相互評価の仕組み」は上手く作動するといいでしょうね。Uberも話を聞いた時震えましたもん(笑)。提供者とお客様が相乗効果でいい関係をつくっていく、なんてハッピーな仕組みなんだと。日本では「評価などされなくてもしっかり接客すべし」なんて精神論ばかりが強調されますが、こういう合理的な仕組みでうまくいく部分も多くあるんじゃないでしょうか。といっても、Uberの経営陣はあまり社会貢献とか考えていなくて、派手に遊びまわるタイプらしいですが(笑)。

:いやいや、事業として社会に貢献できればチャラということで(笑)。

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技術革新がもたらす「より人間にしかできない働き方」

:Uberのイノベーションって、評価だけじゃなくて「働き方」にも大きく影響しているんですよね。その運転手もオンタイムはハイヤー会社に所属していて、オフにはUberで稼いている。そういう働き方は、他の業種でもできるようになるでしょう。たとえば、アパレルのショップ店員も店内に誰もいなくても時間的な拘束はされるわけです。でも、その間にブログを更新したり、ECショップの管理を行ったりすれば、時間を有効に使えるし、実績次第で彼らの給料も上がる。もしくは、一人のスタイリストとして時間を使えるようになるかもしれません。

長谷川:それ、面白いですね。時間の使い方もネットで変わってくる可能性は大ありじゃないですか。技術の進化が働き方にどう影響するのか、もうだんだん予測がつかなくなってきましたよね。オムニチャネルツアーで見た、ブルーミングデールズの3Dボディスキャナーもすごかったじゃないですか。

:ああ、着衣のままで身体を一瞬にして採寸するんですよね。2000箇所も一気にはかってくれて、ブランドごとに若干異なるサイズの中から、ぴったりの物を選んでくれる。すごかったですね。あれが普通になれば、採寸というプロの作業が機械に置き換わることになる。

長谷川:それに抗う人と、受け入れて新たな価値を享受する人と、やっぱり出てきますよね。

:そう、ネットでの接客も、仕組みやツールをどう活用するかで差が生まれてくるでしょうね。ネットショップとはまた異なる、リアル店舗のWeb接客の可能性はさらに追求したいと思っています。その延長線上に、ショップとスタッフの効率が上がって、給料も上がって、仕事やアイデンティティとしてのファッションへのモチベーションの向上があるのではないかと。

長谷川:僕はネットもいいけど、ロボットを接客に利用したいですね。ロボットでしかできないこと、たとえば在庫全部の把握とか、検索とか、ログに基づくレコメンドとか。その上で、ライフログに応じてロボットか人間かが対応すればいいんじゃないかと。逆説的かもしれませんが、結局、林さんも僕も「人間中心」なんですよ。せっかくこの業界にいるのなら、快適なお買い物とか、より良い生活を支援するテクノロジーを提供したいなと。究極は「ドラえもん」を開発したい。

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:「着せ替えカメラ!」とか(笑)。「四次元ポケット」だって、無料じゃないし時間は少しかかるけど、今のスマホでも四次元ポケットのように欲しいものは得られるようになったし。リテールにはなかなかテクノロジーが入らないのは悩ましいですが、スタッフや顧客自体がもうリテラシーが高い世代なので、そこに牽引されて変わっていくんじゃないでしょうか。

長谷川:確かにもう業務用スマホアプリも研修いらずですからね。

:そう、ユーザーがいて、ここまでテクノロジーが進んでいるんですから、生きている内くらいには、ドラえもんの1つや2つ、きっと生まれていますよ。

長谷川:ぜひ、実現しましょう。今日は本当にありがとうございました。

:ありがとうございました。